第八十七話 「秀樹vs化けガエル」
続けて9番から16番の参加者が試合場へと上がる。
13番の秀樹の相手は14番の化けガエルだ。
獣人ではなく妖怪である。
「なんじゃ、秀樹の相手は化けガエルか」
妖怪の事に詳しいスギナに恒夫たちが注目した。
「にゃはははっ、バカガエルって名前からして間抜けだぞ」
「間抜けはお主じゃ、バカではない化けガエルじゃ」
大笑いするラグを迷惑そうにスギナが見上げる。
「にへへへっ、化けもバカも同じだぞ、カエルなんて怖くないぞ」
黙っていろと言うように恒夫がラグを押し退けてスギナの前に出る。
「それで化けガエルは強いのか? どんな力を持ってるんだ? 」
「妖怪のレベルで言うと雑魚妖怪じゃ、ラグの言うように所詮カエルじゃ、たいした力は持っておらん、じゃが毒を使う奴らもおるから注意はした方がよいの、それと…… 」
スギナが試合場に立つ化けガエルを指差した。
「魔法の杖を持っておる。たぶんじゃが魔法の力も貰っておる。己が力が無いので1番凄そうなのを選んだはずじゃからの」
「魔法の力に魔法の杖、中級魔法使いって事か、秀樹と同じだな、大丈夫なのか? 」
恒夫が栄二に振り向いた。
「元の力がたいしたことないなら大丈夫だよ、中級魔法同士でも秀樹は魔法銃を持ってるからね、あのカエルが毒を持ってなければ簡単に勝てると思うよ」
「油断するわけじゃないけど見るからに雑魚じゃない、あんな妖怪に秀樹くんが負けるわけないわよ、栄二くんから空気玉も借りてたしね」
鬼たちと戦った経験からか栄二も菜穗も自信に満ちている。
「空気玉? 何に使うんだ? 」
怪訝な顔をする恒夫の前で栄二と菜穗がニヤッと笑った。
「秘密だよ」
「そうね、言えないわね、同じチームなら教えてもいいんだけどね」
「そうだよ、チームに戻ってきてよ、スギナちゃんとラグさんと一緒にさ」
楽しそうに笑う栄二の向かいで恒夫が顔を顰める。
「そこまでして聞きたくないぜ、どうせセコい戦い方だろ」
「話しはそこまでじゃ、始まるぞ」
スギナに言われて振り返ると秀樹と化けガエルの戦いが始まっていた。
化けガエルが大きな口を開けて笑う、
「ケケケケッ、人間か、オレ様の敵じゃない、お前を倒して50ポイント貰うとしよう」
「カエルには負けられないな、鬼のビギさんに笑われるぜ」
化けガエルがぎょろっと目を見開いた。
「ビギ……青鬼のビギか? 」
「おう、そうだ。お前知ってるのか? 」
戦うのも忘れたように秀樹と化けガエルが見つめ合う、
「知ってる。オレ様はビキの棲んでいる山から少し離れた沼で生まれた。あの辺りで青鬼のビギを知らない妖怪はいない、だが人間が何で知っている? 人など来ない山奥だぞ」
「三つほど前のイベントで戦ったからな」
ケロッとした顔で言う秀樹の前で化けガエルが顔を顰める。
「戦った? 嘘をつくな、ビギと戦って生きていられるわけがない、オレ様でも逃げ回るだけなのに人間が生きていられるわけがない」
秀樹がニヤッと楽しそうに口元を歪めた。
「生きるも何も俺が勝ったからな、流石に強かったからギリギリだったけどな」
「嘘をつけ! 人間が鬼に勝てるわけなどあるか! 」
怒鳴る化けガエルに秀樹がとぼけ顔で続ける。
「嘘じゃないぜ、バカガエルにはわからないだろうがビギさんは俺たちの力を認めてくれたぜ、正々堂々と戦ったんだからな」
脇で見ていた恒夫がぐっと拳を握った。
「旨い、怒らせて判断力を鈍らせる作戦かよ」
「秀樹にそんな考えはないみたいだよ、バカにしてからかっているだけだと思うから」
