第百十八話 「人助けイベント」
菜穂に蹴られ、ラグにボコられて気絶していた恒夫が目を覚ます。
「うぅ……痛ててっ」
鳩尾に手を当てて恒夫が上半身を起こした。
「マジで蹴りやがって…… 」
文句言いながら見上げる恒夫に菜穂がキッと怖い目を向ける。
「それだけで済んで感謝しなさい、マーサさんの前じゃなかったらもっと酷いからね」
「そうだぞ、お仕置きするって言ってたよにゃ、これで勘弁してやるぞ」
いつの間にかマーサたちに対する警戒を解いているラグを見て恒夫が何があったのかとスギナに向き直る。
「いつもの気紛れ猫じゃ、後でよかろう」
ちらっとスギナが視線を送る先からヘカロが歩いてきた。
「話しは済んだかい? まだならイベントが終わった後にしてくれ、今回のイベントは対決イベントではないので休みにゆっくり話せばいい」
ヘカロが秀樹たちだけでなくマーサたちも見回した。
「話しは終わってるよ、大した話しじゃない」
汚れを払いながら恒夫が立ち上がる。
「そうかい、では向こうで説明を聞こう」
ヘカロが手を上げる先でイベント担当天使が手招いていた。
イベント担当天使の前に参加者が集まる。
秀樹たちとマーサに機械人間の3チームだ。
「何あの娘? 可愛い…… 」
イベント担当天使の脇に立つ少女を見て栄二が頬を緩める。
小さな丸い耳とくるっとカールした大きな尻尾を付けた獣人の少女だ。
歳は十二~十四くらいだろうか?
身長145センチ程の女子中学生くらいの少女である。
妹タイプの好きな栄二が可愛いと見惚れるのも分かる。
「おう、可愛いな、後輩とか妹タイプだな」
好みを知っている秀樹が肘で栄二を突っついた。
とぼけ顔の恒夫の目が厭らしく光る。
「ガキかよ……俺のセンサーは反応しないな、でも恥ずかしそうに黄金水プレイをしてくれるなら有りだよな」
「反応してるだろが! 何でもありかよヘンタイ」
「あははっ、恒夫のヘンタイセンサーは幅広いからね」
怒鳴る秀樹の横で栄二が呆れ顔で掠れた笑いを上げる。
恒夫がキリッとマジ顔を作る。
「高性能センサーだからな、お姉様だけじゃなく熟女からロリ、人外、可愛ければ男の娘も可能だ。弘法筆を選ばず。それが俺だ」
「ヘンタイと一緒にするな! 弘法大師に謝れ」
「弘法筆を選ばずって恒夫の場合は優れてるんじゃなくて悪食なだけだよね、ヘンタイ相手を選ばずって感じだよね」
怒鳴る秀樹や呆れる栄二に構わず恒夫はとぼけ顔だ。
後ろにいた菜穂が厭そうに恒夫の背を見つめる。
「恒夫くんロリもいけるんだ…… 」
「本物のヘンタイじゃからの」
隣でスギナも険しい顔だ。
「浮気は毛抜きだからにゃ」
先頭にいたラグがバッと振り返って八重歯のような牙を見せて威嚇する。
「冗談だって、それより説明始まるぞ、リーダーなんだから前向いて聞いてろよ」
「ぐにゅぅ~、あとで覚えてろにゃ」
リーダーとしての自覚はあるらしく悔しげに言うとラグが前に向き直った。
先程から少女を見て頬を緩ませている栄二が呟くように口を開く、
「可愛いなぁ~、尻尾が大きくて丸まってるからリスかな? でも可愛いけど何か悲しそうだよね、あの娘…… 」
呟きに釣られるように秀樹たちが獣人の少女を見つめた。
イベント担当天使の説明が始まる。
「皆さんこんにちは、では今回のイベントの説明を始めます」
参加者たちが全員注目しているのを確認すると天使が続ける。
「今回のイベントは『人助けイベント』です」
傍に立つ獣人の少女を紹介する。
「彼女はピナ、獣人のリス少女です」
リス少女のピナがサッと頭を下げた。
「ピナと言います。お願いします。母の形見のペンダントを探してください、山で無くしました。山に木の実を取りに行ったんです。そしたらシャドウドッグに追われて必死で逃げて気が付いたらペンダントが無くなっていたんです。どうか探してください」
頭を下げたまま話し終わるとピナが顔を上げた。
「かわいそうに……僕が絶対に探してあげるよ」
人外好きな栄二が同情的して安請け合いだ。
「ペンダント探しのイベントか」
