不穏な情勢3
ヴィルヘルム様のお屋敷には、私の部屋が用意されている。
ただこれまでは一度も寝泊まりをしたことはなかった。その日、ヴィルヘルム様と共にお屋敷に行き、婚礼式の日取りをずらす提案がなされる。
ヴィルヘルム様の家系かねてより王族の守護をしているようだ。ヴィルヘルム様の妹君は既にランドルフ様とリドムンド様のお母様の縁者と婚姻を成立されているらしい。
お屋敷の応接室でヴィルヘルム様と密売人の話をする。
「ミリアをシュルリアン公国に手渡すことはしない。密売人のルートを探ってみる」
とヴィルヘルム様。
「私も探ってみます」
「ミリア、浮かない顔をしている。エルドナード様やリドムンド様のことがやはり尾を引いているのか?」
ヴィルヘルム様は顔を覗き込んでくる。いいえ、と言って、私は口をつぐんだ。
「悪かった。守護者の力が反応したのだろう。しかし、不可抗力だ。お二人がミリアに害をなそうとしなければ何も起こらなかったはずだ」
「ヴィルヘルム様は守護者の家系であるとお聞きしました。そして、他にもそのようなご家系はおありの様子。ヴィルヘルム様はランドルフ様のお力をご存知でしょうか?」
「耳にしたことはある。けれど、詳しい話は聞いていない。所詮、俺は王族の方々をお守りする立場にしかない。詳しい話は聞いていないさ」
「私はきっと、ヴィルヘルム様にふさわしくはありません」
「ミリア?」
「婚礼式は行えません。私は心も体も純潔ではありません。ヴィルヘルム様が妻として迎えるのにふさわしくはないのです」
慕ってやまなかったはずのお人なのに、諸手をあげて喜べない。それどころか、心が引き裂けそうになるのだ。
「思い人がいるんだな」
その一言がすべてだ。




