道の先
ハルト王子が引き寄せられるような気がするといった方向に私達は向かう。
正確には湖の方を示した看板に向かって、だ。
私達としてはそのつもりだった。
けれど徐々に暗く、緑の葉が不気味なほどに折り重なる深い森になっていくこの道を進むにつれて、私は違和感を感じた。
「こんな不気味な場所が、湖に本当に通じているのかしら。村の人達も湖に行くでしょうし、もう少し手入れがされていてもおかしくない気がするけれど」
そう私が、暗い森のどこかで誰かがこちらを“見ている”ような不気味さを感じながらそう呟く。
そこでハルト王子が、
「確かにそうだな。それに湖が近くにあるはずなのに水の音や、水の匂いがしない」
「やっぱり道を間違えたのかしら。戻る?」
私がそう声をかけるとそこでロジェンが、
「このまま行こうよ」
「でも……」
ロジェンの言葉に、変な道に入ろうとしているのなら早めに引き返した方が良いと私は言おうとしたのだけれど、そこでロジェンが更に楽しそうに、
「だってボク達みんな、“観察”されているし。ハルトは気づいた?」
「……ああ。ずっと見ているからな。ロジェンはそれを知ったら嬉々としてそちらに突入しそうだから黙っていたのに……」
ハルト王子が呻くようにそう呟く。
だがそれを聞いた私は、私だけが敵の気配に気づいていなかったと気付く。
なんで。
そう私が思っているとそこでロジェンが、
「リリーは気づいた?」
「……気づかなかったわ」
「う~ん。“彼ら”の気配がするのだけれど、もしかしてボクの方がそう言った物を感知する範囲が広いのかな? その分別の能力が削られているのかもしれないけれど」
「そう、なのかしら」
「かもしれない。だから修業はやっても無駄だと思うのです」
「でも挑戦すれば新しい力に覚醒するかもしれない。後で試しましょうね」
「そんな~」
ロジェンが情けない声を上げた。
そこでハルト王子が立ち止まる。
どうしたのだろうと私が思っているとそこで、
「屋敷が見えるな。どうやら、湖ではなく、その……貴族の昔の別荘の方に来てしまったようだ」
「……ちょうどよかったわ。最終目的はそこであったもの」
「……本当に行くのか」
ハルト王子が私達にそういうので、私は、
「もちろんよ。それにハルト王子も、なんとなくこちらに惹かれるようなものがあったのでしょう? それは今はどうなの?」
「……強くなっている気がする。もっと近くで見たいような……」
「ハルト王子にも何か私達のような特殊能力があるのかしら」
ふと思いついたので私が言うとハルト王子は少し黙ってから、
「そういった物があればそれはそれで嬉しいが、多分違うと思う。でもこれは奇妙な感覚だな」
「ハルトにもそんな能力があるなら、ハルトこそ修行をすべきだよ」
「残念だがロジェン、お前の修業は確定だ。能力が新たに目覚めるならその分リリーを守りやすい。だから、ロジェンの修行は後で俺も手伝おう」
「ハルトは本当にリリーを大事にしているね」
そこでロジェンが少し声を低くしてそういうとハルト王子が沈黙する。
そして、そこでようやく私の位置でもその屋敷が見えたのだった。
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