第二十一話「二回目のイベントスタート」
岩がゴロゴロしている荒れた大地で秀樹と中津が見つめ合う、
「面白い、秀樹のオタチームと俺たちイケメンチームの勝負って事だな」
ニヤッと笑う中津に秀樹がぶっきらぼうに言い返す。
「自分でイケメンなんて言うなよなハズいぞ、勝負なんて始めからだろ」
「あなたたちはリザードマンにしなさいね、トカゲならキモオタでもモテるかもよ」
東條がからかうと中津も大笑いしながらバカにする。
「トカゲにも嫌われたらもう終りだな、あとはゴキブリくらいしか残ってないぞ」
秀樹がムッとして口を開く、
「勝手に決めるなよな、何で俺たちがリザードマンの味方しなきゃならないんだ」
「俺はダークエルフの姉様にビシバシしてもらいたい……リザードマンにつけばエルフのお姉様と戦って俺にビシバシしてくれるかも……リザードマンにするか? 」
隣にいた恒夫が嬉しそうに秀樹を見つめる。
「しないからな、俺たちをヘンタイに巻き込むなよ恒夫」
怒鳴る秀樹を見て栄二が苦笑いだ。
「ケモノ好きだけどリザードマンはダメだな、魔法カエルとか可愛い女の子に化けられるのならいいけど…… 」
「ウロコがザラザラして結構気持ちいいかもしれんぞ、好き嫌いはダメだぞ栄二」
恒夫が言い包めようとした栄二の前にネピアがバッと出る。
「ダメだからにゅ、エイジはあたしがいるもん、トカゲなんか絶対ダメ! 」
「うんわかってるよ、ネピアがいれば何もいらないよ」
デレッとなった栄二がネピアを抱き締めた。
イチャつく栄二とネピアを横目で見ながら中津が口を開く、
「見せつけやがって……俺たちはダークエルフといい仲になってやるからな、もっと可愛い娘をボディガードにして連れてきてやるから待ってろ」
言い捨てると中津たちはオアシスへと歩いていく、荒地にいても仕方がないと少し離れて秀樹もオアシスへと向かった。
「とりあえずダークエルフの村に行くか、旨くいけば泊めてもらえるかもな」
歩きながら秀樹が誰に言うと無く言った。
後ろからゴーレムが着いてくるのを確認した後で栄二が口を開く、
「野宿になるかもね、僕はネピアがいればどこでもいいけど」
「うにゅん、あたしもエイジとならどこでもいいけど、できたらベッドの方がいいにゃ、だってここの地面固いにゅ」
足で地面を叩くようにしてネピアがニッと可愛い笑みをする。
「そうだね、できるならベッドのあるところにしよう」
栄二がすぐに意見を変えた。
もうネピアにベタ惚れで言いなりである。
先頭を歩いていた恒夫が額の汗を拭きながら振り返る。
「ダークエルフのお姉様に会いにいく前に湖を見に行こうぜ、争いの元だろ」
「そうだな、野宿する事になったら湖の近くがいいだろうし先に見ておくか」
秀樹が賛成する。
栄二とネピアも異存は無い様子だ。
暫く歩いて湖に着いた。
「へえ綺麗な湖だな、景色も最高だし、これなら水浴びできそうだぜ」
「うにゅん、魚の匂いがするにゅ、この池魚がいっぱいいるにゃ」
感動する秀樹の横でネピアが鼻をヒクヒクさせている。
ネピアにとって湖も池も同じものらしい、綺麗とか景色はどうでもよくて魚が捕れるかどうかの方が大事なのだ。
「ネピアは魚いるか分かるんだ凄いね……あれっ? 恒夫は? 」
栄二が辺りを見回した。
先頭を歩いていた恒夫がいつの間にかいなくなっていた。
「 きゃあぁあぁ~~~ 」
甲高い女の叫びが聞こえた。
一人じゃない複数の声だ。
湖にせり出した大きな岩場の近くから聞こえてくる。
秀樹たちのいる場所から50メートルほど離れたところだ。
「貴様何者だ! どこから現れた! 覗き見など許せん叩き切ってやる」
悲鳴から一転、勇ましい声がした。
勇ましいが女の声だ。
「うへへへへっ、陥没乳首のお姉様ぁ~、その刀で俺をビシバシしばいてくれぇ~~ 」
「なっ、何を言うか!! 」
「うへへへぇ、おねぇさんの陥没乳首を吸出しに……もとい救いに来ました」
「かっ……陥没……何を言う!! ヘンタイか! 」
