わらい声
リリーが気を失う直前のこと。
ハルト王子とロジェンが中を調べようと入り込んだ時だった。
大したものはないので、隠れている場所は見当がつきそう……そう思った所で、背後からリリーの悲鳴が聞こえたのだ。
二人が振り返るとそこには、白い糸に絡み取られるリリーの姿が!
「「リリー!」」
ロジェンとハルト王子が振り返ったそのさきでは、白い糸に巻き付かれたリリーの姿があった。
その糸を切ろうとロジェンとハルト王子はすぐに攻撃しようとした……のだが。
「え?」
そこで間の抜けた声を上げたロジェン。
目の前で白い糸の毛玉のようになったリリーがどこかに引っ張られるように消えていくのに気をとられたのかもしれない。
いつの間にかロジェンの足にも白い糸が絡みついている。
慌ててそれを切ろうとするとすぐに、
「うわぁああああ」
「ロジェン!」
ロジェンまでもが、先ほどのリリーが連れていかれた部屋に連れていかれてしまう。
ドアがとらえる時に限った開き、そちらの中に入り込んでしまう。
あとに残されたのは、ハルト王子のみ。
「……二人を人質にしたのか?」
『そうですわ……くすくす』
ハルト王子の独り言に、不気味な女の楽しそうな声が響く。
ここの館の主であり敵であり……リリー達をさらった本人なのか?
そう思うと同時に、
「リリーに傷一つ付けたなら“許さない”」
『存じておりますわ。何しろ貴方様は、彼女が恋愛観所で大好きですものね』
「……」
『ここに入った時の様子からすぐにわかりましたわ。彼女はとても美しくてかわいらしいですもの。私のコレクションに加えてしまいたいくらい。もう一つの気に入らないあの子も、今は可愛らしくなっておりますわ』
そういって笑う声を聞いて、ハルト王子は、
「それで、俺だけ手を下さず何が目的だ」
『目的? 目的……目的ねぇ?』
誤魔化すように呟き、声の主は嗤う。
酷くおかしい事を聞いてしまったかのようなそんな口調で繰り返す。
しかも、それに関してはこの声の主は答えるつもりはないようだ。
不愉快だ、そうハルト王子は思う。
まるですべて掌で踊らされているような気がする。
そう思っていると再び声が聞こえた。
『私たちがあなた様に危害を加えることはありませんわ。どんなに憎々しい聖女の側についたとしても、です。それでは、貴方様がこちら側に来るまで、しばし私も休ませて……楽しませていただきますわ』
「お前、何をする気だ!」
不安を覚えたハルト王子がそう叫ぶも、笑い声だけが響いただけで答える様子はない。
完全に罠にかかったような状態だ。
「……やはり、来るべきではなかった、止めるべきだった。だが……こうなってしまっては仕方がない。鍵を探そう」
ハルト王子はそう呟き、鍵を探し始めたのだった。
寒い場所で、体が妙な感覚がある。
宙に浮いているようだと私は思った。
そしてその感覚は正しかったらしい。
うっすらと目を開いた私の前に、見覚えのある一人の女がいた。
「あら、こちらの子が先に起きたのね」
そう、以前倒したはずのあの“偽聖女”が私の前にいたのだった。
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