第三十九話
休み時間の度にゲームの話しで盛り上がりその日の授業が終わる。
鞄を持った栄二が笑顔で秀樹の元へとやってきた。
「秀樹、今日バイトないんだろ、買い物に付き合ってよ」
「買い物? いいけど何買うんだ? 」
嬉しそうな顔をした栄二が秀樹の耳元に口を近付ける。
「ネピアにネックレスでも買っていこうと思ってさ、恒夫が向こうの世界にパンツを忘れてきただろ、それならネックレスくらい持って行けるかも知れないからさ、ヘカロさんに頼めばどうにかなるかも知れないからさ、僕一人じゃネックレスなんて恥ずかしくて買いに行けないし……通販でなく自分で見て選びたいしさ、僕たちに出会った記念にネピアにあげたいんだ」
照れながら言う栄二を見て秀樹の顔がパッと明るくなる。
「ナイスだぜ、俺もクロエに何か買ってやろう」
楽しそうに言うと秀樹は恒夫の席に向き直る。
「恒夫、買い物付き合ってくれ」
鞄を肩に担いで帰ろうとした恒夫が立ち止まる。
「買い物? エログッズか? 」
「アホか! そんなもの買うか」
ケロッとした顔で言う恒夫を秀樹が怒鳴りつけた。
まだ教室には沢山の生徒が残っているのだ。
恥ずかしさで栄二は真っ赤になっている。
「恒夫は別にいいよ」
栄二が恥ずかしそうに秀樹の腕を引っ張る。
「ネックレスとかピアスとかは俺たちより詳しいぜ」
栄二を連れて恒夫の元へと行く、
「どうせ暇なんだろ、付き合えよ、飯くらい奢るぜ」
「金には不自由してないぞ、お前らと同じで東條にたっぷり貰ったからな」
嫌そうに顔を歪める恒夫の肩を栄二がポンッと叩いた。
「頼むよ、付き合ってよ、僕一人じゃ恥ずかしくて入れないからさ」
「エロい店か? それなら喜んで付いていくぞ」
「誰が行く!! プレゼント買いに行くから付いてきてくれって言ってんだ」
「なんだ…… 」
去ろうとする恒夫の腕を秀樹が掴む、
「付いてきてくれないなら連れて行くからな」
嫌がる恒夫を無理矢理連れて二人が教室を出て行った。
三駅離れた大きな町のショッピングモールでネックレスと招き猫を買った。
ネックレスは秀樹が洒落た猫を模ったもので栄二がハートの形だ。
その他に知り合った人にプレゼントするつもりか幾つかネックレスを買っている。
招き猫は金と銀で出来た小さなものだ。
猫科の獣人であるネピアとクロエにピッタリだと思って選んだがネックレスはともかく招き猫は趣味が悪い、それもそのはず、恒夫がこれも買えと無理矢理買わせたのだ。
全て金や銀で出来た高価なものである。
普通の高校生が買うものではないが宝くじが当たった東條に分けて貰っていたので金には不自由していない。
帰り道、先を歩いていた栄二が満面笑顔で振り返る。
「何だかんだ言って恒夫も買ったよね」
「どうせエッチな店で女王様にあげるんだろ」
秀樹も振り返ると恒夫が立ち止まってニヤリと不気味に笑った。
「買ったピアスは女王様に頼んで俺の乳首に付けて貰うんだ……そうだ! エログッズも買いに行こう、バイブ買って女王様にお仕置きで使って貰うんだ……考えただけでぞくぞくするぜ、早速買いに行こうぜ、アナルバイブ選ぶの手伝ってくれ」
「行くか!! ドヘンタイ! 」
「止めてよね、僕たちのネックレス持って行けなくなったら困るだろ」
怒鳴る秀樹の隣で栄二が弱り顔だ。
その時、三人のスマホが一斉に着信音を鳴らした。
「ヘカロさんだ! 」
「ゲームが決まったみたいだね」
「今晩だぜ、急だな」