隣で見ていた栄二が苦笑いだ。
「秀樹なら勝てるじゃろうが相手を甘く見とるのは感心できんのぅ」
「にゃははははっ、いいぞ秀樹、カエルなんてモズのはやにえにしてやれ」
難しい顔をするスギナの隣でラグが大笑いだ。
「モズのはやにえって何? 」
後ろで見ていた菜穗が恒夫の背中を突っついた。
「モズって鳥がカエルとかトカゲを捕まえて木の枝とかに刺して保存しておくんだ。カエルやトカゲが干物になってるの見たことないか? アレだよ、保存しても殆どは忘れるらしくてモズの住処の近くじゃ彼方此方で見れるぞ」
恒夫が振り返ると面倒臭そうに教えてくれた。
「ああ、あれね、田舎で見たことあるわ、干からびたカエル、あれがモズのはやにえかぁ」
成る程と頷く菜穗と恒夫の間にラグが割り込む、
「にゅひひひひっ、化けガエルで作ったらでっかい干物ができるぞ、そんでツネが食べるぞ」
「食べるか!! 只のカエルならともかくあんなキモいの食えるか」
怒鳴る恒夫をラグが不思議そうに見つめる。
「ツネなら食えるぞ、あたいが『あ~ん』ってしてあげるからにゃ、あ~んってやったら何でも食ってくれるぞ」
「いや、食わないから、ラグが『あ~ん』してくれてもカエルなんて食わないからな」
「うにゅ、なんでだ。あたいがラブラブで『あ~ん』ってしてもか? 」
「ラブラブは嬉しいけど『あ~ん』ってするのは普通の食えるものにしてくれ」
弱り切った恒夫の腕にラグが縋り付く、
「好き嫌いはダメだぞ、カエルでも毛虫でも何でも食わないとハゲ治らないぞ」
「ハゲじゃねぇ! カエル食ってハゲが治るなら喜んで食うけどそんな話聞いたことがないわ! 大体好き嫌いはダメって言うならラグは野菜を食えよな」
「ふにゅ! 野菜はダメだぞ、あたいは野菜アレルギーだぞ、野菜食うと不味いんだ。不味くて便秘になるからダメなんだぞ」
言い訳しながらラグがじっと恒夫の薄い頭を見る。
「まさかツネの頭もアレルギーでハゲになったのか? 毛の無いカエルを食い過ぎてカエルハゲになったんだな、そんでカエルが食えないんだぞ」
「ハゲじゃねぇしカエルも食ったことないからな! ラブラブとか言いながらラグは俺のこと玩具としか思ってないだろ、便利な道具と勘違いしてるんじゃないのか」
怒鳴る恒夫の腕をスギナが引っ張った。
「恒夫! 騒がずに見ておれ、そろそろ動くぞ」
「そだぞ、ちゃんと見てろよ」
いつの間にかラグは前に出て試合を見ている。
菜穗は知らん顔だ。
「なんで俺だけ…… 」
むくれるながら恒夫も前に向き直る。
化けガエルと秀樹の言い合いはまだ続いていた。
「鬼がたった一人の人間に負けるなどありえん、人間は嘘つきだ。嘘をついてオレ様をビビらせようとしても無駄だぞ」
大口を開けて怒鳴る化けガエルに秀樹が魔法の杖を向ける。
「本当だぜ、今からお前を倒して証明してやるよ、カエルなんて青鬼のビギさんに比べたら雑魚だろうけどな」
「ほざけ! 貴様など叩き潰してはらわたぶち撒けてやるわ」
化けガエルがバッと秀樹に跳びかかる。
「ウォーターニードル」
秀樹の魔法の杖から水でできた針が無数に飛び出した。
「ケケケッ、そんなもの効くか」
避けもせずに突っ込んでくると化けガエルが魔法の杖を振る。
「プラズマスラッシュ! 」
「水の結界 ウォータードロップアーマー 」
秀樹が咄嗟に防御魔法を唱えた。
だが中級魔法のプラズマスラッシュは低級魔法のウォータードロップアーマーでは防ぎきれない。