成る程と呟く秀樹の隣で恒夫がとぼけ顔で口を開く、
「まぁ、イベントってわかってるけど一応突っ込んどくぜ、ピナちゃんは何で自分で探さないんだ? 」
イベント担当天使がサッと恒夫を指差す。
怒られると思った恒夫が愛想笑いしながらペコッと頭を下げて謝る。
「そこ! いい事言いましたね、探しに行きたくても行けないのです」
天使の満面の笑みを見て恒夫の愛想笑いが安堵した変な顔に歪んでいく、
「どういう事ですか? 」
一緒に怒られると思っていた秀樹と栄二も怪訝な表情だ。
「ピナさん説明してあげてください」
天使に促されてピナが話し始める。
秀樹たちだけで無く参加者全員がまたリス少女ピナに視線を移した。
「魔物が出るんです。探しに行こうとしても魔物がいて……普段は山奥にいる魔物が何故か降りてきているんです。それで探しに行けなくて……魔物がいるとわかっていたら初めから山なんか行っていません、皆さんお願いします」
必死で訴えかけるピナを見て恒夫が鼻を鳴らす。
「成る程ね、全てお膳立て済みって事か」
「そりゃそうだな、イベントだからな」
隣で秀樹も納得したように頷いた。
正面にいる二人の態度に不安を感じたのかピナが深く頭を下げた。
「大事な母の形見なんです。どうにか探してください、お願いします」
「安心してよ、みんなで絶対に見つけてあげるからね」
人外好きの栄二一人だけやる気満々である。
ピナが後ろに下がりイベント担当天使の詳しい説明が始まった。
イベントタイトルは『魔の山でペンダントを探せ』である。
魔の山と大層な名が付いているが普通の山である。
獣人でも滅多に入らない山奥にいる魔物たちをイベント用に集めたのだ。
山にいる魔物は3種類、音も無く影のように近付くシャドウドッグに歩くキノコ、ウォークマッシュルーム、最大の敵が山の主である九つの頭を持つ蛇ヒドラだ。
つまり、魔物たちと戦いながらペンダントを探すというイベントである。
近くの村に住むリス少女ピナはイベントに巻き込まれたのだろう、とても演技をしているように見えない態度からそれがわかる。
魔法に妖術、アイテムなど各自の持つ能力は全て使用可能だ。
能力をフルに使って大きな山の中に落ちている小さなペンダントを探す。
ある意味戦いよりも難しいイベントである。
ペンダントは一つしか無いので当然チーム同士の争いとなる。
リス少女の元へペンダントを持ってきたものが勝ちでチームに500ポイントが付くのだ。
説明が終わると恒夫が手を上げた。
「質問いいですか? 」
「はい、構いませんよ」
にこやかなイベント担当天使に恒夫がマジ顔を向ける。
「ペンダントを探すためならどんな事をしてもいいって事ですよね」
「はい、その通りです。探すために火を放って山を丸坊主にしても構いません、ですがペンダントは普通の物です。小さな傷ならともかく焼けて壊れたりすれば失格です」
「成る程ね…… 」
考えるように俯く恒夫を秀樹がちらっと見る。
「大袈裟な事は出来ないって事か」
呟く秀樹の横で栄二が優しい声を出す。
「心配しなくてもいいよ、ペンダントが壊れる事なんか僕たちは絶対にしないからね」
栄二の見つめる先で不安気な顔をしたリス少女ピナがペコッと頭を下げた。
「もう一つ質問いいですか? 」
また手を上げる恒夫に秀樹たちだけで無くマーサや機械人間たちも注目だ。
「構いませんが最後にしてくださいね」
天使はにこやかだが先に進まないと思ったのか少しキツい口調だ。
「ああ、済みません、これで最後です」
ペコッと頭を下げると恒夫が続ける。
「何でもありって事はチーム同士で戦う事も有りって考えていいんですよね? ペンダントを見つけたチームから奪う事も有りって事ですよね? 」
「鋭いですね、確か……城道恒夫くんでしたね」
イベント担当天使から笑みが消えた。
「その通りです。他のチームとの戦闘も有りです。どんな手段を使っても構いません最終的にここへペンダントを持ってきたチームが勝ちです」
秀樹と栄二と菜穂の顔が強張る。
恒夫は普段のとぼけ顔だ。
