不穏な情勢1
シュルリアン公国との会合では、きな臭いを話を耳にする。
私はヴィルヘルム様に従って、帯同していた。
シュルリアン公国では常軌を逸した人々が暴動を起こし、手を焼いているらしい。我が国から密輸された幻覚剤が影響を及ぼしているともっぱらの噂だ。
「元凶の王子は投獄しております。しばらくは、密輸のルートは閉ざされるでしょう」
とリドムンド様がおっしゃるものの、公国の国主や宰務官は頷かない。
「ルートは消えておりませんね」
と公爵。
「今朝がたも売人を捕縛しております」
と宰務官も言い募るのだ。
リドムンド様や我が国の宰相もまた、二の句を告げないでいた。
「ケセラスルン国の王子以外に原因があるのでは、と考えてはいかがでしょうか?」
と宰相は言う。
「密売ルートは複数あるのではないでしょうか?我が弟は言え、証拠品を持っていた彼を看過できません」
リドムンド様がおっしゃる。
「ウィリエールには動機がない。世事に興味もないだろう。あいつは幻覚剤をばらまいて隣国を操る必要もないんだよ。あいつは充分な力を持っているだろうから」
ランドルフ様は反対意見をおっしゃるのだ。ウィリエール様の投獄に関しても、それぞれ思惑が異なるようだ。
「密売人を見つけてください」
とシュルリアン公国の国主がおっしゃる。
「もし、密売人が見つからないようであれば、ケセラスルン国の象徴である軍神の巫女をこちらの国にいただけませんか?」
視線が一様に私の元に集まった。ヴィルヘルム様の婚約者であり、軍神の家系の巫女として会合の初めに紹介されていた。
末席にいる私の元に、高貴な方々の視線が注がれる。脅迫的な取引だ。




