第三十四話 「退屈な日常」
ここから先が本番です。
前回のゲームでは秀樹たち三人主人公含め全て人間のチームでしたが新章からは他種族もゲームに参加してきます。
獣人はもとより妖怪や昆虫種族にロボットなど多数のサブキャラが敵味方分かれて登場します。
そして魔族たちがゲームに関わってきます。
あらすじに書いてあるように様々なイベントを行い、お馬鹿から能力バトルまで盛り沢山で進めていきますので続けて読んでもらえると嬉しいです。
新章からは細かい章別けはしません
また全話にタイトルを入れるのではなく要所要所に入れるようにします。
長文失礼しました。
読み続けてくれている方々、ブックマークに入れてくれている方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
神様のゲームから帰ってきて一ヶ月ほどが経つ、秀樹と栄二と恒夫はゲーム前と変わらない普通の高校生生活を送っていた。
何の変哲も無い登校風景を横目に城道恒夫が原チャリに乗って駅へと向かう、恒夫の通う草部高校とは反対の方角だ。
恒夫は草部高校の二年生だ。
当然今日も学校はある。
「滅ぼされてたかも知れないってのに呑気なもんだぜ」
談笑しながら歩いている制服姿の学生を余所に原チャリに跨がる恒夫は私服だ。
駅の駐輪場に原チャリを止める。
「明日は土日で休みだし遠出するかな、確か…… 」
スマホを取りだして何やら検索しながら駅の階段を上っていく、
「東北地方にも幾つかあるな、んじゃ泊りがけで行ってみるか、金はあるしな」
ネットで新幹線の予約をすると快速電車に乗り込んだ。
ところ変わって草部高校、
開きっぱなしのドアから江藤秀樹が入ってくるのを見て野方栄二が駆け寄った。
「おはよう秀樹」
「おっす、栄二」
軽く手を上げてこたえると秀樹が教室内を見回す。
「恒夫は来てないのか? 」
「また休むのかな…… 」
顔を顰める秀樹の向かいで栄二が心配そうに呟いた。
「一度マジで話をしないとな」
秀樹が安心させるように栄二の肩をポンポンと叩く、
「こんな事になるならお金なんて貰うんじゃなかったよ」
「いや、金は必要だぜ、家のローンの残りも払えたし車も買ったからな、親孝行だって褒められたぜ」
嬉しげに言う秀樹を栄二がじっと見つめる。
「僕もそうだよ、そうだけど……恒夫が不真面目になるなんて……前から真面目じゃなかったけど学校は休まずに来てたし………… 」
「それが学校休みまくってバイクに乗って遊び回ってるって話しだからな」
悲しそうに言葉を詰まらせる栄二の背を秀樹がドンッと叩いた。
「そう心配するな、今度来たらとっ捕まえても止めさせてやるぜ」
神様のゲームに優勝した三人は褒美の願いを友達のために使った。
秀樹が佐伯の足の怪我を治してもらい、栄二が中津の妹の病気を治療する。
そして恒夫は連帯保証人になって会社が倒産しそうな東條を大金持ちにして救ったのだ。
海外の宝くじで100億円が当たった東條は10億円ずつ秀樹たちに分けてくれた。
もっとも税金を引かれて実際に手にした金は5億円ほどだ。
金を分けて貰った後暫くして恒夫が時々学校を休むようになったのだ。
原チャリで走り回っているという噂を聞いて秀樹と栄二は心配していた。
教室の後ろのドアから佐伯敏明が入ってくる。
「おいっす」
佐伯が手を上げて元気に挨拶だ。
「おぅ、おはよう」
秀樹が挨拶を返すと佐伯は自分の席についてパンを食べ始める。
ジャージ姿の佐伯に秀樹と栄二が近付いていく、
「朝練か? 大変だな」
「大変なものかよ、またサッカーが出来るんだ。今までの分を取り返さないとな、夢のようだぜ、これも秀樹の御陰だ。本当にありがとう」
満面の笑みをした佐伯がペコッと頭を下げた。
「もういいって、何回礼を言うんだよ、友達だろ」
「そうだよ、一緒にゲームに参加した仲だよ、他人行儀は止めようよ」
スポーツ刈りの頭を掻いて照れる秀樹の隣で栄二も笑顔だ。
「栄二の言う通りだぜ、その代わりプロになっても友達でいてくれよ」
「もちろんだ。秀樹は命の恩人みたいなものだからな、会う度に礼を言うぜ」
菓子パンをモシャモシャ食べながら佐伯がニッと笑った。
「だから止めろって」
「あはは、何照れてるんだよ」
真っ赤になった秀樹を栄二がからかう、佐伯がパンを食べる手を止めた。
