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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
新章 新たなるゲーム
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第五十一話 

 三日目、秀樹たちは薬や携行食糧や武器を求めて昨日目を付けて置いた店々を見て回る。


「小さい町だが武器屋は三軒あったから順番に回ろうぜ」


 秀樹が肩から提げた鞄を腹の前に持ってくる。

 ひったくりに遭わないように気を付けていた。


 鞄の中には二百万ギギルが入っている。

 恒夫に貰った金の一部だ。

 残りと自分たちの所持金は宿の床下や天井裏などに隠してある。

 盗まれないように恒夫から習った方法だ。

 枕の下やベッドのクッションなどに小額を隠すように置いておく、泥棒が入った時に何も見つからなければ部屋中手当たり次第に探すが見せ金を少し隠しておけばそれを見つけて満足して帰る。

 隠して置いた大金は見つからずに済むという寸法だ。


「そうだね、取り敢えず今日は値段調べるだけにしよう」

「掘り出し物があったら別だぜ、その為に金持ってきたからな」


 隣を歩く栄二に見せるように二百万ギギル入った鞄を秀樹がポンポン叩く、何だかんだ言って恒夫に貰った金で装備を整えられると安心していた。

 先を歩く菜穗がサッと振り返る。


「薬屋も五軒あったよね、田舎の町って感じなのに商売やっていけるのかな? 」

「それだけ危険って事だよ」


 不思議そうに首を傾げる菜穗に栄二が教える。


 魔物や盗賊のいる世界だ。

 小さな町だが当然というように武器屋があった。

 大通りへ出る。住民が全て集まっているのかと勘違いするほど人通りが多い。


「地元のスカスカ商店街と違って賑やかでいいわね」

「デパートやコンビニなんて無いからな」

「通販も無いしね、でも僕は人混みは正直苦手だよ」


 苦笑いする栄二に構わず菜穗が秀樹の手を引っ張った。


「早く店に入ろうよ、アクセサリーも見ていいよね? 」


 すっかり女の子特有のショッピングモードになっている。


「先に武器と薬を調べてからな、昼飯食った後は菜穗さんの好きな店に付き合ってやるぜ」


 秀樹は可愛い菜穗に腕を引っ張られて満更でもないといった表情だ。


「この町は人間ばかりで少し面白くないな」


 人外好きの栄二は他種族の殆どいない町に少し不満顔である。



 三人が武器屋へと入っていく、


「魔剣は二百五十万ギギルからか…… 」

「魔槍も二百万万ギギルするよ、前回のスタートの町より少し高いね」


 一通り店内を見て回った秀樹と栄二が顔を見合わせた。


 武器の値段を調べると普通の剣が五万ギギルからで弓や銃は一万ギギルから売っていた。

 中古はもっと安い、だが魔法アイテムは桁が違っていた。

 魔剣は安い物でも二百五十万する。

 魔法の弓は五万で買えるが矢が高い、魔法の種類にもよるが一つ十万ギギルはする。

 魔力の籠もった矢なので威力は凄いが使い捨てである。

 つまり一つの矢で一つの魔法が1回使えるということだ。

 以前のゲームでネピアが使っていた一度狙うと矢が追尾してくれる魔法のボウガンは売っていない。

 魔法の銃も売っている。矢と同じような使い方だ。


「魔法の銃が三十万か、弾が一発十万からか……前と一緒だな」

「そうだね、剣と違って値段共通なのかな? 」

「弓よりいいな、買うなら魔法の銃だな」

「うん、前に使ってるから練習しなくても使いこなせるよ」


 あれこれ考えながら武器屋の中を歩いていた秀樹の足が止まった。

 隣で栄二が店員を呼んだ。


「魔法のマントか……おじさん、これどんなマントなの? 」


 皮や金属で出来た重そうな鎧に混じって黒いマントが売っていた。

 如何にも魔法使いが纏うようなマントを見て菜穗が笑い出す。


「あははっ、絵本に出てくる魔女が着てるヤツだ」

「買うのかい? 」


 店の奥にいた太ったオヤジが疑うように菜穗の顔を覗いた。


「金ならあるぜ、宿に戻ればもう三百万ギギルはある」


 秀樹が鞄に入っている二百万ギギルを見せると店主の顔が笑顔に変わる。


「これはこれは……マントでしたね」


 営業スマイルをした店主が揉み手をしながら説明を始めた。

 中級魔法なら6回、低級魔法なら何度でも防ぐ事のできる対魔のマントだ。

 魔法を防げるだけあって値段も高い、五百万ギギルもする。


「中級魔法を6回防ぐのに五百万か…… 」

「低級魔法なら何度でもって良いように見えるけど今回のゲームは魔法の力貰ってる人は中級以上が多いだろうから微妙だよね」


 渋い顔の秀樹に栄二も同意するように苦笑いで頷いた。


「俺も中級だからな、前回のゲームであったら絶対買ってたんだがな、五百万ギギルか……一応候補に入れとくかな」


 悩ましげな表情で秀樹が店主に向き直る。


「他の店を見て気が向いたら買いに来るよ」

「他も同じですよ、魔法アイテムは値引きなどしませんから、買うならうちでお願いしますよ、値引きは無しですが何かおまけを付けますよ」


 笑顔の店主に見送られて店を出た。


「取り敢えず栄二の魔法の銃と弾は買う事にして他は店を見回って検討しようぜ」

「じゃあさっさと武器屋回ってお昼にしてアクセの店見に行こうよ」


 菜穗に手を引っ張られて秀樹が歩き出す。


「菜穗さんすっかり買い物気分だ……恒夫どうしてるかな………… 」


 呟くと栄二が二人の後を追って行った。

 昼食を済ませた後は菜穗の希望通りアクセサリーの店を見て回って日が暮れる。



 四日目、休み最後の日だ。


 昼まで寝ていた恒夫はルーレットとカードゲームをしにカジノへと行った。

 この町に来る事はもう無いだろうと初めからVIPルームへ行って遠慮無しに稼ぐつもりだ。


 カードはハイ&ローという予め捲った数に対して次に捲る数が大きいか小さいかを当てる単純なゲームだ。

 1~36までの数字と赤と黒を当てるルーレットよりも簡単なのでイカサマサイコロを使いやすいが店のディーラーとの勝負だけで無く他の客との一騎打ちなどもあるので恨みを買わないように気を付けなければならない。