ラグとスギナも別段様子は変わらない。
「何でもありかよ、まったく…… 」
「マーサさんたちと戦う事もあるって事か」
「何言ってんのよ! そんな事あるわけないでしょ」
秀樹と栄二の言葉を否定する菜穂も不安が顔に浮んでいる。
「碌でもないゲームだぜ、何かというと戦わせて楽しんでやがる」
「にゃははははっ、戦いでも何でもあたいがついてるから平気だぞ」
とぼけ顔の恒夫にラグが抱き付いて大笑いだ。
スギナが恒夫の腕を引っ張る。
「Aクラスのエルフがおるんじゃぞ、慎重にな」
「わかってる。一応聞いただけだ。他のチームと戦う気なんて無いよ、なぁ秀樹」
恒夫に振られて秀樹がうんうん頷く、
「当たり前だ。戦うのは魔物だけで充分だ」
「そうだよね、マーサさんは元より機械人間のナットさんとペンチさんとも戦う気なんて無いよね」
栄二が同意するように言うが焦っているのか早口だ。
「そうよ、戦いなんてしないわよね」
三人の様子に安心しながら菜穂がマーサたちに振り返る。
普段笑みを絶やさないマーサの顔から笑みが消えている。
隣りに立つケリウスもマジ顔だ。
後ろでギガルがニヤッと黄色い牙を見せて笑っていた。
その横にいるロアスは普段から無表情で糸目からも感情が読み取れない。
「マーサさん…… 」
四人の態度に菜穂の顔にまた不安が広がっていった。
菜穂を見て恒夫がニヤッと厭な顔で笑う、
「俺たちが戦わないって言っても向こうはそう思っていない様子だぜ」
「やっぱあいつら信用できにゃいぞ」
恒夫の腕にしがみついていたラグが額に皺を寄せて怪訝な表情だ。
「そんな事ないわよ! 」
大声で言うと菜穂がマーサたちに向き直る。
「私たち戦ったりしませんよね? 対決イベントは仕方無いけどこんなイベントで戦ったりしませんよね? 」
必死で訴えるように言う菜穂の前でマーサが何とも言えない表情で口を開いた。
「できうる限りの協力はしていきたいと思っています。ですが勝たなければ意味がありません、その為にゲームに参加したのですから…… 」
隣りに立つケリウスも同意するように頷いてから話し始める。
「マーサに賛成だ。ゲームに勝つためにはポイントがいる。菜穂さんたちも勝つために参加したのだろう? ならばポイントを得るためにはどんな事もする……しなければいけないと私は考えている」
歯切れの悪い二人の向かいで菜穂の顔は強張ったままだ。
「勝つために何でもするっていうのはわかります。私も勝ちたいですから、勝つために秀樹くんたちとチームを組んだんです。でもマーサさんとは戦いたくありません」
目に涙を溜めて見つめる菜穂を見てマーサが優しく微笑んだ。
「私も菜穂さんと戦いたくなどありませんよ」
「本当ですか? じゃあ…… 」
パッと顔を明るくする菜穂の言葉をケリウスが遮る。
「出来るだけ戦いは避けるという事だよ、しかし、戦わなくてはならなくなったときは戦うということさ」
意味がわからないという顔の菜穂の傍で恒夫がいつものとぼけ顔で口を開く、
「要するに相手が誰であろうと戦うって事だろ? 俺も賛成だ。取れるポイントをくれてやるなどバカのすることだぜ」
「何言ってんのよ! 」
振り向いて声を荒げる菜穂の向こうでマーサとケリウスの目がキラッと光った。
二人の後ろで熊男のギガルが大声で笑い出す。
「がははははっ、その通りだ。ポイントの奪い合いだぜ、馴合いじゃねぇ、取れるなら取る。どんな相手でも、どんな事をしてもな、勝ちゃいいんだよ、勝たなきゃ意味がねぇ」
「そんな…… 」
言葉を詰まらせる菜穂を秀樹と栄二が何とも言えない表情で見つめる。
自分たちも驚いているので掛ける言葉も思い付かない。
秀樹たちを余所にスギナが機械人間のナットとペンチに近付いていく、
「自己紹介がまだじゃったな、儂はスギナじゃ、種族は妖怪じゃ」
気軽に話し掛けるとスギナが振り返って秀樹たちを指差す。
「向こうに居る人間とチームを組んでおる。猫の獣人が儂らのリーダーじゃ、我慢比べイベントで一緒じゃったから細かな説明はいいじゃろ、お主らはナットとペンチじゃったな」
