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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
新章 新たなるゲーム
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第五十五話 

 イベントが始まった。

 今回は参加者だけで行うイベントなので担当天使たちも何処にも行かずに会場に作られた観覧席で見ている。


 トーナメント表を作るために参加者がクジを引いていく、


「3番だ。取り敢えず初っぱなからAクラスと戦うのは避けれたぜ」


 秀樹が栄二と菜穗の元へと帰ってきた。

 Aクラスのいる鬼チームは1番なので初戦では当たらない、ほっとする秀樹に菜穗が突っ掛かる。


「でも次で戦うかも知れないじゃない」

「そん時はそん時だろ、いずれ戦うんだぜ、あいつらがどんな戦い方をするのか見れるだけでも初めじゃなくて良かったって事だ」


 険しい顔の菜穂を宥めるように話す秀樹の横で栄二が続ける。


「そうだよ、Bクラスは能力一つにアイテム一つだから上級魔法使いは少ない、元から魔法を持っているBクラスは別としてそれ以外は菜穗さんより強い魔法使いはBクラスにはいないって事だよ、魔法って事では僕らと同じあの人間四人組チームに気を付けてればどうにかなるよ、獣人や昆虫人間が元から魔法を持っているとは思えないからね、秀樹も中級魔法使いだし僕の持ってる影マントや空気玉を旨く使えば初戦はどうにかなりそうだよ」


 初戦については栄二も楽観的だ。


「だな、Aクラスは一度しか戦えないってルールがあるから始めに戦ってくれると嬉しいんだが準優勝くらいは狙えるぜ」


 秀樹も栄二もAクラスのキュキュだけを気にして他は蔑ろだ。

 不死身であるという事もあり少し油断しているのかも知れない。


「何言ってんの、どうせなら優勝を狙うわよ、勝って300ポイント貰うんだからね」


 余裕の二人を見て菜穗も調子付いた様子だ。



 全員クジを引き終わり試合表が決まる。

 Aクラスのキュキュがいる鬼チームは1番だ。

 2番が狼男の獣人チームで3番が秀樹、4番がダークエルフチームで5番が四人組の人間チームで6番が昆虫人間チームだ。


 3番と4番が戦うので秀樹たちはダークエルフたちと初戦を交える事になる。


 観覧席に座って見ていたヘカロがノートほどの大きさの石版のようなものを取り出す。


「ダークエルフにハーピィとミノタウロスか、各自の能力は…… 」


 石版に三人の情報が映る。


 天使たちは参加者全ての情報を見る事ができる。

 但し参加者に教える事は許されていない、破ると厳しい罰がある。

 あくまで天使だけが参考に見る事が出来るということだ。


「エルフがCクラスで残りはBクラスか、エルフが魔法力と杖とペンダントを貰って上級魔法使い、ハーピィが怪力と魔法のペンダント、ミノタウロスが怪力と天使の翼だと……元々怪力のミノタウロスが怪力を貰えば腕力では最高クラスだぞ、それに天使の翼でスピードも増している。Aクラスだけに注目しているようだがミノタウロスも強敵だよ、どう戦う秀樹くん」


 ヘカロが厳しい目で見つめる先で秀樹たちが円陣を組む、


「相手はダークエルフとハーピィとミノタウロスだ」

「魔法の銃も持ってるし僕が行こうか? 刻印を一つ消せばいいだけだし影マントと空気玉で姿も気配も消せば僕でも勝てそうな気がするよ」


 小さく手を上げた栄二を秀樹が見つめる。


「そうだな、次の勝負もあるし俺の手の内を見せたくないしな、最悪Aクラスのキュキュと戦う事もあり得るしここは栄二に任せるか」

「うん任せてくれ、殺し合いじゃないんだ。これくらいなら僕でも戦えるよ」


 二人の間に割って入るように菜穗が身を乗り出す。


「待って、私が戦うわ、向こうの人間以外に上級魔法使いがいないんでしょ? だったら私が出て瞬殺してくるわよ、私が頼りになるところを見せてあげるわ」

「菜穗さんには大将としてどんと構えていて欲しいんだけどな…… 」


 幾ら上級魔法使いと言っても女の子を戦わせたくないと考えていた秀樹だが腹を決めた様子の菜穗を見て続ける。


「じゃあ任せるぜ」

「ちょっ秀樹」


 止めようとした栄二を菜穗が睨み付けた。


「なに? 栄二くんは私が負けるとでも思ってるの? 」

「そんな……そんなんじゃないけど……菜穗さんは女の子だし………… 」


 口籠もる栄二に菜穗が続ける。


「女は関係ないでしょ? 私も覚悟を決めてゲームに参加してるのよ、私は絶対に勝ちたいの、勝たなきゃいけないのよ、だから女だからってバカにしないで、恒夫って言うヘンタイも私が女だからって嫌ってるんでしょ? そんな事言われないように私の実力を見せてあげるわよ」