「でも楽しかったよな、野方の魔法の火で焼かれて死にそうになったけどさ」
意地悪顔の佐伯に栄二が言い返す。
「お互い様だよ、僕なんか腕を切られたからね」
「でも直ぐにトカゲの尻尾みたいに生えてきたよな」
ニヤッとからかう佐伯に栄二が戯けるようにこたえる。
「あれには僕も吃驚だよ、驚きで痛みなんか吹っ飛んだよ」
「凄かったよな不死身は……もしまたゲームに参加できたら俺も不死身を選ぶぜ」
思い付いたように言う佐伯の背を秀樹がポンポン叩く、
「おいおい、お前が不死身なら勝てなくなるだろ」
「あはははっ、でも面白かったよね……もう一度行きたいな、ネピアどうしてるかな」
楽しそうに笑った後で栄二が遠い目をして窓の外を見つめた。
「猫娘のネピアちゃん可愛かったな、クロエさんだっけ? 美人だったよな…… 」
佐伯がニタッと厭らしい笑みをする。
「それでやる事はやったのかよ? 」
バッと振り向いた栄二の頬が赤く染まっていく、
「なっなに聞いてんだよ、秘密に決まってるだろ」
「そうだな、いい仲になったなんて言えないぜ」
ニヤッと不敵な笑みを返す秀樹を見て佐伯が悔しげに口を開いた。
「くっそぉ~~、旨い事やりやがって、イカサマサイコロだっけ? 俺も勇者じゃなくて遊び人になればよかったぜ」
座っている佐伯の頭を秀樹がポンポン叩く、
「お前じゃ無理だ。直ぐにバレるぜ、イカサマしてるのバレたらその場で殴り殺されてゲームオーバーだぜ」
「そうだよね、数回ならともかく一日中バレずに使うなんて恒夫じゃなきゃ無理だよ、それに5回に一度どころか3回に一度外れるってヘカロさんが言ってたよ、恒夫は勘がいいから旨く掛金を調整して最終的に大勝ちしてたけど僕にはとても無理だよ」
感心するように話す栄二を見て佐伯が溜息をついた。
「やっぱ無理かなぁ~、俺も勝負事は強い方なんだけど卑怯というか汚いというか、策士的な事は城道に勝てる気はしないもんな」
佐伯がキョロキョロと教室内を見回す。
「城道は? 今日も来てないのか? 」
秀樹と栄二の顔が曇る。
「うん…… 」
「金持った途端にバカになりやがった」
吐き捨てる秀樹を見て佐伯が顔を顰める。
「何かあるんじゃないのか? あいつはヘンタイだけどバカじゃない、考えも無しに遊び回るヤツじゃないと思うんだがな」
いつ来たのか中津が割って入ってくる。
「俺は只のバカだと思うぜ、おっと、オタをバカにしてるんじゃないからな、恒夫をバカにしてるだけだぜ、中学の時から不良と連んでただろ」
睨む栄二に待てと腕を突き出すと中津が続ける。
「見たんだよ、今朝、恒夫が原チャリで走ってるのを」
秀樹がガバッと身を乗り出す。
「何処で? 何処へ行った? 」
「何処へ行ったなんてわかるかよ、でも駅の方へ向かってたぜ、私服だったぞ、呼んだんだが無視しやがってよ」
直ぐ近くで顔を覗き込むような秀樹に中津がぶっきらぼうにこたえた。
「駅? 何処へ行ったんだろう…… 」
心配そうに呟く栄二に中津が体ごと向き直る。
「直ぐ横を走って行ったから俺が呼んだの絶対聞こえてるはずだぜ、それを無視して行ったんだ。やましい事してるんじゃないのか? 」
妹を救ってもらった栄二には感謝しているらしくバカにする事も無くなり口調も優しい。
話を聞いていたのか東條もやって来た。
「あのバカ、今日も休む気なの? 」
「東條さんおはよう」
笑顔で挨拶する中津に軽く手を上げてこたえると東條が続ける。
「出席日数足りてるの? 何とかしなさいよ江藤、あんた城道の保護者でしょ」
「誰が保護者だ!! 」
迷惑顔の秀樹を栄二が押し退ける。
「出席日数はまだ足りてるよ、でもこのままだと近い内にダメになると思う」
東條の顔がさっと曇る。
「ダメになるって……何やってんのよあんたたち、ヘンタイでも友達なんでしょ? 何とかしなさいよね、江藤は保護者なんだから…… 」
「わかってるよ、今も栄二と話してたところだ。学校へ来たら何してるのか聞いて遊び回ってるのなら首根っこ掴んででも止めさせてやる。でも居ないんじゃしょうがないだろ……それと俺は恒夫の保護者じゃないからな、あのゲームの中だけだからな、こっちの私生活まで面倒見れるかよ」
迷惑そうに顔を顰める秀樹の隣で栄二が付け足す。