バチバチと雷光をあげる電気の刃が秀樹に突き刺さる。
「ぐあぁーっ 」
秀樹が仰け反って倒れた。
化けガエルがトンッと近くに着地する。
「ゲッゲッゲッ、人間が鬼に勝っただと、くだらん嘘をつきやがって……ぶっ殺してやる」
ボン! 殴ろうとでもしたのか近付いた化けガエルが炎に包まれた。
倒れた秀樹が魔法銃で攻撃したのだ。
「ギゲゲェェーーッ 」
叫びながら飛び退く化けガエルの向こうで秀樹が起き上がる。
「あ~あ、服が穴だらけだぜ」
言いながら魔法銃の弾を詰め替える。
不死身でもあり戦い慣れてきた秀樹にとってあの程度の攻撃はもはや効かない、もっとも低級魔法の防御で中級魔法を半減しておまけに町で買った魔法の鎧で防いだので不死身を使うまでもなく本当に服が破ける程度で済んだのだ。
「ギゲッ、グヒハァアァ~~ 」
化けガエルが口から水を拭きだして魔法の炎を消していく、
「何故だ! 何故生きてる? お前本当に人間か? 」
顔に焦りを浮かべた化けガエルが秀樹を睨んだ。
「人間だぜ、だから言っただろ鬼のギビさんに勝ったって、お前じゃ相手にならないぜ、降参しろよ、でないと怪我だけじゃ済まないぞ」
秀樹は完全に相手を見下していた。
「人間か、だったら直ぐに死ぬはずだ」
化けガエルが大きな口を開けた。
直後、ピンクの塊が飛び出す。カエルの舌だ。
「ぐはぁ~~ 」
カエルの舌に殴られて秀樹が吹っ飛んで転がる。
脇で見ていた菜穂が恒夫の肩をギュッと握った。
「キモ! キモすぎるわよ」
「口からビロ~ンって出たぞ、ゲロゲロパンチにゃ」
喜ぶラグの隣で恒夫が顔を顰める。
「パンチじゃない、舌だろが! でもマジでキモいぜ」
騒ぐ恒夫たちにスギナが振り返る。
「バカにしておるが、かなりの威力じゃぞ、カエルの舌は筋肉の塊じゃからな」
「あれくらい秀樹は大丈夫だけど…… 」
栄二が不安気に見つめる先で秀樹は転がったままぴくりとも動かない。
「ギケケケケッ、死んだか」
化けガエルが近付く、秀樹の腕が動いた。
「ウォータースピア! 」
秀樹が魔法の杖を振ると中級魔法の水の槍が化けガエルの腹に飛んでいく、
「なっ、くそっ」
貫いたかに見えたが化けガエルは後ろに跳んで無傷だ。
「ケケケケケッ、危ない、危ない、水の鎧を着けて正解だ」
化けガエルの体をぬめぬめと粘膜のようなものが覆っていた。
「くそっ、魔法かよ」
悔しげに吐き捨てる秀樹を見て脇からスギナが大声を出す。
「魔法ではないぞ、妖術じゃ、カエルは水棲妖怪じゃ、雑魚と言ってもそれなりの妖力は持っておる。得に水系の魔法は効かんぞ、火か電気を使うんじゃ」
聞こえたのか秀樹がサンキューというように手を上げた。
手を出すのはルール違反だが仲間に対するアドバイスは許可されている。
そもそもアドバイスができるように試合場の脇で観戦することを許可されているのだ。
「水がダメならこれでどうだ」
秀樹が魔法銃をぶっ放す。
「ミストガード」
化けガエルが防御魔法を唱えた。
魔法銃の炎魔法であるヒ弾が水の防御魔法に当たって双方消えていく、
「あいつの魔法をどうにかしないとダメだな」
走って逃げながら秀樹が魔法銃の弾を交換した。
「ケケケッ、プラズマボール! 」
逃げる秀樹に化けガエルが電気の塊を投げ付ける。
「ハラペーニョファイヤー 」
秀樹は魔法銃を腰に仕舞うと魔法の杖を振って応戦した。
化けガエルが炎魔法を跳んで避ける。
秀樹にぶち当たった電気魔法は魔法の鎧で防がれた。
脇で見ていた恒夫が他人事のように口を開く、
