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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
新章 新たなるゲーム
115/158

第百十五話 「試着」

 目を輝かせながらラグがビキニを選び始める。


「どのビキニにするかにゃ、フリフリにゃのは好きじゃないからにゃ、ここらはダメだぞ」


 フリルの沢山付いたビキニを手で払うようにするラグに菜穂が話し掛ける。


「それはチュアンピサマイって言うのよ」

「チュアンピザ? ピザの種類か? 」


 首を傾げるラグを見て菜穂が吹き出す。


「食べ物じゃ無いわよ、チュアンピサマイ、今ラグが触ってるビキニの事だよ、ラグはビキニの種類知ってるの? 」

「知ってんぞ、種類ってあれだぞ、ビキニはビキニだぞ」


 得意気に胸を張るラグを見て菜穂が苦笑いしながら話を始める。


「ビキニにも幾つか種類があるのよ、あそこにあるのがオーソドックスな三角ビキニでその横がホルスターネックって言って首の後ろで紐を結ぶタイプね、反対の棚に並んでるのがチューブトップ、向こうにあるのがタンクトップビキニ、タンキニっていうヤツね」

「流石買い物好きなだけあって詳しいのぅ」


 横で聞いていたスギナが感心顔だ。

 少し離れた所で秀樹たちが罰が悪そうに女子トークを聞いていた。


「フリフリなのがチュアンピサマイか……一つ勉強になったぜ」

「チュアンピサマイは知ってるよ、アイドルがよく着てるやつだよ」


 コソコソ話す秀樹と栄二の後ろから恒夫が呟く声が聞こえた。


「俺はフリフリより黒の三角ビキニだ。それで鞭を持ってビシバシしてくれたら最高だぜ」


 二人が同時に振り返る。


「ヘンタイ、どうせボンテージ姿でも想像したんだろが」

「水着に鞭なんて良く考えつくよね、普通は浮き輪やビーチボールだよね」


 呆れ返る二人を見て恒夫がニヤッと厭らしい顔で笑う、


「お前らだってエロいこと考えてるだろが、俺とは少しベクトルが違うだけだ」

「恒夫のドヘンタイと俺たちを一緒にするな」

「エロとヘンタイは似てるけど違うよね」

「お前らなぁ…… 」


 言い返そうとした恒夫の腕をいつの間に来たのかラグが引っ張った。


「ツネぇ~、こっち来るにゃ、ここじゃ見えにゃいだろ、あたいの水着選ぶの手伝え」

「スギナちゃんと菜穂がいるだろ、男の俺がビキニ見てたらヤバいだろが」

「大丈夫だぞ、ツネは周りの目を気にしなくても充分ヘンタイだからにゃ」

「ヘンタイは認めるが時と場所はわきまえてるからな……秀樹、栄二、助けてくれぇ~~ 」


 ラグが恒夫を引き摺っていく、助けを求められた秀樹と栄二は素知らぬ顔だ。



 ビキニにワンピにセパレートなどカラフルな布切れが多数ぶら下がる店内で秀樹たち男は居心地が悪そうである。

 ラグに手を引かれて入ったものの恒夫は隠れるように棚の端にいた。


 ラグがオーソドックスな三角ビキニを手に取る。


「やっぱ情熱の赤だぞ」

「デカいのぅ、儂の顔が隠れるぞ」


 隣で呟くスギナにラグが大きなビキニを被せる。


「にゃははははっ、ツネぇ~、見てみろ、ちびっ子がヘルメットみたいだぞ」


 大笑いするラグに呼ばれて恒夫が別の棚へコソコソ隠れていく、


「いつものヘンタイはどうした? 」

「そうだよね、なんで恥ずかしがってるんだよ」


 同じように隠れながら秀樹と栄二が意地悪顔だ。


「勘弁してくれ、幾ら俺でも知らない女が沢山いる場所で見境なくヘンタイできるかよ」


 弱り顔の恒夫を見て栄二が乾いた笑いをあげる。


「あはははっ、僕たち完全に浮いてるよね」

「浮いてるどころか不審者だぜ、カップルも数人いるけど殆ど女ばかりだ。こんな店来たことないからな何をどうしたらいいのかさっぱりだ」


 同じ気持ちなのか三人が顔を見合わせて力無く頷いた。

 奥の棚でワンピース水着を見ていた菜穂がやって来る。


「凄いわね、スギナちゃんの頭より大きいって事か…… 」


 スギナの頭を隠すビキニを見て菜穂が自分の胸と比べて溜息をついた。


