屋敷
私の位置からも屋敷が見えてきた。
青い屋根の屋敷だが、この位置から見るにそこまで壊れていないように見えた。
けれどすぐにそれは気のせいだったと私は気づく。
この屋敷は、様々な部分が壊れていた。
白い壁には亀裂が入り崩れ落ち、赤いレンガがむき出しになっている。
はめ込まれた窓枠の飾りはすでに緑色に錆びていて過去の輝きはなく、ガラスは所々が割れて残骸が周囲に散らばっている。
私が見たその屋根すらも、瓦の部分がボロボロになっていた。
遠目で見ると粗が目立ちにくいのねと私は思いながら、ロジェン達についていく。そこで、
「あ」
「どうしたのリリー」
私の前を歩いていたロジェンが不思議そうに聞いてくる。
それに私は、
「ようやく視線を感じ取れたの」
「……“聖女”ようの対策を彼らもとっているのかなってふと思った」
「……どういうこと?」
「そのままの意味だよ。彼らも“聖女”が恐るべき敵だと認識しているんだろう。だから警戒して監視して……何か罠を仕掛けているんじゃないかな」
ロジェンが笑うのを聞きながら私は、笑い事ではないと思いつつ周りを見て回る。
家の周辺にはそこそこ雑草が生えているが、人が踏み荒らしたような跡があり、それが道となっている。
けれどところどころに私の腰の高さほどの雑草が見えるとはいえ、地面を追いつくすほどの物しかないのは、つい最近、この雑草を刈った人がいるからなのか。
それ故に、庭に転がる壊れた椅子やおもちゃ、井戸などが朽ち果てるのを待つかのように転がっているのが見える。
そういえば、
「この貴族の屋敷はどうして放置されたのかしら。そもそも誰の持ち物なのか知らないわ」
「そちらの方も調べておくべきだったかな? でも放置して長いと聞いていたから、勝手にそこを拠点にしているものだと思っていたけれど……」
ロジェンがそう呟て何かを考え込むように黙る。
どうしたのだろうか?
そう私が思っているとそこで、
「二人とも、よそ見をしていると危険だぞ」
ハルト王子に注意されて、それ以上はその貴族に関しての話をしないことにしたのだった。
この屋敷の何処から入り込むか。
事前に屋敷の地図は二人に渡してあったが、ここから見る範囲では玄関が最も近い。
けれど、庭に続くテラスと家を隔てる扉は、甲高い音を立てて風に揺られる程度に開かれている。
鍵が意味をなしていないようなこのお屋敷は、そこそこの広さがあるようだった。
さて、何処から入ろう、そんな状況にあったのだけれど、私はこの庭を歩くのは嫌だった。
雑草が嫌であったわけではない。
そこでロジェンが周りを見回して、
「変な魔法が所々に見えるね。これ“罠”かな? でもその割には魔力が小さい」
「誰かが来たのを探知するものかもしれないわね。罠にしては確かに微弱すぎる」
私がそう答えるとそこでロジェンが、
「そうだね。でももうすでに誰かが僕達を監視しているようだけれど、どうしようか」
「……かといってわざわざ起動させる必要もない。何もない玄関から行こう」
そうハルト王子は言ったのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