 VIPルームのカードゲームの卓に恒夫が座る。

 他の客はいないので店のディーラーとの一騎打ちだ。


「大でお願いします」


 恒夫が金に銀の縁取りのチップを置いた。一つ百万ギギルの高額チップだ。

 卓の上に重ねてあるカードの横に捲られているカードの数字は9である。


「大で宜しいですね? 」


 恒夫が無言で頷くとディーラーがカードを捲る。


「11、大です。恒夫様の勝ちです」


 ディーラーが金に銀の縁取りのチップを一つ恒夫の置いたチップの上に重ねた。百万ギギル勝ったのだ。


「もう一勝負、流石に11じゃ無理だから次に送ってくれ」


 恒夫はチップを一つ籠に仕舞うと次のゲームを催促した。

 ディーラーがカードを1枚捲る。


「4です。どうします? 」

「小で頼む」

「小ですね? 」


 ディーラーが聞き返す。

 カードは1~14までの柄違いが4種類とディーラー総取りのジョーカーが1枚、合計57枚ある。

 トランプと似たようなものだ。

 ゲームは勝てば掛金と同じ額が貰える。

 同じ数字が出た引き分けとジョーカーは店側の総取りとなる。


 ディーラーが聞き返すのも無理はない、今場にあるカードは4だ。

 4より大きい数字の方が出やすいので普通なら大とこたえるところだ。


「ああ、小でいい、今日の俺はツイてるんだ」


 ポケットに忍ばせてあるイカサマサイコロを触りながら恒夫がニヤッと笑った。

 ディーラーがカードを捲った。


「2です。小です。恒夫様の勝ちです」


 神妙な顔をしたディーラーがチップを一つ恒夫に渡した。


「やっぱツイてる。今度は2枚賭けるぜ」


 ディーラーが置いたチップを取らずにそのままにして2枚を賭けた。


「2では勝負になりません」


 ディーラーがカードを捲る。


「6です。勝負しますか? 」

「もちろん、大で頼むよ」


 神妙な顔をしたディーラーがカードを捲る。


「10です。恒夫様の勝ちです」


 不機嫌に言うとチップを2枚渡してディーラーが去って行く、


「お客様凄いですね、次は私と勝負してくださいな」


 男のディーラーに変わって女が卓に立った。

 妖艶な美女である。

 先のディーラーより格上なのだろう、大勝負に3度負けて先の男ディーラーは引っ込められたのだ。


「勝負? いいぜ、じゃあ大勝負だ」


 恒夫は置いてあるチップ4枚全てを賭けた。

 女ディーラーの眉がピクッと動く、四百万ギギルの大勝負だ。


「ではカードを交換いたします」


 新品の箱を包んであるビニールを赤いマニキュアが付いた爪でピュッと切り裂いてカードを抜き出すとシャシャッとシャッフルを始めた。


 無駄の一切無い動きだ。

 あまりの手際の良さに恒夫が見惚れる。


 トンッと卓にカードの束を置くと女ディーラーがにこりと微笑んだ。


「お客様、お好きなところを捲ってください」

「どれでも引っこ抜いていいのか? 」

「はい、一番上でなくてもいいですよ、真ん中でも下でも好きなところからカードを抜いてください」


 恒夫が真ん中辺りからカードを抜いて卓に置く、


