大失態の一夜目6
私は寝台から降りて、散らばった衣服を身につけていく。
本来、ウィリエール様の前で晒して良いような、姿ではない。
「近衛兵をやめてしまうというのは、本当?」
「はい」
「そばを離れることになったから、最後の思い出をと。手紙には書いてあった」
「は、はい。たしかにそのようなことをしたためましたが」
それは、ヴィルヘルム様への手紙だ。
最後の思い出、としたためた手紙は、なぜかウィリエール様の元に届いてしまったらしい。
「近衛兵をやめたら、どこにいくの?」
「恐らく、軍部司令官のご子息の元にですね。縁組の話があります」
「ライオネルだね」
とウィリエール様はおっしゃる。私はその名前を聞き、内臓に石のつぶてを大量に押し込まれたように感じた。
「私には手先の技術や芸事の才がありません。身を立てるためには、武力や胆力に頼むほかありませんでした。それもまた、こうして任を解かれてしまえば、何一つ残りません」
「そんなことないよ。ミリアはとっても魅力的だ」
ウィリエール様は微笑んで私の髪の房に口づけをなさる。とても可愛かった、ととろけるような声音でおっしゃるので、気恥ずかしくなった私は頭をさげた。
「ありがとうございます。ウィリエール様にお仕えできて幸運でした」
「もし、条件が揃ったなら。ミリアは僕と結婚してくれるの?」
とウィリエール様はおっしゃるのだ。
「条件は、成立しえません」
私にはあの色好みで、あちこちに手を付けている軍司令官、ライオネル様との婚姻生活が待っているのだ。
「ライオネルが好き?」
私は首を横に振った。
「じゃあ、決まりだ」
とウィリエール様はおっしゃるけれど、何が決まったのだろう?と私は思う。
何も分からないままに、ウィリエール様に手を取られた。
「僕はミリアと結婚出来るために、条件を揃えるよ」とおっしゃるのだ。
そんなバカな、と思う。
私の手に口づけをしてくださる。
「愛しいミリア。必ず、僕の奥さんにしてみせるからね」
とウィリエール様はおっしゃった。私はそんなことがあるわけがない、と思いながら、部屋を出る。