「陥没乳首を吸出し隊、会員№003、城道恒夫いきまぁ~~す」
聞き覚えのある声がして秀樹と栄二が慌てて走り出す。
「恒夫か! 」
「なにやってんだよ」
岩の向こうで恒夫が何かやったらしい、二人の表情が真剣だ。
秀樹と栄二のあとを楽しそうな顔をしたネピアと無表情のゴーレムが続く、ネピアは騒ぎがあれば何でも楽しそうだ。
「あっ! 」
岩によじ登って向こう側を見た秀樹と栄二がその場で固まる。
三人のダークエルフが裸でいた。
水浴びをしていた様子である。
秀樹のいる岩場のすぐ下に恒夫がいてその前にいる一人のダークエルフが今にも切りかからんと刀を振り上げていた。
湖の中にいる二人のダークエルフは両手で胸を隠しているが岩のすぐ下にいるダークエルフは刀を握っているので胸どころかアソコも丸見えである。
おっぱい……褐色のおっぱいが……しかも陥没乳首だ…………。
秀樹がダークエルフの大きな胸を見て思わず唾を飲み込む、
「ダークエルフだ……恒夫何したんだよ、謝れよ」
おっぱい好きの秀樹が動けなくなっているのを知ってか栄二が大声を出した。
「なん? お前たちも覗きか、降りて来い叩き切ってやる。まずはこいつだ」
言うが早いかダークエルフが恒夫に刀を振り下ろした。
「がっ! 」
恒夫の左肩に刀が食い込む、すぐに鮮血が溢れ出す。
「恒夫! 止めてくれ勘違いだ! 」
我に戻った秀樹が岩場を降りてくる。
秀樹よりも先にネピアが飛び跳ねるようにして降りると同時に恒夫の肩に刺さった剣を手で払い除けた。
「ツネオ! お前ツネオにこんな事して許さないにゃ」
恒夫を庇うようにダークエルフの前に立つネピアの両手の爪が長く伸びている。
「恒夫大丈夫か、凄い血だぞ」
真っ青な顔の秀樹が恒夫の顔を覗き込む、
地響きを立ててゴーレムがネピアの隣に降りてきた。
「ダメだよネピア、エルフさん話しを聞いてください、勘違いなんです」
最後に岩場を降りてきた栄二がネピアとゴーレムの間に立つ、後ろの恒夫は気になるがダークエルフを止めるのが先だと判断した。
「勘違いだと……あの男はニヤニヤと厭らしい顔で私たちを覗いていたんだぞ」
ダークエルフが血の滴る剣で恒夫を指した。
「そうだ覗きを見つけたら駆け寄ってきたんだぞ、あの男は…… 」
湖にいた二人のダークエルフが岸に上がって素早く服を着ると駆けつけてきた。
先にいたダークエルフが二人から服を受け取るとその場で素早く着る。
「ああぁーっ、お姉様の裸がぁ~、俺の陥没乳首がぁ~~ 」
元気な恒夫の声が聞こえた。
栄二が振り返ると驚きを通り越した驚愕した顔の秀樹の横に平然とした顔の恒夫が立っていた。
服こそ血で汚れているが肩の傷はすっかり治っている。
「 ……恒夫、怪我はいいのか? 」
驚きに言葉を失っている秀樹の代わりに栄二が訊いた。
「怪我? ああ痛かったがすぐに治ったみたいだな、凄い再生力だぜ、痛みも十秒くらいで無くなったし、この不死身の能力は使えるぜ」
恒夫が何とも無かったかのように左肩を大きく回した。
ネピアが恒夫に駆け寄っていく、
「うにゅん、ツネオ大丈夫か? 血がいっぱい出てたのが治ってるな、何でにゅ? 」
ネピアが恒夫の左肩を不思議そうに撫でている。
ゲームの事は説明したが不死身の能力の事は話していない。
「何故だ! 確かに切ったはずだ。死なないとしても振り回せるはずがない」
秀樹や栄二以上に切った本人であるダークエルフが驚いていた。
「マジで不死身なんだな、凄いな恒夫」
やっと正気に戻った秀樹が恒夫の肩をポンッと叩いた。
その顔が自信に満ちている。
目の前で不死身の能力を見たのだ。
肩が切り落とされるくらいの怪我が三分掛からずに治った。
しかも痛みも十秒ほどで消えたという、たとえ不死身でも痛みが続けば動けなくて結局戦えないだろうと心配していたのが払拭された。
三人のダークエルフが剣を構える。
「お前ら何者だ? 場合によっては生きて返さん」
「俺たちは敵じゃない信じてくれ、俺たちは…… 」