三人が慌ててメールを開く、明日の夜0時に眠っていてくれと書いてあった。
以前のゲームと同じだ。
0時に横になって目を閉じていなければ棄権とみなされる。
「前と同じだね、会場に全員集めて詳しい説明と参加の最終確認を取るんだね」
スマホを仕舞うと栄二が二人を見て言った。
「そうだな、勝つ確率は低くても参加しようぜ」
「うん、ネピアに会えれば僕はそれでいいよ」
確認を取る秀樹に栄二が笑顔で頷いた。
「だな、人類滅亡とか面倒なのは中津たちに任せようぜ」
「うん、一層の事、僕たちは中津たちのフォローに回ってもいいんじゃない、中津たちが勝てば人類は救われるんだし、僕たちはネピアやクロエと思い出が作れればいいし」
「成る程な……それもいいな、ゲーム次第では考えに入れとこうぜ」
暫く考えて秀樹も賛同した。
黙って話を聞いていた恒夫が口を開く、
「俺も賛成だ。面倒なイベントなんて放って置いてお姉様のいる店でどんちゃん騒ぎするって事だろ? 冒険じゃなくてエロツアーに行くんだろ? 女王様の鞭、襲いかかる獣娘たちの黄金水、わくわくドキドキ下半身の大冒険だぜ、大賛成だ」
「誰がエロツアーだ!! 」
大声で怒鳴りつけると秀樹が続ける。
「ゲームは真面目に参加するぞ、ただ中津たちと一緒のイベントになったら彼奴らをフォローするって事だ。少しでも勝ちに近付くためにな、俺たちじゃなくて人類の存亡が掛かってるんだからな」
恒夫が不服そうに言い返す。
「中津より俺と女王様の関係をフォローして勝利しようぜ、醜い豚である俺と鞭でビシバシしばいてくれる女王様との関係が人類の存亡に関わってくるなんて凄い事だと思わんか? 正に世界系のサドマゾストーリーだぜ」
「黙れドヘンタイ! お前はもう話すな」
真っ赤な顔で怒る秀樹の背を栄二がトントン叩いた。
「あははははっ、本気で恒夫の相手しちゃダメだよ」
落ち着いたのか秀樹が呆れ顔を恒夫に向ける。
「まったく……今度はちゃんと服を着てこいよ」
前回のゲームを思い出して栄二も弱り顔で口を開いた。
「そうだよ、この前みたいにシャツとパンツじゃダメだからね」
「セクシーなシャツと勝負パンツでもダメか? 」
ケロッとした顔で言う恒夫を秀樹が怒鳴りつける。
「ダメに決まってるだろ! メールにも書いてあるだろ普段着、もしくは冒険に相応しい服装にしてくれって」
恒夫が口を尖らせる。
「冒険に相応しい勝負パンツだぞ、俺の魅力が100%活かせるパンツなんだぜ、セクシーなシャツと勝負パンツで魔物を誘惑して倒すんだ」
「黙れ!! お前の魅力なんてドヘンタイしかないだろが! 」
「何言ってんだ! チビで老け顔でハゲ具合がイジメ甲斐があるって女王様には人気なんだぞ、俺が従順なブタに徹するとどんな女でも女王様になるんだぜ」
「アホか! だいたい…… 」
言い争う二人の間に栄二が入る。
「もう止めようよ、恒夫はちゃんと服を着てこいよ、カジノに行くんだろ? シャツとパンツじゃ入れないよ」
怒っていた恒夫の顔が冷静に戻っていく、
「そうだ……カジノ行くから服は着ないとな、オヤジの古いスーツでも着ていこう」
「まったく…… 」
まだ怒り冷めやらぬ様子だが秀樹も言い争いを止めた。
話しを拗らせてパンツ一丁で来られたら困ると考えた。
「じゃあ続きは夢の世界でね」
「おう、気楽に行こうぜ」
弱り顔の栄二に手を振ると恒夫が帰って行った。
近所に住んでいるので秀樹と栄二は一緒の方角へ帰路についた。