「7ですか、良い数字ですね、では勝負致しましょう」


 にこりと微笑む女ディーラーを見つめながら恒夫が片手を突っ込んでいるポケットの中でイカサマサイコロを振る。


「どうするか…… 」


 考える振りをして俯くとポケットから出した手を見つめた。サイコロの目は5だ。奇数を大、偶数を小と決めてイカサマサイコロを振っている。


「大だ。大で勝負するよ」

「大ですね」


 妖艶に微笑みながら女ディーラーがカードを捲る。


「3です。小です。私の勝ちです」


 微笑みながら女ディーラーがチップを4枚取っていく、


「まだ続けますか? 」

「もちろんだ」


 恒夫がチップを1枚卓に置いた。


「カードはどうします? 」

「3のままでいい、小で勝負する」

「小ですね? 」


 確認を取る女ディーラーに恒夫が頷く、


「8の大です。私の勝ちです」


 女ディーラーがチップを持っていく、


「そういう事か…… 」


 恒夫がニヤッと笑った。

 イカサマサイコロは3回に一度は外れる事がある。

 先程チップを4枚賭けた時はイカサマサイコロの外れだと思った。

 だがイカサマサイコロは2度続けて外れを出す事は無い、あるとすればそれこそイカサマだ。


 恒夫が籠からチップを5枚出した。

 全財産の五百万ギギルだ。


「最後の勝負だ。大で頼む」


 チップ5枚を卓に置いた。


「大ですね」


 微笑みを浮かべる女ディーラーがカードに手を伸ばした。

 その時、恒夫が口を開く、


「待ってくれ、カードは俺が捲る」


 女ディーラの眉がピクッと動いた。

 近くにいた黒服がサッとやって来る。


「お客様、当店では勝負中にカードに手を触れられるのはディーラーだけです」


 ごつい男にビビリもしないで恒夫がニヤッと笑ったまま話を続ける。


「わかった。それじゃあ、右手じゃ無くて左手でカードを捲ってくれ、それと肘の上まで袖を捲ってくれ、あんたの綺麗な手がよく見えるようにな、俺が気付いてないとでも思ってるのかい? 堂々と勝負しようぜ」


 女ディーラーがフッと笑った。

 妖艶な笑みでは無く本心から楽しそうな笑みだ。


「わかったわ、真剣勝負ね」

「そういう事だ。大で頼むぜ」


 女ディーラーが利き腕とは反対側の左手でカードを捲った。


「13です。恒夫様の勝ちですね」


 女ディーラーがチップを5枚差し出した。


「まだ続ける? 私はあと1回負けたら終わりだけど」

「これで帰るわ、あんたに負けた5枚は取り返したからな」

「ふふっ、私の負けだわ、久し振りに楽しかったわ」


 負けたというのに女ディーラーが楽しそうに笑うのを見て恒夫も自然と笑みになる。


「あんたみたいな美人とゲームができて俺も楽しかったよ」


 じゃあと手を振ると恒夫はカジノを出て行った。


「やっぱインチキか……でもカードすり替えてるのわからなかったな」


 緊張で肩が凝ったのか大きく伸びをする。


「カジノじゃなくてエッチな店で会いたかったな、ビシバシしばいて貰ったら気持ちよさそうな良い女だぜ……しめて一千万ギギルだ。魔法の銃に鎧か何か買っても釣りがくるな」


