その件はそのうち
こうしてロジェンとハルト王子に夢の中で見た地図を渡す。
それを見てハルト王子が、
「また夢で見た物語か。……まるで俺達の“運命”すらもあらかじめ決まっているように見えてくるな。あ、リリーのそういった聖女としての予知能力が気持ち悪いといった意味ではなく……」
「そうね。まるであらかじめ決まっているように見えるけれど……どちらかというと細かな差異もあるし、“同じ”とは言い切れない気がするわ。それに、私、思うの」
「何が?」
ハルト王子がそう私に問いかけてきて、私は大きく深呼吸する。そして、
「この物語は、最後は“ハッピーエンド”、それも敵を倒せるものになるようなの」
「そう、なのか?」
「ええ。だから……その誰かが仕組んだのか、はたまた偶然の産物なのかは分からないけれど……その物語の“欠片”を集めて一緒に“踊ってあげて”も構わないわ」
そう笑うとそこでロジェンが少し呻いてから、
「それはその……“彼ら”の仕組んだ何らかの“わな”の可能性はないのかな?」
「“聖女”の能力だと思う。それに“彼ら”というような“偽聖女”が仕組んだものなら……私は一緒に“踊る”つもりはないわ。私のパートナーとしては、能力不足よ」
「でも……」
「それにこれは、“偽聖女”といった彼女たちすらも含まれたもっと大きなものであるみたい。“異界の知識”の片鱗。彼女たちがそれに鑑賞できるとは思えないわ」
「……あまり過信しすぎるのもどうかと思うけれど、一応は信じておくよ」
「一応はこの力のおかげであの“ロジェンの偽物”は倒せたのだから、信じて欲しいわね」
私はそう言うとロジェンは沈黙した。
それ以上は話したくはないようだった。
けれど私はふと気になった事を聞いてみる。つまり、
「ロジェン、貴方も夢の中の物語では“聖女”なのよね。なにか変わった事ってないの?」
「う~。特に何もないよ。体が女の子になって、おっぱいもみ放題になってひゃっは~ってなったくらいで」
「そう……やっぱりそういった所が物語と違うのかしら。それとも……」
「それとも?」
「まだ能力に覚醒していないのか」
私がそう呟くとロジェンが元気よく起き上がり、
「つまり僕にも隠された特殊能力が!」
「あるのかもしれないわね。ハルト王子、そういった能力覚醒というとどんなものがあるかしら。私は、死にかけて覚醒するのを見たことがあるけれど」
そうハルト王子に話を振ると凍り付いたようなロジェンの横でハルト王子が少し呻いてから、
「そうだな。リリーが言った物でないと、やはり修行かな。心を無にし、厳しい鍛錬をすることで己の内なる力と対話して、その本来の力を目覚めさせるとかなんとか」
「時間がかかりそうね、でも“聖女”としてロジェンが力を手に入れるのなら、ちょっと大変な目に合うのも……」
そこで私とハルト王子は無言でロジェンを見た。
ロジェンはその視線を受けてびくっと震えてから、
「な、何が言いたい」
「……その件はそのうち検討しましょう。さて、そろそろ行きましょうか」
「そ、そのうち……」
今の話を聞いてロジェンが凍り付いたようではあったけれど、私は見なかったことにして、目的の場所に向かうことにしたのだった。
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