憧れの思い人と憎らしい婚約者2
「だが、ライオネル様と比べれば見劣りするだろう。家柄の格が違う」
「お待ちください、ヴィルヘルム様がどうして私と?」
真っすぐに見つめたら、ヴィルヘルム様は私の頭を撫でてくる。
「入兵したてのときには、可愛らしい妹のように思えたが。今ではすっかり見違えた。離れてしまうのが、口惜しく思えてしまったんだ」
と述懐するので、私は驚いてしまった。
「そんな、もったいないお言葉ですっ!」
「ただ、俺では事足りないだろう?女性を喜ばせる言葉ひとつも言えない」
「そんなことは、ありません。言葉ではなく振る舞いで、私はヴィルヘルム様を」
私が言葉をつなぐ前に、
「やあやあ、ミリア。こんなところで、何をしているんだ。早く荷造りをしたまえ」
噂をすれば影とはいったもので、ライオネル様がやって来る。
「ライオネル様、なぜこちらへ?」
「ミリアが簡易宿舎に泊まっていると聞いた。それならば我が家にくればいい、と言いに来たんだ。もう、君はここじゃ用済みだろ?早めに引きあげてもいいはずだ」
「しかし、任期満了までは半月ほど残っております」
「半月早めても問題ない。君に任せる仕事は、もうないはずだ」
「そうかも、しれませんが」
「私と縁を結ぶほかに、ミリアが落ちのびる道はないと思う。暴力事件を起こしてしまうような、難のある娘では、ね」
強引に事を運ぼうとする。私は夫となるはずのこの方を好きになれそうにない。ライオネル様は何人もの愛人を囲っている。
先日お屋敷に行ったときにも、私に敵愾心を向ける女性陣に居合わせていた。あの中に放り込まれることを思うと、ゾッとする。