 夕日が赤く染める通りを武器屋目指して歩いて行った。



 武器屋で使い慣れた魔法の銃と弾を17発、合わせて二百万ギギルで買うとついでに魔法の鎧を二百万ギギルで買った。

 店主曰く剣や槍はもちろん鉄砲の弾や獣人のパンチも防ぐとの事だが今一信用していない、獣人と言ってもネピアのように可愛い少女からクマのように大きな恐ろしいものまで様々いるのだ。

 全ての獣人たちの攻撃を防げるような代物が二百万ギギルなどで売っているわけなど無いのは少し考えればわかる。


 店主のセールストークが旨くて煽てに乗って買ったというのが本当だ。


「オークレベルの攻撃くらいは防げるだろ、今回は不死身を貰ってないからな、上級魔法で焼かれたりした時に少しでも時間稼ぎができれば治癒能力でどうにか出来そうだからな」


 店を出て歩きながら思案する。


「種類が豊富にあるデカい町で買ったほうがいいからな、ここで無駄遣いするのは止めだ」


 魔法の銃と弾に鎧で四百万ギギル使ったので残金は六百万ギギルだ。

 イカサマサイコロで幾らでも稼げるとはいえ無駄金を使うのが嫌いな恒夫は必要最低限の物しか買わなかった。


「それじゃあ、お姉さんの居る店に行ってパァ~ッと遊ぶか」


 にやけ面で歩き出した恒夫の耳に騒ぎが聞こえてきた。


「なんだ? 喧嘩でもしてるのか? 」


 金の入った鞄を抱きかかえるように押さえると騒ぎの聞こえてくる方へと向かった。


「てめぇがカジノなんかで使うから無くなったんだろうが」

「んだとぉ~、てめぇだって止めなかっただろうが、勝ってるときに止めようとした俺を無視してお前が負けたんだろが」


 大通りで獣人二人組が取っ組み合いの喧嘩をしていた。

 イベントで一緒になったゲーム参加者の獣人二人組だ。


 野次馬の後ろで話を聞くとどうやらカジノで負けて初めに貰った三百万ギギルを全て使い果たしてしまったらしい。


「まったく…… 」


 野次馬を押し退けて恒夫が前に出る。


「その辺で止めないとゲームから排除されるぞ」

「なん? 人間が偉そうに言うな!! 」

「黙ってろ人間! お前には関係ない」


 取っ組み合いをしながら二人が振り向いた。

 恒夫が抱えていた鞄を二人の前に降ろす。


「関係あるだろ、同じゲームをしてるんだぜ、二百万ギギルずつやるから喧嘩止めろよ」

「二百万!? 」

「二百万ギギルくれるのか? 」


 鞄の中の金を見て組み合っていた二人がバッと離れた。


「カジノで勝ってな、全部で六百万ギギルある。俺の分二百万ギギル引いて残りの四百万を二人で二百万ずつわければいい」


 二人の獣人の顔がパッと明るくなる。


「お前は他の人間とは違うと思ってたんだ」

「そうそう、俺もお前は見所あるって思ってたんだ」


 目を吊り上げて猛っていた二人の顔が一瞬で笑顔に変わった。


「積もる話も何だ。飯でも食いながら話そうぜ、ポケットに端数の金が二十万ギギルくらい入ってるからそれで飯でも食おうぜ」

「二十万ギギルあれば酒と御馳走が食えるぜ」


 笑顔の二人が恒夫の背を押して飲食街へと歩き出す。

 それを秀樹たちが見ていた。


「何やってんだ恒夫のヤツ…… 」

「あの二人と組んだのかな? 」


 栄二の言葉に秀樹と菜穗が振り返る。


「まさか……本当ならどうにか恒夫を引き戻す方法を考えないとな」

「名案ね、あいつはともかく強そうな獣人二人が仲間になれば勝ちに近付けるわ」

「だな、どうにか恒夫の機嫌を取る方法を考えようぜ」


 秀樹と菜穗が顔を見合わせてニヤリと笑った。


「そんなんじゃ恒夫は戻ってこないよ」


 勝つ事ばかり考える二人を栄二が不安気な表情で見つめる。


 秀樹たちは恒夫に貰った八百万ギギルで魔法の銃三十万ギギルに1発十万ギギルの弾を17発合わせて二百万ギギル、不死身ではない菜穗に中級魔法を6回防ぐ事のできる対魔のマントを五百万ギギルで買った。

 マントは低級魔法なら何度でも防ぐ事のできる優れものだ。

 残りの百万ギギルは魔法の弾を買うための資金として残して置いた。

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