壁
ロジェンが五件の家があるといっていた。
そちらの方に向かって、ロジェンの指さす方を見ると、
「……貴族の屋敷に普通の民家が四つ。屋敷の方は一度来たことがある……こんな屋敷だったわ。という事は、亡くなったといわれている民家はこの世界に放り込まれた……の?」
「そうなんじゃないのか? ちなみに俺の知っている設定と違うから、聞かれても答えられないぞ」
ミナトがそう答えるのを聞きながら、私は周りを見回して、
「それでこの空間はどこまで続いているのかしら?」
「魔法でも撃ってどれくらいの距離がここから壁まであるか見てみるか?」
ミナトの案に、それが楽でいいわね、と思った私だがそこでロジェンが、
「だったら僕が魔法を撃つ。暇だし。いっけぇ~、“炎の蛍”と“風の歌”」
いきなり二つの魔法を使い始めたロジェン。
炎の塊があったかと思うと瞬時にいずこかに飛んでいく。
早すぎて距離の目安が……と思っていた所で、炎が何かに当たったらしく、壁で大きな爆音と炎を散らす。
遠くから見ても分かるようなそんなもの。
この世界全体がきしむように揺れる。
それらを見たロジェンが、
「う~ん、意外に近い場所ではあるみたいだね。うん、壁の近くまで行って壊してしまおう」
「そうだな、出口もないようだしだったら出入り口を探すしかないな」
そうミナトも言っていて、私もそれに疑問を持たなかった。
けれど実の所、それ自体が罠であったのだけれど。
だが私達が壁を壊しに行く前に、私達はとある人物たちと話をすることになった。
結果としてだけれどそれがいい時間稼ぎになったのは事実である。
そう、つまり……。
ロジェンが額に手を当てながら、
「誰かが家から出ているみたいだ。屋敷の人かも。話に行こう!」
「待ってロジェン」
「どうしたのリリー?」
首をかしげるロジェンだが私は、
「お屋敷の人はロジェン、貴方の事も知っていると思うの」
「? そうだろうね、ボク、王子様だし」
不思議そうに聞いてくるロジェンに私は深くため息をついてから、
「あなた、今は女の子なんだから……そうね、ロシェという偽名を使いなさい」
「え~、わかったよ~」
「基本的にお話しするのは、私。動揺しているだろうから……私達が魔法を使って一緒にここから脱出しましょう、と伝えればいいと思うの。だからロジェン、しばらく黙っていて。……貴方が女の子になっているのはまだ全員に秘密だから」
「う~わかったよ」
ロジェンが不貞腐れたように言う。
とりあえずは黙ることになって……でもいざ、何かおかしなことを言いそうになったら口をふさぐしかない。
そう思いながら、私達は家々から現れた人影に向かって歩いていく。
彼女たちもこちらに気づいたらしい。
焦燥感に満ちた顔をしているが、ほんの少し笑顔に戻っている。
私達も巻き込まれたのだ。だから私は、
「お久しぶりです、レア様」
そこで貴族の一人に声をかけると彼女は、
「リリー様、お久しぶりです。こちらにいらしたのは助けに来てくださったのですか?」
「……私達も巻き込まれたのですが、魔法で壁を破壊しようと思っていた所です。ですので早速壁を破壊しに行こうかと思います」
「……そうですか。私達の力ではどうにも……リリー様の力があれば、きっと……そちらにいらっしゃるのはロジェン様? いえ、女性ですか、申し訳ありません」
「いえいえ、彼にとてもよく似たロシェと遭遇しまして今は一緒にいるのです。それでは、早速ですがこの世界の壁の方に移動……は危ないのでここで待って頂けますか?」
そう言って安全な場所にいてもらうことに。
久しぶりに会った貴族の彼女や、見知らぬ……おそらくはあの民家の人たちだろう……みんな不安そうではあった。
だから私が頑張らないと……そう思った所で、空が崩れ落ちるように大きな穴が開いて言ったのだった。
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