「やっぱ同じレベルの魔法使い同士じゃ決着つかんな」
「うむ、秀樹は魔法銃を持っておるが化けガエルも妖術が使えるから力は拮抗しとるしのぅ、じゃが、あの化けガエルが毒を使えんのは幸いじゃ」
話を聞いていたラグがスギナの頭をポンポン叩く、
「捨て身しかないぞ、力が全く同じ時は先に命を捨てた方が勝つぞ」
「命を捨てるか…… 」
険しい顔で呟く恒夫の前でスギナが頭を叩くラグの手を払い除ける。
「流石戦い慣れた獣人じゃな、ラグの言った通りじゃ、同じような相手や格下の相手と戦っておるとできるだけダメージを受けんように自然と身を庇って戦うものじゃ、力が拮抗しておるのにそれでは勝負はつかん、勝つには拮抗を崩せばよい」
「にゃはははっ、あたいはチャトラン族の戦士だからにゃ、命よりも名誉を取れって叩き込まれたぞ、だから捨て身なんてしょっちゅうだぞ」
スギナに褒められて嬉しいのかラグが恒夫の背をバンバン叩きながら言った。
「捨て身か…… 」
呟く恒夫を栄二が見つめる。
「大丈夫、秀樹は捨て身なんかしないよ、もっとも不死身だから化けガエルくらいじゃ倒せないだろうけどね、秀樹は勝つよ、作戦があるって言っただろ」
「作戦ねぇ~~ 」
自信ありげな栄二を見て恒夫が疑うように顔を顰めた。
「ふふっ、その作戦を始めるみたいよ」
菜穂に言われて恒夫が試合場に向き直ると秀樹がポケットから何かを出すのが見えた。
「空気玉か? 何に使うんだ? 」
「見てればわかるよ」
不思議そうな顔の恒夫を見て栄二がニヤッと意地悪顔で笑った。
空気玉の首輪を付けようとした手を秀樹が止める。
「おい化けガエル、お前には恨みも何もない、イベントの途中で理不尽に襲われたわけでもない、トーナメントで当たって仕方なく戦ってるだけだ。だから怪我させたくない、今すぐ降参しろ、俺は細かいのが苦手なんだ、だから魔法の制御も下手だ。勝つために最大の力を使うから殺しちゃうかも知れん、だからギブアップしてくれ」
マジ顔で頼むように言った秀樹の向かいで化けガエルが声を出して大笑いだ。
「ゲケケケケッ、降参だと、オレ様が人間に負けるわけないだろが! 」
バッと跳ねると魔法の杖を振りながら大きく口を開く、
「プラズマスラッシュ! 」
「プラズマガード」
化けガエルの電気の刃を雷の壁で秀樹が防いだ。
中級魔法が打ち消し合った瞬間、カエルの舌が秀樹にぶち当たる。
「ぐぅ! 」
秀樹が仰け反るように吹っ飛んでいく、
「ゲケケッ、死ね! 」
化けガエルが魔法の杖を振った。
「プラズマボール! 」
中級魔法を使った直後なので低級魔法しか使えない、バチバチと雷光をあげる電気の塊が倒れた秀樹に続けて当たる。
「ぐぐぅ…… 」
苦しそうに呻くと秀樹が動かなくなった。
「ゲヒヒッ、止めだ」
「プラズマスラッシュ! 」
化けガエルが魔法の杖を振る。
少し遅れて秀樹が魔法を唱えた。
「炎の檻、タピチェケージ」
電気の刃が秀樹の背に突き刺さる。
少し遅れて炎の柱が二人を囲んだ。
「ギゲゲッ、火が……道連れにするつもりか」
炎に囲まれた化けガエルが忌々しげに秀樹に近付く、
「術者を殺せば魔法は消える。その首もぎ取って息の根を止めてやる」
倒れた秀樹に化けガエルが触れようとした瞬間、ボンッと音を立てて化けガエルが炎に包まれた。
「首なんかもぎ取られて堪るかよ」
魔法銃を握り締めた秀樹が起き上がる。
「ばっバカな……オレ様のプラズマスラッシュが確かに突き刺さったはずだ。何で動ける? 人間なら死んでいるはずだ」
