大勢の人が出てくる
こうして私達は屋敷から逃げ出した。
とりあえずは屋敷の外に出て、入り口よりもさらに道側に向かった木の陰、屋敷から私達が見えない位置まで移動をする。
ロジェンがやけに楽しそうに私の方を見ている気がする。
どうしたのだろうと思っていると、
「聖女の魔法を見るのは楽しいからね」
「ロジェン、貴方だって聖女でしょう?」
「それはそうなんだけれど、ボクにはそういった能力が全く記憶にないからね。だから興味があるんだ」
「そうなの? でもどうして聖女なのにそんな能力がないのかしら」
私がそう呟くとそこでミナトが、
「ロシェ……ロジェンの方は、攻撃に対する耐性などといった方にパラメーターが割り振られたタイプだから」
「つまり?」
「物理的にも魔法的にも肉体が強い分、能力があまりない」
「……」
「だから、リリーの方の力とは別物だと考えた方がいい。確か一応設定上は、リリーが死んだ場合、リリーと同じ能力がロシェの方に目覚めるとかなんとか。そしてその場合は新たに補助用の……今のロジェンのような聖女が生まれるらしい。でも二人は仲がいいから殺し合いにはならない……そもそも聖女どうしは基本的に仲がいいっようになっているとかなんとか」
「そうなの。でも“設定”?」
奇妙な言葉を聞いた気がして私はそう聞き返す。
ロジェンに能力があまりないのは補助だからであるらしいのだけれどそれを、
「“設定”? どういう意味?」
「あ~、俺にはそういったものなんだ。とりあえず回復だけさせてから、宿で話すよ」
ミナトにそういわれたので、私はとりあえず、
「“聖女の祈り”」
そう聖女としての力を使う。
屋敷周辺に光が満ち溢れてすぐに消えた。
頭がくらくらするのを感じるけれどそこでロジェンが、
「屋敷から人の気配がいっぱい感じるね」
「本当。でも早くここから逃げた方が良さそうね」
といった話をしながら私達はその場を後にする。
やがて湖に行く方向だと、屋敷を示す看板が立っているのが見えて、
「ハルト王子が湖の方を、と言って屋敷にたどり着いたのよね」
「そうだな。まさか反対になっているとは思わなかった。そういえば湖の毒の方はどうなんだ?」
そう、あの屋敷で唯一生きていた男を背負いながらハルト王子がそこで呟く。 それにミナトが反応した。
「しまった、忘れていた」
「何を?」
私が聞くとミナトが、
「本当ならば、捨て台詞として湖に魔力的な汚染を広げるいわば“毒”を入れたといった捨て台詞が来るはずだったんだ。それで分かったはずだが……まあ、どうせもう入れてある。それを俺は知っている。だから捨て台詞を言おうが言うまいが関係ない。それに聖女の能力で、それをどうにかできるはず」
「……すでにやらかした後だったんだ。それで私の力を使えばいいのね。道はこちらかしら」
「俺が知っている限りだとそうだ」
と説明されて慌てて湖に向かい、私達は聖女の力で浄化した。
不気味に黒く変色していた湖は一瞬にして綺麗なものに変わる。
そして帰り道、屋敷から大勢の人が出てくるのを見たが……私達は、そ知らぬふりをして、村までの道を案内したのだった。
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