別荘にて
変なものを見て二度寝をしたら続きを“夢”で見れたのはよかったというべきなのだろうか?
「ええそう、よかったと思うべきだわ。うん、深く考えちゃダメ」
私はそう頭痛のする頭を抑えながらそうつぶやく。
もとからロジェンはそういった冗談が大好きだったけれど、ここであの発言はやめてほしい。
ただでさえ元婚約者が死んだと思ったら生きていたけれど女体化という、そろそろ自分の頭を疑った方がいい出来事が生じているのだ。
しかも本当に元の男の戻れるのだろうかという不安も私の中にある。
そうなったらあの、自分の胸をもんで喜んでいるロジェンは、普通の女の子になれるのだろうか?
更なる不安が私を襲う。
そう思っていると隣で眠っていたロジェンが小さく呻いてゆっくりと瞼を開けて、
「ふあ~、よく寝た。あれ、リリー起きていたんだ。おはよう」
「おはよう」
「なんだか朝から疲れているように見えるけれど、どうしたの?」
「なんだか夢見が悪くてね」
「あ、また何かそのゲームだか何だかの夢を見たの?」
「見るには見たわね」
「いいな~、でもどうしてそれはボクは見れないんだろう?」
そうロジェンは首をかしげる。
と、ロジェンの隣で寝て居たハルト王子が小さく呻いている。
だが起きる気配はない。
だがそれに気づいたロジェンがにたりと笑った。
「ハルトの顔に落書きしてやろう~っと」
「やめなさいよ、ロジェン」
「え~、よく見たらイケメンに随分成長しているからいたずらしてやろうかと」
「だからやめなさいって」
「でもリリー、ハルトの顔をよく見ておきなよ。こんな眠っているハルトの顔なんてそんなに見れる機会無いよ」
などというロジェンの言葉にふと、魔が差してしまったというか……のぞき込んでしまう。
久しぶりにのぞき込んでよく観察してみる。
随分と男らしい顔に成長はしているのに、昔三人で遊びまわっていたころ、昼寝をしているときの顔にもよく似ている。
私達は大人になって、前とも少し関係は変化している。
そう思いながらハルト王子の顔を見ていた私は……綺麗だなと思ってみてしまう。
触れてみたい。
そんな感情が私の中に沸いてきて、けれどすぐに私はそれを焦って打ち消した。
いやいや、なんだか私は今変な気持ちになった気がする。
そう自分で思って私が焦っているとロジェンが、
「リリー、なんだか顔が赤いけれどいいの?」
「そ、そんなことがないわ」
「そ~なんだ~、それでハルト王子の顔に落書きしていい?」
「だめ!」
そこで私が大きな声を出してしまったからかもしれない。
ハルト王子が目を覚ましたのだった。
そしてそれから全員が起きてから私は、夢に関する話をする。
大まかに見た光景の場所について話す。
ロジェンの冗談はもちろん抜いておいてだ。
「それで確かその場所の……地図のようなものは見えたけれど、それ以上の情報はないわ」
私がそう話すとそこでミナトが、
「その町に関する情報はイレイズに話を聞いてきてもらわないと始まらないだろうな。それで一つ一つその屋敷の跡などをめぐっていくことになるが……」
「何かあるの?」
「正しい手順を踏まないと、“罠”が発動しなくて白い女が出てこないんだ」
「“罠”?」
「そう。ああい見えて用心深い所があるから。ただゲーム内の出来事と現実の出来事が必ずしも一致するとは限らないから、一度確認をしておいた方がいいかもしれない。“罠”にわざわざはまる必要はない」
そうミナトが言い切るのを聞いて、私達はとりあえずその方針で行ってみようとは思う。
それで目的の場所全てを回り、あの白い女が出てこなければ……そうなる。
ハルト王子が渋面を作っているのは、危険な場所に自ら飛び込もうとしているからだろう。
そう私は思い出して、次にロジェンを見るとロジェンはやる気まんまんだった。
と、そこでイレイズが、
「あの、聞いてもよろしいでしょうか」
「何かしら」
「昨日から聞くゲームとはいったい何なのでしょうか。まるで奇妙な道具の……物語のような未来予知のものがあるように聞こえますが」
「物語のようなもので、私達の世界のものではない“形態”であるらしいわ。それを覗き見るとこれからの出来事が少しわかるみたい」
「そう……なのですか」
「ええ。でも絶対ではないようだけれど。それをもとに、ハルト王子の別荘付近で早速探してみましょう」
といった話をして、朝食を食べて早々移動することになったのだった。
昨日のうちに連絡しておいたら、今日もすでに白い女に骨にされていた人たちの処理が行われていた。
なんでも別の場所で誤報であったらしいが大変な災害が起きて向かっていた所、私達の方の話が丁度やってきたらしい。
それでこちらの方に目的を変更したためすぐに対応が出来たそうだ。
彼らの状況を見つつ、城の方が大丈夫かなどといった話をしつつ、
「そういえばそちらのロジェン様に似た女性は……」
「そちらの話は聞かないで頂けると助かりますわ」
やってきた騎士の人に聞かれたが、私はそういった誤魔化した。
だっていえるはずがない。
この人は本物のロジェンで女体化しています、などと。
できればこの件を終わらせて、ロジェンを元の男性に戻る方法を知りたい。
そうすればすべては元通りだ。
私の婚約も。
そこまで考えて、婚約に関して変な感じがしてしまう。
特に意味はないが、ちらりとハルト王子の方を見ると私と目が合ってしまう。
どうしたのだろうと思ってみてみるとそこでハルト王子が微笑み、
「どうした? リリー」
「い、いえ、ちょっと考え事をしただけよ」
そう返す。
そう返すしかなかった。
うん、気のせい、そう私は思って、それ以上考えないようにする。
そうでないと変に意識してしまいそうだから。
彼とはロジェンと同じ大切な幼馴染なのだから。
私は心の中で数度そう思って、それから馬車に乗り込み目的の別荘に向かったのだった。
ハルト王子の別荘は町から少し離れた小高い丘の上にあった。
ここでしばらくは療養という名のロジェン探しになるところだった。
だがすでに目的は別の物に変わってしまっている。
そう思いながら屋敷に入っていく。
こちらの管理人の人からも、白い女の……屋敷が消える関係の階段について聞くと、
「ええ、幾つか聞いたことがありますね。怖い話ですね」
といったように答えていた。
だが……このまるで物語の推理物で人が死んだというかのような、軽い感じは何なのだろうと私は奇妙に思う。
それは、雇っているこの地のメイドたちから話を聞いてもそうだった。
認識がとても軽い。
身近に起こった出来事だというのに、そこまで気にしていないように見えるのだ。
これはいったい何なのだろう?
その不気味な無関心さに私が気色の悪さを覚えているとそこでロジェンが聞いてきたので私はありのままの気持ちを伝える。
するとロジェンが少し我慢してから、
「う~ん、この、作り話の階段をしているような軽い感じ。白い女の話を聞くと結構そういうことが多かった気がする」
「そうなの?」
「当たりかもしれないね。ここに白い女がいるのは確実で、何かをしている」
「そうな……」
「でも今日は夜遅いから、明日にでも様子を見に行けばいいよ。夜は、白い女以外にも怖い生き物“人間”が悪さをするにはちょうどいい時間だからね。ハルト王子もこんなかわいいリリーを、夜道に放り出したくはないでしょう?」
そこで話題になったハルト王子は、当然だというかのように頷いて、それから私達はそれぞれの部屋に移動して眠ったのだった(ミナトはようやくひとり部屋だと喜んでいた)。
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