別人
目の前に現れた一人の女。
恐ろしいほど美しい、白い女だが、この女には見覚えがある。
そう、ロジェン殺そうとして入れ替わらせたあの“偽聖女”だ。
だが、彼女はあの時確かに倒したはず。
ではここにいるのはいったい誰だ?
姿かたちがここまで似ていて、“別人”という事はないだろう。
こんな美しくも残酷な女はそんなに沢山いるはずがない。
そう思いたいのに私は、奇妙な違和感を覚える。
この女は本当は、“別人”ではないのか?
どうしてそう思ったのかは分からないけれど、何となく、この女は……“違う”気がする。
そこで彼女は私に向かって微笑み、
「初めまして、でよろしいかしら。そちらの忌々しくも可愛らしい彼女のお友達の……“聖女”さん?」
「!」
「驚かなくてもいいわ。過去の“聖女”の“情報”をかつての子が残しておいてくれていたから、それを利用して……特に“聖女”の感覚を鈍らせるようなものを巻いていたのですもの。気づかないのは当然ですわ。そして……気づかないからこそ、貴方の“正体”を私は気づけたの」
楽しそうに、嬉しそうに語る彼女。
だがこんなところで正体がわかるとはと思いつつ、同時に、ここで出会っている女は、ロジェンを殺そうとしたあの女ではない、とわかる。
だってあの時、私はあの女と対峙して“聖女”だと気づかれている。
なのに今ここにいる女は、私がここにきて能力を下げられているのに気づいたから、“聖女”だと気づいたと言っている。
つまりは“別人”だ。
これほどよく“似ている”のに。
「貴方は何者なの? 私達が倒したはずのあの女によく似ているわ」
「私によく似た女?」
「ええ、今は私たちの国を襲った……ミサという女よ」
「ああ、あの子。そういえば最近連絡は取っていなかったけれど……あの子、私たちの中では一番“弱くて”、頭も悪いもの。そう、あの子に会ったの」
そういって目の前の女は楽しそうに笑う。
そうしていると本当に、
「そっくりね」
あまりにも似すぎていて私はそう呟いた。
すると彼女は唇の端を上げて、私の顎をつかみ顔を近づけてから、
「あんな“できそこない”と一緒にしないで? いじめてしまうわよ?」
「……仲が悪いの? こんなにも似ているのに」
「似ているからこそ、気色悪くて、能力が低いところが気になるものよ。もっとも私は、“女の子”の方が好きだからまだ友好的な方よ」
「……」
「でも本当に好みなのは、貴方のような綺麗な子や、あちらの反抗的な可愛い子よ。あちらの子は、元男なのだそうね。素晴らしいわ。男なんて存在自体が許されざる醜悪な生き物ですもの。“あの方”以外。もっとも面倒だから“下僕”を一人だけ“許して”いるけれど」
そう笑う彼女の話を聞きながら私は、この目の前の人はそういう人か、と思いつつ、
「それで、私をどうするつもり?」
「どうするか? そうね。しばらく捕えておいて、様子見かしら。何しろ“聖女”というこの世界の“楔”は私たちにとっては“不都合”な存在ですもの」
そういって彼女は微笑んだのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




