上等な部屋が一部屋
上等な部屋が一部屋しか開いていないらしい。
となると、
「誰か一人がその部屋で、そうじゃない部屋は二人ってことかしら。あ、私は馬車で寝泊まりしても平気よ」
そう返すとハルト王子が、
「リリー、君は女の子としての自覚を持つべきだ」
「そうそう、リリーがそこで寝るといいよ。そして女の子な僕もそこで添い寝してあげる!」
「……ロジェン。お前はだめだ」
「ええ~、ボクを女の子扱いしてよ~」
とかなんとか言い出した。
それにハルト王子は頭痛を覚えたようだけれどそこで御者の人が、
「ではどうしましょうか」
「それ以外の部屋は幾つくらい空いているんだ?」
ハルト王子が聞くと御者の人が、
「全てです。5部屋ほど全部あいていましたか」
「ではその上等な部屋を入れて人数分、宿をとってくれ」
といった話になった。
どうにか一人一つの部屋をとれたのは良かったけれど、
「その上等な部屋に泊まっているのは一体、誰かしら。挨拶はしてきた方が良いかしら?」
「そうだな……変な因縁をつけられたりするよりは挨拶をして、上手くいけば交流する切っ掛けにもなるかもしれない。だったら挨拶をしておこう」
ハルト王子がそう言って、挨拶をしに行くことになった。
けれど、宿に向かうと今は留守らしいと聞く。
またここ最近、一週間ほど泊まっている上客ではあったらしいのだけれど、宿の主人はあまり好ましく思っていないようだった。
「奇麗な方なのですが、こう、不気味と申しますか……」
口を濁すようにそう言っていたが、その時私達はその意味にあまり気づいていなかった。
それにすぐそれ所ではなくなってしまったから。
「……きた」
ロジェンがそう、唐突に小さく呟いたのだった。
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