「此奴はバカ乳じゃからな、猫のくせに乳だけ牛じゃ」


 頭に乗せたビキニを払うとスギナが菜穂の持つワンピース水着を見つめる。


「可愛い水着じゃの、どれ、儂もワンピを見に行くとするかの」

「へへっ、可愛いでしょ、向こうにいっぱいあるよ、スギナちゃんはフリルの付いたのとか可愛いんじゃないかな」


 自分の選んだ水着が褒められて菜穂が嬉しそうだ。


「どれ、見に行くかの、儂はあまり知らんから選ぶのを手伝ってくれ」

「いいわよ、可愛いの選んであげるわよ」


 菜穂と手を繋いでスギナが奥の棚に歩いて行った。

 ラグはビキニ選びに夢中だ。


「フリルか……フリフリはあたい嫌いだぞ、でもツネはどうにゃんだ? 」


 サッと恒夫に振り向く、


「にゃ~にゃ~、ツネはフリフリがいいのか? そんで赤と黄と青じゃどれが好きにゃ? 」


 カラフルなビキニを持つラグを見て頬を赤くした恒夫がどもった声を上げる。


「そっ、その中じゃ、あっ、赤がいいんじゃないかな、フリルは別に…… 」

「ツネもフリフリは嫌いなんだにゃ、赤か……やっぱ赤だよにゃ、情熱の赤だぞ」


 赤いビキニを見て考えるラグに栄二がアドバイスをする。


「でもラグさんは褐色だから白も映えると思うよ」

「そうだな、白とか黄色はコントラストが利いてていいよな」


 隣で秀樹が言うとラグは黄色のビキニを持ち上げた。


「黄色か……白はあまり好きじゃないから黄色がいいにゃ」

「うん、白以外なら僕も黄色がいいと思うよ」

「絶対可愛いぜ、なぁ恒夫」


 ニヤつく秀樹を見て恒夫がうんうんと首を振る。


「おお、きっ、黄色もいいな、らっ、ラグは可愛いから、きっ、黄色も似合うな」


 ラグに懐かれて変に意識する恒夫と違い栄二と秀樹は冷静だ。


「黄色か赤か……どっちか迷うぞ」


 赤と黄色の三角ビキニを比べるようにしながらラグが恒夫を見つめる。


「色もだけど形も迷うにゃ、ツネは布が大きいのと小さいのどっちがいいにゃ? マイケルビキニはポロリしそうだけどツネが好きにゃらそれにするぞ」


 棚に掛かっていた際疾いビキニをひょいっと掴んだ。


「ラグさん、マイケルじゃなくてマイクロビキニだよ」


 苦笑いしながら栄二が注意した。

 おっぱい星人の秀樹と恒夫はマイクロビキニ姿のラグを想像してエロい笑みを浮かべて黙り込んでいる。


「マイクロ? マイケルさんが作ったからマイケルビキニだと思ってたぞ、マイクロビキニだにゃ、覚えとくぞ」


 ニッと可愛い顔で言うと布の大きな三角ビキニと殆ど紐のようなマイクロビキニを両手に持って恒夫に迫る。


「形も色もいっぱいあって迷うぞ、ツネの好きにゃのにするからにゃ、選ぶんだぞ」


 目の前に際疾いビキニを突きつけられて恒夫の頬が赤く染まっていく、


「じゃっ、じゃあ全部買えよ、まっ、前の一千万ギギルが丸々あるから、ここにあるの全部買っても平気だぜ」


 焦ってどもる恒夫の後ろでラグのビキニ姿を想像したのか秀樹も頬を赤くしてうんうん頷いている。


 観光地価格だからなのか、女子の水着は元々高いのか、はっきり言って並んでいる水着は結構な値段のものばかりだ。

 現実世界では普通の高校生なら一つ買うので精一杯だろう、恒夫たちは宝くじの当たった東條に分けて貰っているので幾らでも買えるのだがそれでも全部買えなどと無茶を言えるのはゲームの中だけである。


 ラグがじとーっとした目で恒夫を見る。


「菜穂がダメって言ったぞ、泳ぐのは今日と明日だけだからにゃ、それにまた泳げる所に行けたらその町で新しい水着買った方が楽しいからにゃ」


 選び終わった菜穂とスギナが数着の水着を持ってやってくる。


「わかってるじゃないラグ、その通りよ、ショッピングは一度に沢山買ってもつまらないのよね、行った先々で色々な店を見て回ってこれと思ったものを少しだけ買うの、それが楽しいのよ、気に入ったものを探すのが楽しいのね」

「そうじゃぞ、沢山買っても結局思い入れのあるものしか使わんからの、じゃったら初めから少しに絞った方がよい、それに沢山買っても荷物になるだけじゃ、もっとも儂の妖瓢箪を使えば幾らでも運べるがの」


