森の中
こうして私達は更に森の中を歩いていく。
歩いている範囲では、小鳥のさえずりが聞こえるような穏やかな森だった。
こんな場所に昔私達三人は、こっそり三人で抜け出して遊びに行ったりもした。
もちろん城の近くの森にだ。
昔ハルト王子は体が弱かったこともあり、その病に効果があるという約束が私達の国によく採れたために、療養も兼ねて泊まっていたのだ。
それもあり同い年の私達は気が合って、よく一緒に遊びまわっていた記憶がある。
あの頃から私達三人は一緒で、“兄弟”のようだった気がする。
いつからだろう?
気づけばこうやって私は、ハルト王子やロジェンの背中を見て歩くようになったのは。
あの頃はいつだって肩を並べて走り回っていた。
なのに私は今、二人の背を見ながら歩いている。
理由は分かっている。
そして邪魔になりたくないから私は受け入れた。
実際に合理的だから、それを受け入れるのは当然ではあったけれど、私は……置いていかれそうになっているような、不安感が募る。
そう思っているとそこでロジェンが振り向いた。
「リリー、大丈夫?」
「? 何が?」
「何となく思いつめたような顔をしているように見えるから。悩み事があるのかな?」
「悩み事……幼馴染の婚約者が死んだと思ったら女体化した挙句楽しそうにしていて今から新たな敵と戦いに行く状況……この出来事の何処に、悩まない要素があるのかしら」
そう返すとロジェンは一回黙ってから、
「ま、まあ、人生いろいろあるから女体化することもあるよ。それに新たな敵は次から次へと現れるし」
「……女体化はあり得ないわね。さて、敵に集中しないとね」
「う、うん」
それ以上ロジェンは言うのを止めたらしい。
でもその前で、ハルト王子が何かを言いたそうに私の方を見たが特に何も言わない。
ハルト王子は大人しく比較的温厚だ。
同時に思慮深い所もある。
だから。
私の持っている不安の王な物にも気づいているのかもしれない。
でも口に出せないものだろうと分かっているから、問いかけないのだろう。
そういった意味でも私は、彼が心の強い人だと思う。
痛みも優しさも全部持っている人。
そう私は思いながら歩いていく。
途中、蛇のようなものに遭遇したくらいで、魔物にも、そして私の隣の部屋にいたその人達らしき者達も出会うことはなかった。
普通に森の中を散策しているだけのように感じた。
やがて、二つの分かれ道がある。
古びた壊れかけの木の看板に書かれた矢印には、この先に湖があるといった事が書かれていた。
そうなってくると、
「こちら側が別荘……になるのか?」
ハルト王子がそれを見て、そう呟く。
そこでロジェンが、
「でもどうせなら、確かリリーの見た夢は湖に彼らが何かをするらしいって夢だったんだよね?」
「ええ、確かそう言っていたかしら」
「だったら湖の方も軽く下見をしておこうよ。いざとなったらそちらの方も手を打たないといけないし」
そういった話になった。
それは偶然の気まぐれとしか言いようのない選択。
ハルト王子は、
「……確かに湖に何かされるのは飲み水の関係でよろしくないな。そちらを見に行こう。それに……なんとなく、こちらに引き寄せられるようなものがあるし」
「? そうなの? ハルト王子にしては珍しいわね」
私がそう言うとハルト王子は目を瞬かせて、そうだな、と、どこか考え込むように呟いたのだった。
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