分からない
向かい側の部屋に私たちは向かうことになった。鍵と回復薬は、それぞれ、ロジェンとハルト王子に渡す。
ハルト王子が一番先頭のため、回復薬を渡しておく。
それから外に出るも、廊下は荒廃した廃屋の様に見える。
先ほどの部屋はいったい誰が住んでいたのだろう?
あれほど綺麗にされているという事は、誰かが住んでいたのだろうけれど……やはり“偽聖女”だろうか?
それとも何か別の理由があるのか?
分からない、と私は思いながら歩いていくとそこでハルト王子が、向かいの部屋のドアノブに手をかけて、
「反対のドアのそばに魔物がいるな。感じる」
「え? そうなんだ。気づかなかった」
そこでハルト王子の言葉にロジェンが、そういいだす。
ハルト王子が少し沈黙してから深々とため息をついてロジェンを振り返った。
「ロジェン、お前、さっき魔物の気配はわかるって言っただろう?」
「わかるにはわかるけれどそこまで細かく分からないよ。よくハルトはわかるなって。きっとハルトにも何らかの“役目”と力があるんじゃないのかな」
「……もういい。行くぞ」
ロジェンの言葉を無視して、ハルト王子がそう告げるとともに部屋のドアを開けた。
木製のドアは立て付けが悪く、キイッと、耳障りな甲高い音が聞こえる。
その音を聞きながら私は中にいる生き物に耳を澄ます。
何かが地面をける音がした。
現れたのは大きな牙を生やしたウサギのような魔物が二体。
大きく宙を飛ぶそれを、ハルト王子が瞬時に剣でなぐ。
白銀の線が宙に走ったかと思うと瞬時に魔物は消失した。
後には魔力のかけらである石が転がる。
やはりハルト王子は強いわねと思って私が見ていると、
「まだ、何かいるな。気を付けてくれ」
そう私たちにハルト王子は言って、注意を促してくれる。
しばらくその場に立ち止まって中の様子をうかがうがそれ以上その中にいる“何か”は出る様子はない。
だからそこでハルト王子は、
「ドアを開くから、攻撃されたら瞬時に防御の魔法を」
「分かったわ、それは私がやる」
そう私は、自分の出番だわと思って帰した。
そして一気に扉を開くが……何もいない。
天井なども様子を見るが、そういった魔物はいそうにない。
しかも中は廃屋のように、洋服ダンスとイスト箱が数個、そしてバケツのようなものが一つ転がっているという……見通しのいい場所だ。
ここには生活感もない。
そして魔物がいたとしても隠れる場所は限られている。
それを見たロジェンが、
「ハルト、魔物はどこにもいないよ?」
「……見える範囲にいるような雰囲気はあるが……透明化する魔物も、いるにはいたな」
「そういった魔物? どこにいるの?」
「……俺としては、あそこの天井付近に気配を感じる」
「じゃあ先に攻撃しちゃおうか」
そうロジェンとハルト王子が話して中に入っていこうとする。
私もすぐに後を追って、もしもの時は……そう、思ったのだ。
そこで私の目の前に白い糸のようなものが現れて、
「え?」
魔の抜けた声をあげている間に白い糸が絡まって、そのまま何かを吹くかけられて私は意識を失った。
失う寸前に、ハルト王子やロジェンが私を呼ぶ声が聞こえた気がしたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




