迷いの四夜目1
呼び止められて振り返れば、ウィリエール様が鉄格子に指先を触れていた。
触れた部分が光って鉄格子が消える。
「えっ」
「こっちに来て」
言われるままに近づいていけば、手を伸ばしてきたウィリエール様につかまった。
「こっ、これは、反則技です。ウィリエール様。ひょっとしたら脱獄も出来てしまいますか?」
「そうだね、でも。しないよ」
じっとこちらを見つめてきて、私の両の手を取る。
「なんでランドルフお兄様の近衛兵にならなかったの?ラルズスお兄様の近衛兵の件でミリアは功績を立てたと聞いているよ。僕の近衛兵でいるようも、ミリアにとってはよっぽど好条件だと思う」
ウィリエール様はおっしゃるけれど、私は即答する。
「何があっても私はウィリエール様にお仕えします。近衛兵になるにあたって、受け入れてくださったのはウィリエール様だけでした。私の主はウィリエール様だけです」
「ミリア……」
そう言ってウィリエール様は指を絡めてきた。両手を繋げた状態で視線を交わし合う。ヴィルヘルム様との婚約の話を、ウィリエール様はきっとご存知だろう。
「婚約おめでとう」
と眉尻をさげて微笑む。スッと心に穴が空いたように感じた。視線を離せない。
「これでミリアは思いを遂げられる。ヴィルヘルムもミリアのことは憎からず思っているみたいだしね」
「私は……」
「思い合う二人が結ばれるのが、自然なことだから」