炎に包まれながら化けガエルが叫ぶように大声で言った。
「悪いな、俺は不死身なんだ」
言いながら秀樹が魔法銃の弾を詰め替える。
「くっ、くそぅ……こんな火など…… 」
化けガエルが口から水を拭きだして魔法の炎を消していく、そこへ秀樹が魔法銃を向けた。
ボンッ! 軽い音を立てて弾が飛んでいく、
「ゲギャギャァ~~ 」
化けガエルの体にバチバチと雷光をあげた電気が纏わり付く、電気魔法の弾、デン弾だ。
「グゥ、グクゥ……こんなもの………… 」
また消そうとする化けガエルに秀樹が続けて魔法銃をぶち込んだ。
「ギゲゲェーッ、グガァアァ~~ 」
口から水を出して消す暇も無く化けガエルがのたうち回る。
「ヒィ、ヒィイィーッ、イイィ……息が……苦しい……息ができん」
化けガエルが大きく口を開けて必死に空気を吸い込もうとする。
「熱い、熱い、体が乾く……、息が出来ん、空気が……体が燃える……何故だ……何でお前は平気なんだ? 人間のくせに……人間の…… 」
炎の中で体を掻き毟りながら化けガエルが崩れていった。
じっと見ていた秀樹が空気玉の首輪を外した。
「炎の檻で酸素が無くなってるからな、でも不思議だな、魔法の炎は酸素が無くても消えないんだぜ、燃えて酸素を無くすくせに酸素が無くなっても消えないんだ。不思議だろ何でだと思う? あれっ? もう死んじゃったのか」
倒れた化けガエルは体の水分が抜けたのか3分の1ほどの大きさになっている。
「だから言ったんだ。降参しろって……恒夫が見てるんだ。お前なんかに負けるわけにはいかないんだよ、俺の強さを認めさせてやるんだからな、菜穂の事も認めさせてラグさんやスギナちゃんと一緒にチームに戻って貰うんだからな、だからこんな所でみっともない姿見せるわけにはいかないんだ」
寂しげに呟く秀樹に審判が駆け寄る。
「14番の化けガエル、死亡確認、よって江藤秀樹の勝ちとする」
ペコッと審判に頭を下げて秀樹が試合場から降りてきた。
「秀樹くんやったね」
「不死身も殆ど使わなかったし今回は完勝だよ」
喜ぶ菜穗と栄二の後ろで恒夫がじとーっとした目を向ける。
「酸素不足で焼死かよ、嫌な戦法だな」
「仕方ないだろ、やらなきゃやられるんだ。必死にもなるぜ」
厭そうな顔で言い返す秀樹に恒夫が声を大きくする。
「俺が言ってんのは敵の事じゃ無い、身を切るにも程がある。あんなギリギリの戦いじゃいつかしっぺ返しを喰らうぜ」
「勝ったのじゃから余り言いたくないが恒夫の言うことも一理あるぞ、捨て身の戦法にしても化けガエル相手なら他にも戦い様はあったはずじゃぞ」
恒夫はともかくスギナに叱られて秀樹が気まずそうに栄二を見る。
「そんな事言ったってなぁ…… 」
「うん、今の僕らにできる最善だと思うよ」
俯いてこたえた栄二がバッと顔を上げる。
「だから恒夫やスギナちゃんみたいにもっと旨く指示できる人が必要なんだよ、だから戻ってきてよ恒夫、頼むよスギナちゃん」
「だから厭だって言ってんだろ、それにな、よく考えたらさっきの戦い方凄かったぜ、格好良かった。うん、お前たちだけで立派にやっていけるぜ」
うんうん頷きながら恒夫が歩き出す。
「なんて人なの、最低よ、戻るのが厭だから適当に褒めてるんでしょ」
菜穗の罵声に振り返りもしないで恒夫が手を振る。
「言い争ってる場合じゃないぜ、次は俺たちの番だろ」
「わかってるわよ、どうせ恒夫くんが棄権するんだから少しくらい遅れてもいいでしょ」
ぷんぷん怒りながら菜穗が後を追っていった。




