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迷いの四夜目2
私は今、おこがましく愚かなことを口にしようとしていた。
境遇と感情が引き裂かれる思いは今に始まったことじゃない。私は選べる立場にはなかった。
だから――――やはり本音を口には出来ない。
ウィリエール様が何かをおっしゃるのが怖かった。だから私はその唇を奪う。
吐息が唇を温めたのはほんの一瞬だ。
「失礼いたしました」
互いに見つめ合い、互いの唇に視線を落とす。
遅れて恥じらいがやって来た。唇に口づけをしたのは、初めてだ。なぜ、と問いかけるようなウィリエール様の視線に答える言葉はない。
「私は朝までここにおります。でも、見張りが来てはいけないので、格子を元に戻してください」
ウィリエール様は鉄格子と元通り復元する。鉄格子に背中を預けて一夜を明かした。
「ありがとう、ミリア」
背中合わせに座ったウィリエール様と、時々お話をしながら転寝をする。まるで子どもが隠れ家で内緒話をするみたいだった。
ウィリエール様は生家のお母様の話をなさるので、私もまた生家の両親や姉の話をする。
自分の心の迷いは晴れないけれど、私はウィリエール様の潔白を晴らすために動こう、とその夜誓ったのだ。