「わかったよ」


 ここまで言われては栄二は何も言えない。


「じゃあ菜穗さんに決まりだ。任せたぜ」

「任せてよ、直ぐに終わらせてくるわよ」


 栄二が不安顔で見つめる先で菜穗が秀樹に笑顔で手を振った。

 他のチームも代表者が決まった様子だ。



 広い会場を目一杯使って3勝負同時に行う、横に三つ並んだ試合場に参加者が入っていく、秀樹たちは3番なので真ん中の試合場である。


 試合場一つがサッカーコートほどの大きさがあり魔法の結界で囲まれていた。

 空を飛ぶ事もできるが結界から出るとポイント関係無しに負けとみなされる。


 代表者以外のチームメイトは各試合場の脇で待機している。

 手を出す事は違反だがアドバイスはOKである。


「相手はミノタウロスか……よかった」


 ほっと息をつく栄二を秀樹が覗き込む、


「何がいいんだよ、結構強敵だぜ、初戦だからハーピィが出てくると思ってたのによ」

「ダークエルフ以外ならいいよ、今気付いたんだけどダークエルフは僕たちと同じCクラスだから上級魔法使いになってるかも知れないよ、同じ力ならダークエルフの方が上だと思うからさ、ミノタウロスでよかったよ」


 秀樹がわかった様子で声を上げる。


「おおぅ、気付かなかった。ダークエルフもCクラスだったな、ヤバかったぜ」

「ミノタウロスはパワーはあるけど俊敏さに欠けるから動き回って魔法を使えばどうにかなると思うよ」


 栄二に頷くと秀樹が大声を上げる。


「菜穗さん、ミノタウロスの腕力に気を付けろ、迂闊に近寄らずに離れて攻撃だ」

「了解よ」


 大声で返すと菜穗が小声で呟く、


「まあ見た目でわかるけどね、力は凄そうだけどトロそうだからね」


 菜穗は手に持つ魔法の杖をポンポン叩きながら向かいに立つミノタウロスを観察するように見つめた。

 3メートルはある大男に牛の頭を付けたような姿をしたミノタウロスもどんよりとした目で菜穗を見ている。


「ヴヴヴヴ、女か……オデの相手じゃねぇ…… 」


 ミノタウロスが唸るような低い声で言うと持っていた石棒をドンッと床に叩き付けた。

 観覧席で見ていたヘカロが顔を顰める。


「不味いな、ミノタウロスが出てきたか、場外アウトにならなければいいが…… 」


 只でさえパワーのあるミノタウロスが神様に怪力を貰ったのだ。

 これで参加者の中でも最強クラスのパワーを持つ事になる。

 今回の戦いは場外に出されるとアウトになるので力で押し出される事を心配したのだ。


 秀樹が両脇の試合場に視線を向ける。


「初めは鬼か、Aクラスの毛むくじゃらは大将戦って事かよ」


 1番2番が戦う右の試合場には青肌の鬼と精悍な顔つきをした狼男が向かい合っていた。

 栄二が左の試合場を指差す。


「向こうは魔法使いの男とカマキリだよ」


 5番6番が戦う左の試合場では魔法の杖を持った上級魔法使いらしき人間の男と二本足で立つ人と虫が混じったような昆虫人間のカマキリ男が対峙していた。


「俊くん頑張ってねぇ~~ 」

「おぅ、任せろ、カマキリなんて丸焼きだぜ」


 脇で見ている彼女らしき少女が黄色い歓声を送ると魔法使いらしき男が振り向いて任せろとポーズを取る。

 高校生と大学生といった感じの恋人同士が二組の四人チームだ。


 栄二が顔を顰める。


「バカが挑発してどうするんだよ」

「妬くなよ、バカはほっときゃいい、魔法が使えるから何でもできると勘違いしてるんだぜ」


 やっかみもあってか同じ人間のチームだが秀樹も冷たく言い放つ。

 イベント担当天使が壇上に立って試合場を見回す。


「準備はできたようだね、ではこれより勝負を始める。一つ言っておくが敵わないと思ったら直ぐに負けを宣言したほうがいい、死ぬ事はもちろん再起不能になってゲーム自体を続けられなくなる事もあり得る。まだまだ先は長い、イベントの二つや三つ失敗しても充分取り戻せるからね、では各自審判に従って試合を始めてくれ」


 天使が壇上から降りて1番と2番の試合場へと向かう、イベント担当天使が審判も務めるのだ。

 他の試合場にも審判役の天使がいる。

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