北方の地へ3
おじい様は、ウィリエール様と同じサファイアブルーの瞳をお持ちの、獅子だ。
漆黒の毛並みを持ち、目だけが青々と輝いている。
「僕が生まれたのはあの国だよ。もちろん、王様になりたいわけじゃないけど、仕方ないんだ。そうしなければ、僕の望みは叶わないから」
「私が力を注ぎます。ウィリエール様がケセラスルン国でお暮しになることを、望むならば」
私はそう言い添える。
「そなたは、また面妖な気配を持っているな」
おじい様の視線が自分に注がれることに、少しばかり緊張が走った。
「軍神の巫女の家系に育っております。私が必ずお守りいたします」
私は胸に手を当てる。
「私の主はウィリエール様お一人です」
ミリア、ありがとう、とおっしゃるウィリエール様の瞳の色は赤い。おじい様が首をかしげ、控えている骸骨の兵士たちが剣を構える。
「お初にお目にかかります。ウィリエールのおじい様。私はウィリエールの兄、キリムドです」
「キリムド?」
「はい。私はウィリエールとは父を同じくしております。私は単なる人の子ですが、こうしてウィリエールの身体に宿らせてもらっております。こうして、交代で受け持てば問題はないでしょう」
キリムド様がウィリエール様にとってかわったことで、おじい様にはご理解いただけたようだ。
しばし、治世に関しての意見交換をなさったあとで、ウィリエール様のおじい様は了承してくださった。
ウィリエール様がすべての治世を行う必要はない。
元より、治世に見識豊かなキリムド様が行えばいい。有事の際にはウィリエール様のお力が発揮されるだろう。
「ウィリエールはこちらの国にとっても有望な後継者だ。人とは違い我らの世代交代は数世紀をまたぐのが通例だ。しかし、私もこうして年老いている。場合によってはウィリエールを呼び戻すつもりだ」
「数十年あれば、十分な準備ができます」
「ほう?」
それどころか、もうとっくに、と口にするのは早計だ。
おじい様と契約を交わし、ウィリエール様がケセラスルン国の王となることをお許しいただいた。
この夜は、棺桶の城で夜を明かす。




