第七十八話
翌日、町の外れでサイコロを回す。
「あたいがリーダーだからにゃ」
二人の時は意識していなかったのがスギナを入れて三人になるとチームという事を意識したのかすっかりリーダー気分のラグがサイコロを回した。
「6と5の11だぞ」
「危ねぇ~~、もう少しでゾロ目だぜ」
思わす声に出した恒夫をスギナが見上げる。
「ゾロ目が何でヤバいのじゃ? 」
「えっ! それはあの…… 」
恒夫が口籠もる。
ロロフィがじとーっと睨んでいたのだ。
ゾロ目が出るとラッキーかバッドイベントもしくは戦闘イベントのどれかになる事は秘密だ。
ロロフィが口を滑らせて恒夫に言って恒夫が秀樹に話した。
その時に恒夫が怒られたのだ。
「なんじゃ? ロロフィが怖い顔をしておる所を見るとゲームシステム関係じゃな、それで言えんのじゃな」
恒夫が無言で頷くのを見てスギナがロロフィに近付いていく、
「なんじゃ、そういう事じゃったのか」
ロロフィに耳打ちされてスギナが納得した様子で頷いた。
恒夫がダメとわかってロロフィに直接聞いたのだ。
「教えて貰ったのか? どうやって? 」
不思議そうに訊く恒夫を見上げてスギナがニコッと微笑んだ。
「口を滑らせた事を他の天使に全部話すと言っただけじゃ」
「脅しかよ…… 」
恒夫が思わず呟いた。
満面笑顔のスギナが怖い。
千年以上生きているスギナは土着神とも言うべき存在である。
天使であるロロフィやヘカロを呼び捨てにしている事からもそれなりの地位を持っているのがわかる。
少し離れた所で秀樹がサイコロを回していた。
「5と5だ…… 」
秀樹が絶句する。
サバイバルの前もゾロ目を出して対決イベントで他の参加者と戦ったばかりだ。
またあの様な戦いをするかも知れないと考えると言葉も出ない。
「秀樹どうしたの? 」
「いや、別に…… 」
心配そうに訊く栄二に秀樹が言葉を濁す。
爽やかに微笑みながらヘカロが口を開く、
「大丈夫だよ、今の秀樹くんたちならどんな困難にも立ち向かっていけると私は信じている」
「困難? 」
不思議そうな顔をして菜穗が首を傾げる。
恒夫の傍にいたロロフィがバッと天使の羽を広げた。
「あっ! お呼ばれだぁ~~、えへへっ、呼ばれちゃいましたので行ってきますね、後はヘカロに任せるからね、じゃぁねぇ~~ 」
「呼ばれたって……ちょっ、ロロフィちゃん………… 」
嬉しそうに飛んで消えたロロフィを見て恒夫が秀樹たちに振り向いた。
目が合うと秀樹が両手を広げて5と5だと教えてきた。
「またゾロ目かよ……まてよ、ロロフィちゃんが呼ばれたって事はラッキーかバッドイベントって事だな」
恒夫がジェスチャーでロロフィの事を伝えた。
「ロロフィちゃんが……そうか、対決イベントじゃなくて安心したぜ」
ほっと安堵する秀樹の背をヘカロが叩く、
「私は恒夫くんのチームのイベントを見に行ってくるので秀樹くんたちはロロフィに従ってくれ、空間魔法を抜けると直ぐにロロフィに会えるから心配無い」
ヘカロが両手を広げると地面が白く光り出す。
「ここを通って自分たちで行けばいいんですね」
「そうだ。後は向こうのロロフィに従えばいい、健闘を祈っているよ」
爽やかに微笑むとヘカロは恒夫の元へと歩いて行った。
「ちょっと、何でヘカロさんが…… 」
不安顔の菜穗の腕を秀樹が掴んだ。
「いいから、心配無いぜ、じゃあ行くぜ」
「ロロフィさんに任せるって……もしかしてラッキーかバッドって事? 」
頭の良い栄二はピンときた様子だ。
「そういう事みたいだな、ラッキーと祈って行こうぜ」
秀樹たちが白く輝く空間魔法の通路を通っていった。
恒夫がマジ顔をしてスギナを見つめる。
「イベントが始まる前に言っておくよ、はっきり言って俺は戦う能力は貰っていない、秀樹や栄二の不死身でもどうにもならない相手がいた場合にどうにか出来るかもしれないと思って治癒能力を貰った。イカサマサイコロも資金に困らないようにと何かの選択肢があれば使えると思って貰ったんだ。無敵札も持っているがこれはいざとなった時のためだ。だから普段使える戦力にはならない、つまり俺個人では何の役にも立たないんだ。チームを組む事を前提に貰った能力だからな」