 二人が選んできた水着を自慢気に見せる。


「四つも持ってるぞ、あたいには二つって言ったぞ」


 ラグが恒夫に向けていたじとーっとした目を二人に向けた。


「買うのは一着か二着じゃぞ、色と形が気に入ったのを幾つか持ってきただけじゃ、この中から試着して決めるのじゃ」

「そうよ、ラグもちゃんと試着しなきゃダメよ、実際に身に着けないと似合うかどうか分からないでしょ? 」

「おおぅ、試着だぞ、んじゃ、これとこれとあれを持っていくぞ」


 気に入った水着をラグが取りに行く、


「流石だ。じゃあ二人に任せて俺は…… 」


 二人の間を通って逃げようとした恒夫をスギナと菜穂が捕まえる。


「ダメよ、ちゃんとラグのを選んでやりなさいよ」

「そうじゃぞ、お主に見てもらいたいから迷っておるんじゃぞ」

「勘弁してくれぇ~~ 」


 情けない声を上げる恒夫の前に笑顔のラグが五つほどビキニを持ってきた。


「んじゃ、試着しに行くぞ」


 試着と聞いて秀樹と栄二が顔を見合わす。


「じゃあ俺たちは外で待ってるから」

「ゆっくり選んでいいよ、僕たちは向こうで海パン選んでくるから」


 流石に試着を待つのは気まずいと思ったのか秀樹と栄二は自分たちの水着を見に行こうと歩き出す。


 スギナと菜穂からどうにか逃げ出そうともがく恒夫の腕をラグが掴んだ。


「勘弁してくれ」

「ツネはこっちに来るにゃ」


 弱り顔の恒夫をラグが引っ張っていく、


「ちょっ、俺も海パン選びに行くから…… 」

「にゃに言ってんだ。ツネのはあたいが選んでやるぞ、それよりどれが一番似合うかツネが見て選んで欲しいにゃ」


 赤と黄色の三角ビキニや際疾い布のマイクロビキニを持ったラグが恒夫を引き摺っていく、


「ちょっ、流石に試着室は不味いから…… 」


 どうにか逃げようとするが獣人の力には敵わない、恒夫がスギナに手を伸ばす。


「スギナちゃん助けてくれ」


 スギナが満面の笑みを向けた。


「そうじゃの、ついでに儂の水着も見てもらおうかのぅ」


 フリルの付いた青と白とピンクのワンピースや白色のセパレート水着を持っている。

 スギナがダメだとわかると菜穂に手を伸ばした。


「何? なんか恒夫くんやらしいわよ、私はいいわよ、自分で選ぶから」


 じとーっと軽蔑した目で睨む菜穂を見て恒夫が慌てて口を開く、


「ちょっ、違う、変な事考えてないから……助けて貰おうとしただけだから…… 」

「助ける? 選んであげたらいいじゃない、モテモテだよ」


 からかうように言うと菜穂は試着室へと入っていった。



 スギナが着物の胸元からポーチを取り出す。

 小銭入れほどの小さなポーチだ。


「恒夫、預かっておれ、儂の貴重品が入っておる。皆の荷物を入れておる妖瓢箪も入っておるから無くさんようにな」

「俺たちの荷物はともかく、スギナちゃんの貴重品なんて怖くて預かれないよ」

「大したものは入っておらん、着替えで無くすと困るからの、つべこべ言わずに持っておれ」


 スギナは無理矢理預けるとカーテン1枚で隔てられている試着室へと入っていった。

 隣で菜穂が入った試着室のカーテンにラグが首を突っ込んで中を見ている。


「何やってんのよ? ここは一人用だからね、他に試着室空いてるでしょ? 」

「にゅへへっ、あたい試着室使った事無いからにゃ、菜穂を見て勉強してんだぞ」

「マジ? マジで使った事無いの? じゃあいつもはどうやって選んでるのよ」


 吃驚したのか菜穂の声が一段高い、


「野生の勘だぞ、少し大きめの選ぶぞ、そんで大体着れるんだぞ」


 得意気に話すラグを見て菜穂が大きな溜息をついた。


「呆れた……服はともかく下着はダメでしょ、ブラはサイズに合ったの選ばないとダメよ、ラグは胸が大きいんだから合ってないの着けてたら体のライン崩れるわよ」

「ブラは大丈夫だぞ、村の店でピッタリ測って作って貰ってるからにゃ、特注だから他より少し高いんだぞ」

「確かに、あんたの胸じゃそこらの店には売ってないわよね」

「にゃははははっ、チャトラン族の村でも大きい方だからにゃ、でも同じようなブラばかりで可愛いの持ってにゃいぞ、菜穂のブラはレース模様が可愛いにゃ」

「へへっ、いいでしょ、この前休んだ町で買ったのよ」


 楽しそうな女子特有の会話が続く、


「ぶっブラ……レース模様の………… 」