秀樹が必死に説明をしようとしたとき上の岩場に人影が立った。
「エルフども我らが相手になろう、その方たちは我らの客人だ」
上から男の低い声が聞こえた。
秀樹たちが振り返ると大きな岩の上にリザードマンが五人並んでいた。
「うにゅん、リザードマンにゅ」
ネピアが爪を伸ばして構える。
「すげー2本足で立ってるぞ、コモドドラゴンよりでかいな、ザラザラだな」
虫や爬虫類などが好きな恒夫が興味津々の顔だ。
秀樹と栄二は初めて見るリザードマンに驚いて声も出ない。
リザードマンは筋肉ムキムキの身体にトカゲの頭と尻尾を付けたような姿をしている。
毛は生えていない、皮膚は小さい鱗で覆われていて恒夫が言うようにザラザラである。
オスだからなのか服は腰に布を巻いているだけだ。
リザードマンは二人が矢を放つボウガンを持ち残りの三人が剣と盾を持っている。
三人のうち真中にいるリザードマンがリーダーらしく首に青いスカーフを巻いていた。
リザードマンのリーダーが秀樹たちを手招いた。
「ささ客人こちらへどうぞ、我らが歓迎しますぞ」
「客人? どういう事だ? 」
まだ驚いている秀樹と栄二をよそに恒夫が不思議そうに訊いた。
「ツネオ、気をつけるにゅ、こいつら好戦的にゅ」
ネピアは爪を伸ばして戦闘態勢をとったままだ。
こちらの世界に住む獣人だからリザードマンの事もよく知っている。
もしかしたらネピアのチャトラン族とは仲が悪いのかもしれない。
ネピアを見てリザードマンがニヤりと笑う、
「ははははっ、そう警戒するな猫女、我らは何もせん、こちらの人間と話しがしたいだけだ。もちろん猫女もゴーレムも客人として歓迎するぞ」
「貴様ら……トカゲどもの仲間だったんだな」
様子を伺っていたダークエルフが睨み付ける。
リザードマンを見ていた秀樹が慌てて振り向いた。
「違うんだ俺たちは…… 」
「何を仰います。あなた方は我らの大事な客人、我ら心からもてなしますぞ」
釈明しようとした秀樹の言葉をリザードマンの大声が遮った。
ダークエルフの顔にみるみる怒りが浮かんでいく、
「貴様ら……覚えておれよ、トカゲどもと一緒に次こそ切り殺してやるからな」
「ちょっ待ってください…… 」
秀樹が止めるのも構わずにダークエルフは走って消えていった。
リザードマン五人に秀樹たち相手では分が悪いと思ったのだろう、しなやかな身体をバネにして森の中を跳ぶように去っていったダークエルフを止める事は出来なかった。
「邪魔者はいなくなりましたな、私はブリガンと申します。皆様を歓迎します。さあ我らの村に来てください食事も用意しますよ」
青いスカーフを着けたリザードマンのリーダー、ブリガンが丁寧に頭を下げた。
リザードマンはダークエルフと秀樹たちの揉め事をどこかで見ていたのだろう、切られた恒夫がすぐに再生したのも見ていた。
秀樹たちを只者ではないとみて自分たちに協力させてダークエルフを倒そうと考えたのだ。
リザードマンにチラッと視線をやると秀樹は栄二と恒夫とネピアを呼んで円陣を組む、
「お前なぁ~、絶対に変な事するなってあれほど言っただろ…… 」
「完全にダークエルフを敵に回したよね、リザードマンの客人って事になったら、今さら僕たちの話なんか聞いてくれそうもないし…… 」
秀樹と栄二が恒夫を責めた。
当然である。全て恒夫の暴走が原因だ。
ネピアが楽しそうに恒夫の薄い頭をポンポン叩いた。
「うにゅん、ツネオはトカゲの友達なんか? 」
「トカゲの知り合いはカナヘビしか知らんぞ、デカいトカゲの友達は知らん、でもリザードマンって結構格好良いよな、これも運命だと思ってリザードマンに協力しようぜ」
責められても恒夫はいつものように飄々としている。
「何が運命だ。お前が勝手に運命を捻じ曲げたんだろが……まったく」
「でも仕方ないよ、諦めてリザードマンと組むしかないよ、どっちかと組んでイベントクリアしなくちゃ宝玉が手に入らないんだからさ」
「そうだな…… 」
弱りきった表情で言う栄二に秀樹が疲れた顔で頷いた。