話を聞いてスギナもマジ顔に変わる。
「ふむ、頭で勝負というヤツじゃな、お主とおれば資金には困らんと言うことじゃな、儂も汚い安宿には弱っておったところじゃ、旨い物も食えそうじゃしな、全部話してくれたお主は信用出来そうじゃし喜んで協力しよう」
スギナも自分の能力を教えてくれた。
植物を操る能力は大ワニをグルグル巻きにしていたことや船を二十分掛からずに作ったことから既に知っている。
霊木の精霊だけあって植物はもとより昆虫にも詳しく薬や毒などの知識も豊富に持っている。
他に治癒能力があり自分だけで無く他人も治せるということである。
恒夫が神様に貰った能力と同じようなものだが霊力をふんだんに持っているスギナは力を使ってもバテる事がない、恒夫が数人治癒したら疲れて能力が落ちる所をスギナは何十人でも平気だという事である。
魔法とは違うので結界内でも使える治癒能力は有難い。
「他にも色々できるが一度に話しても把握出来んじゃろう、後のお楽しみじゃ」
フフンと得意気に鼻を鳴らして付け加えるスギナはドヤ顔をする幼女のようで抱き締めたくなる可愛さだ。
順番待ちをしていたのかラグがわくわく顔で口を開く、
「あたいはチャトラン族の戦士だぞ、パンチにキックに他も色々必殺技があるんだぞ、そんで神様に怪力貰ったぞ、身軽さに怪力が合わさって無敵だぞ、そんで魔法のペンダントで低級魔法も使えるぞ、何たってリーダーだからにゃ」
相変わらず説明は無茶苦茶だ。
端折って話すので身軽で怪力があって低級魔法が使える事しか分からない、耳と鼻が良く、気配だけでなく嗅覚や聴覚を使って戦える事や爪を伸ばして気を込めて岩をも切り裂く技を持っている事も伝わっていない。
偉そうに胸を張るラグの頭を恒夫が撫でる。
「流石リーダーだ。スギナちゃんも凄いよ、二人が仲間になってくれて本当に良かった。ありがとう」
改めて下げた恒夫の薄い頭をラグがモシャモシャ触る。
「そんな事すんな、もう仲間だぞ」
「ラグの言う通りじゃ、頭を上げろ、儂らはチームじゃぞ、変な気遣いは無用じゃ」
顔を上げた恒夫の目に優しく微笑む二人が映る。
照れるように頬を赤く染めた恒夫が口を開く、
「女の子に戦わせるってのは男としてどうかと思うが二人とも俺よりずっと凄いしな、下手に戦って足手纏いになるのは嫌だから俺は支援に回るよ、代わりと言っちゃ何だが金に不自由はさせないからさ、宿も食事もラグやスギナちゃんの好きなところに決めていいぜ」
了解したというようにスギナが頷いた。
「戦いは任せておけ、元々一人でクリアしようと思っとったからのぅ、旨いものをたらふく食えるならそれだけで組んだ甲斐がある」
ラグが腕に抱き付く、
「肉食い放題とふかふかのベッドに熱いお湯の出るシャワーが使える宿に泊まれるなら文句ないぞ、ツネがいなかったら文無しで野宿だったからな」
「ありがとう」
恒夫が心から嬉しそうに笑った。
獣人のラグにAクラスの精霊スギナ、二人がいればこの先もどうにかやって行けそうだと恒夫は一安心だ。
様子を伺っていたヘカロが天使の羽を広げた。
「話しは済んだかな? 」
「はい、待たせて済みません」
「ふふっ、おどけのない恒夫くんもたまにはいいな」
マジ顔でペコッと頭を下げた恒夫を見てヘカロが愉しそうだ。
「マジにもなりますよ、俺だけならともかくラグやスギナちゃんの世界が掛かってるんだから、正直人間の世界なんてどうでもいいって思ってます。滅亡させられるのも仕方ないって考えてます。だからと言ってこんなゲームで決められるのは御免ですけどね」
いつものとぼけ顔に戻った恒夫を見てヘカロが声を出して笑う、
「ふふっ、あははははっ、やはり君は面白い、では次のイベントに行こうか」
ヘカロの天使の翼から白い光が伸びて恒夫とラグとスギナを包み込んでいった。