「ハイ、私がナットで彼女がペンチです。種族は貴女たちの言うところでは機械人間となります。先のイベントではペンチの不具合を指摘していただき感謝しております」
頭を下げるナットを見てペンチも同じように下げた。
ペンチはナットの部下らしい。
ナットは短い髪を四角に刈り上げた軍人のような髪型をしている。
顔は整っていてイケメンだが表情を現わさないので少し怖い感じがする。
ペンチは肩の上までのストレートヘアだ。
整った顔をしているがナットと同じく感情に乏しいので近寄りがたい感じのする美女である。
二人とも人間にそっくりだがどこか違和感を感じる。
スギナは近くで観察してそれがわかった。顔が左右対称だ。
人間はどんなに整っていても左右対称ではない、感情が無いだけではなく整いすぎているので違和感を感じるのだ。
「礼などよい、戦闘イベントではないのじゃ、助け合う事が出来ればそれに越した事はないからのぅ」
微笑むスギナを見てナットの口元が嬉しそうに少しだけ緩んだ。
秀樹たちがやって来る。
マーサたちも一緒だ。
機械人間と何を話しているのか気になったのだろう。
秀樹たちを一瞥するとスギナが話を続ける。
「お主たちはこういうイベントも得意そうじゃな」
みんなに聞こえるようにスギナが少し大きな声で言うとナットが頷いた。
「我々には各種センサーが付いている。金属探知も出来るのでペンダントを探す事は可能だ」
「成る程の、儂らもペンダントを探す当てはついておる」
スギナが恒夫とラグにちらっと視線を送る。
恒夫の持つイカサマサイコロとラグの嗅覚などを使って探すつもりである。
「お互い見つける方法があるなら話は早い」
スギナが改まってナットを見つめる。
「正々堂々と勝負をせんか? 」
「正々堂々とは? 」
感情を顔に出さずにナットが聞き返す。
「見つけた相手から奪っても構わんルールじゃ、じゃが儂らは戦いを好まん、そこで相談なんじゃが先に見つけても奪ったりせんと約束せんか? 」
「約束? 」
無表情だったナットがわからないというように首を傾げた。
他種族と交流できるように最低限の感情表現はプログラムされている様子だ。
「先にペンダントを見つけた方が勝ちという事じゃ、儂らが先にペンダントを見つけてもお主らは手出しをせん、逆にお主らがペンダントを見つけても儂らは奪ったりはせん、見つける方法に自信があるなら受けてもよかろう、お主らの事は買っておる。戦うイベントならともかくこの様なイベントでお互い消耗はしたくあるまい? どうじゃ」
ナットがわかったと言うように頷いた。
「了解した。先のイベントでお前たちは信用に値すると判断した。他はともかくAクラスと無駄な争いはしたくないからな」
「うむ、決まりじゃ、お前たちと戦わずに済んで儂も安心じゃ」
嬉しそうに少し口元を緩めるナットを見てスギナがニッコリと可愛い笑みを見せた。
スギナがくるっと振り返る。
「お主らもどうじゃ? 儂と戦えば只では済まんぞ、お互い無駄な消耗はしたくあるまい」
マーサとケリウスが顔を見合わせる。
「相談するので時間をください」
ケリウスが言うとスギナが頷く、
「イベント開始まで時間が無い、早く決めるのじゃぞ」
秀樹たちから少し離れてマーサたちが相談を始める。
三分も経たずにケリウスがやって来る。
「了解しました。その提案受けましょう」
「戦わなくても済むのならそれに越した事はありません、菜穂さんは信用できますからね」
隣で微笑むマーサを見て菜穂が嬉しそうに息をつく、
「よかったぁ~、マーサさんと戦うなんて考えもしなかったから…… 」
スギナがその場の全員を見回す。
「ではこれで決まりじゃ、これで一先ず安心じゃ」
話を纏めようとした時、後ろにいた熊男のギガルが大声を出す。
「俺は反対だぜ、戦っちゃいけないなんてルールに無いんだからな」
「ギガル止めろ! 皆で話し合って決めた事だ」
リーダーのケリウスが叱責するがギガルは構わず続ける。
「がははっ、何言ってやがる。俺の意見など聞かずに勝手に決めた事だろが」