「家に行っても居ないんだよ、電話も出ないし……金曜や土曜日なんて帰ってこないって恒夫の母さんも言ってたし……何をしてるのか僕たちも知りたいんだよ」
「お金を渡したのがいけなかったのかな」
東條が済まなさそうにボソッと呟いた。
秀樹が悩むように顔を歪める。
「そこなんだよな、恒夫はヘンタイでバカだけど考え無しに遊び回るヤツじゃないと思ってたんだけどな、向こうの世界でカジノで儲けてもちゃんと計算して使ってたぜ」
中津が面白半分と言った様子で割り込む、
「現実と違うってわかってたからじゃないのか? 恒夫はバカだけど変に鋭い所があるっていうか狡賢いっていうか、斜めに構えた所があるだろ、イカサマや魔法で何とかなる世界なら金に固執する必要も無いだろ、でもこっちじゃ金が無いと何も出来ないからな、大金持って変な店に入り浸ってるんじゃないのか? 」
「変な店か……有り得るから怖いぜ」
顔を顰める秀樹の隣で栄二が苦笑いしながら口を開く、
「カジノで稼いで悪徳商人や悪代官のようにバラ撒いて遊ぶって言ってたからね、恒夫なら歳誤魔化して変な店にも入れるだろうし…… 」
「スーツ着てたら小さいおっさんで通るからな」
「うん、一緒に映画見に行ったら恒夫だけ学生証確かめられたよ」
秀樹と栄二が不安気に顔を見合わせた。
今まで黙って話を聞いていた佐伯が立ち上がる。
「でもマジで心配だな、恒夫はそこそこ頭いいって聞いてるぜ、勉強はクラス平均は取れるんだろ? なら留年しないように出席日数だけはどうにかしないとな、俺にできる事があれば何でも言ってくれ、お前たちになら何でも協力するぜ」
言い終わると食べ終わったパンの袋をゴミ箱に放り投げる。
佐伯の席は運動場が見える窓際でゴミ箱は反対側の廊下側の後ろのドアの横にある。
丁度教室の端から端だ。
丸めたコンビニの袋がすっとゴミ箱に吸い込まれていった。
流石運動神経抜群だ。
「俺も協力するよ、今でも恒夫は嫌いだけど、お前たちには借りがあるからな」
耳が隠れるくらいの長い髪を手櫛で整えながら中津が言った。
お前たちと言いながら栄二を見つめている。
「ありがとう、中津と佐伯が力を貸してくれれば安心だよ」
「済まんな、ヘンタイだが恒夫は大事な友達だからな、何かあれば力を借りるぜ」
安堵する栄二の隣で秀樹がペコッと頭を下げた。
私を忘れるなと東條が前に出る。
「城道が変なのはわかりきってるでしょ、私も出来る事があったら協力するから何とかしなさいよね」
「東條さんも力を貸してくれるの? ありがとうね、でも一寸見直したな、恒夫の事、あんなに嫌ってたのに心配するんだね」
嬉しそうに微笑みながら言う栄二にバッと東條が向き直る。
「なっ、なに言ってんのよ、ヘンタイでも一応恩人なんだから心配するのは当たり前でしょ、とにかく何とかしなさいよね、あんなヤツでも居なくなると寂しくなるからね」
真っ赤な顔で言うと東條は自分の席に戻っていった。
ニヤニヤしながら秀樹が口を開く、
「まぁ、何にせよ、恒夫を捕まえないとどうしようもないぜ」
「そうだな、変な連中と連んでなきゃいいんだがな」
秀樹の肩をポンッと叩くと中津は自分の席に歩いて行った。
「相変わらず嫌な事言いやがるぜ」
「でもみんな恒夫の事心配してくれるんだね、何か嬉しいよ」
秀樹と栄二も席に着いた。
神様のゲームが終わって中津たちは少し変わった。
中心になってオタクをからかっていた中津がぴたっとバカにしなくなった。
それどころか運動神経抜群でクラスでも力のある佐伯と一緒になってオタをバカにする奴らに睨みを利かせてくれて秀樹たちオタグループは安心して過ごせるようになった。
佐伯はバリバリとサッカーをしている。
足を怪我する以前は他の男子をバカにしたような所があった。
足を怪我した後はやさぐれて半分不良みたいになっていた。
それが今は角が取れたように真面目で優しくなり男子はもちろん女子にモテモテだ。
婦女子のくせに男オタをバカにしていた東條もおとなしくなる。
ゴキブリよりも嫌っていた恒夫に対しても柔らかくなった。
もっともドヘンタイという認識は変わっていない、ツンツンした所が無くなって更に良い女になったと男子たちの評判もいい。
中津も佐伯も東條も神様ゲームに参加して少し成長した様子だ。
逆に秀樹たちは殆ど変わっていないように見える。