狼男のロアスがスッとギガルの後ろに立った。
「口が過ぎるぞ、お前は雇われただけだという事を忘れるな」
「なっ……くそっ、勝手にしろ」
顔に恐怖を浮かべたギガルがふて腐れて離れていった。
マーサが頭を下げる。
「ごめんなさいね、ギガルにはよく言っておきますから」
スギナがケリウスを見上げる。
「約束したと言う事でいいんじゃな」
「もちろんです。無駄な争いをしない良い提案だと思います」
爽やかに微笑みながらこたえるケリウスを見て菜穂はもちろん秀樹や栄二も安心顔だ。
「これで安心してゲームが出来るわね」
嬉しそうに笑う菜穂を見て秀樹が頷く、
「そうだな、3種類の魔物に気を付ければどうにかなりそうだな」
「うん、山の主のヒドラに気を付ければどうにかなりそうだよね」
気の緩んだ三人を見てスギナの後ろに居た恒夫がとぼけ顔で口を開く、
「何が良い提案だ。受けたって事はそっちも探す当てがあるって事だろ、機械人間もそうだし俺たちもそうだ。他の奴らより先に探す自信があるって事だ」
スギナが振り返って恒夫を睨み付けた。
「黙っておれ、せっかく纏ったんじゃぞ」
喜んでいた菜穂の顔が曇る。
「一々突っ掛かるわね、恒夫くんは疑いすぎよ、そんなんじゃ何も楽しめないでしょ」
「相手にするなよ、恒夫が捻くれてるのは昔からだ」
秀樹はムッと怒りながらも事をこれ以上荒立てないように怒鳴ったりはしない。
「へいへい、捻くれ者のヘンタイですよ」
「にゃはははっ、髪の毛も捻くれてハゲてるからにゃ」
「ハゲじゃねぇ」
楽しそうに抱き付くラグを鬱陶しそうに離そうとする恒夫の前に菜穂が出る。
「マーサさん、ケリウスさん、ごめんなさい、気を悪くしないでね」
バッと頭を下げる菜穂を見てケリウスが爽やかに笑う、
「気にしてないさ、恒夫くんだったか? その人の言う通りだ。私たちも勝つ自信があるから提案に乗ったまでだ」
隣でマーサも優しく微笑む、
「そうですよ、探し出す手段が無ければ受けていません、負けたくはありませんからね、各チーム探し出す算段があるから正々堂々と勝負できるのでしょう? ですから私たちも提案を受けたのです」
菜穂の後ろに居る恒夫をマーサが見つめる。
「うふふっ、城道恒夫くんって言いましたね、賢い人は好きですよ」
じゃれつくラグを引き離すと恒夫がパッと顔を上げた。
「おおぅ、俺もマーサさんはタイプだぜ、俺の女王様に…… 」
ボゴッ! 話が終わる前に恒夫が吹っ飛んで倒れた。
「浮気はお仕置きだって言ってるよにゃ、ほんとに毛を引っこ抜くぞ」
怒鳴るラグの声も聞こえない、恒夫は完全に気を失っていた。
スギナが手から植物の蔓を伸ばす。
「手加減せんか、始まる前に潰れたら困るぞ」
恒夫の治癒をしながらラグを睨み付けた。
「うにゅ、ツネが悪いんだぞ、あたいは悪くにゃいからにゃ」
頬を膨らませるとラグがプイッとそっぽを向いた。
イベント担当天使がマイクを握る。話が纏るのを待っていてくれたらしい。
「話しは済んだようですね、ではイベントを始めたいと思います」
他に質問は無いかと天使が参加者を見回す。
「イベント期間は四日、ペンダントがピナさんの元に戻れば終了です。残りはいつものように休みとなります。では人助けイベント『魔の山でペンダントを探せ』スタートです。ペンダントの写真をパネルに表示しましたので覚えてください、大きな山です。他にペンダントが落ちていないとも限りません、当然間違った物を持ってきても無効です」
「チッ、ダミーを撒いてる可能性もあるって事かよ」
吐き捨てる恒夫を見て秀樹たちだけで無くマーサも顔を顰める。
「あの子鋭いですね」
「うふふっ、賢い子は好きです」
ケリウスとマーサのひそひそ話はラグにだけしか聞こえない。
「うにゅにゅ……あいつら………… 」
二人を睨み付けるラグの背を恒夫がポンッと叩く、
「どうした? 」
「にゃんでもにゃい、ツネはあたいとずっと一緒だぞ」
プクッと頬を膨らませたラグが恒夫の腕に縋り付くように抱き付いた。