 思わず呟いた恒夫が焦って周りを見回す。

 女ばかりだ。

 カップルで来ている人も流石に試着室まで付いてくる彼氏はいない。


 完全に場違いだ。

 こんな所に居たらヘンタイどころか犯罪者扱いされるぜ……、

 恒夫がそっと後退る。


 カーテンに首を突っ込んで中を見ていたラグが振り返る。


「逃げたらこちょこちょの刑だからにゃ」


 隣の試着室からスギナの声が聞こえてくる。


「心配いらんぞ、儂の荷物を持って何処かへ行くわけがなかろう、そんな事をすれば本気のお仕置きじゃからな」


 今にも走り出さんとしていた恒夫の足が止まった。


「酷ぇ……その為に荷物預けたんだな」

「お主の行動パターンはお見通しじゃ、じゃがお主の事は貴重品を預けられるくらいに信用しておるという事でもあるぞ」


 スギナの入っている試着室を恒夫が諦め顔で見つめる。


「スギナちゃん……わかったよ、逃げたりしないよ、スギナちゃんにそこまで言われちゃ仕方ないな」

「ほんと、恒夫くんってスギナちゃんの言うだけはちゃんと利くよね」


 右の試着室から菜穂が言うと前にいたラグが得意顔で口を開く、


「ちびっ子だけじゃないぞ、あたいの頼みも利いてくれるぞ、にゃんたってゲームで勝ったら一緒に旅する仲間だからにゃ」


 厭そうな諦め顔をしていた恒夫がキッとマジ顔でラグを見る。


「ラグ……ええぃ、もう水着でも下着でも何でも選んでやるわ、その代わり俺の選んだのを絶対着ろよ」

「おおぅ、ツネがやる気ににゃったぞ、んじゃ、色々試着して選んで貰うぞ」


 ニパッと笑顔になるとラグが左の試着室へと入っていく、


「やる気と言うより、下着とか言ってなんかエロいわよ」


 右から菜穂の声が聞こえるが恒夫は無視した。

 エロとかヘンタイ以前に女子の試着室の前にいる男など犯罪者扱いされて当然だ。

 現に周りにいる女性客からは怪しい目で見られている。

 ラグや菜穂と話をしているのを見ているので連れだと分かっているから女性店員は何も言わないが只突っ立っているだけなら今頃通報されているだろう。


 暫くしてスギナの試着室のカーテンが開いた。


「恒夫、この水着はどうじゃ? 」


 照れているのか少し頬を赤くしたスギナが上目遣いに恒夫を見つめた。


「なっ!? どうって……本気で俺に選ばせるつもりだったのかよ」


 ラグはともかくスギナは冗談だと思っていたので恒夫の顔が引き攣っている。


「水着を買うのは初めてじゃからな、四国の山奥では水着なんぞ着ずに裸で川遊びしておったからのぅ、スクール水着は持っておるぞ、麓の村祭りに出た際に知りおうた少女に貰ったのじゃ、田舎には儂の姿の見えるものがまだ居るからのぅ」

「スギナちゃんのスク水…… 」


 恒夫の頭にスクール水着姿だけでなく何故かセーラー服姿のスギナが浮んだ。


「どうしたのじゃ? この水着はダメなのか? 」


 不安気に訊くスギナの前で恒夫がブンブン頭を振った。


「ちょっ、ちょっと待って、吃驚して見てなかった」


 マジ顔の恒夫がスギナを見つめる。

 ピンクのワンピース水着だ。

 フリルなどは付いていないオーソドックスなワンピである。


「うん、可愛いよ、でもスクール水着と余り変わらないから他のがいいかもしれないね、せっかくなんだから形の違うやつにしてもいいんじゃないかな」

「そうじゃな、では他も着てみるとしよう」


 嬉しそうに微笑むとスギナが試着室に引っ込んでカーテンを閉めた。


「真面目に選んでくれて感謝するぞ」


 カーテンの向こうで言ったスギナの言葉で恒夫がハッとする。


「俺のセンスを当てにするなよ、女の子と一緒に服なんて買った事もないしな、でも俺が本当に可愛いって思うヤツを選ぶよ」


 先程までのやる気の無かった声とは違うハキハキした恒夫の声を聞いてスギナが心から嬉しそうな笑顔になった。



 左の試着室のカーテンがジャっと開く、


「じゃ~~ん、どうにゃ? 似合ってるか? 」

「うおぅ!! 」


 思わず恒夫が唸った。

 ラグが着ているのは赤のマイクロビキニだ。

 巨乳を超えた爆乳のおっぱいの乳首付近を三角の布が隠しているだけであとは殆ど見えているといった際疾い水着だ。


「にゃへへへっ、どうにゃ、セクシーだぞ」


 目が釘付けになった恒夫の前でラグが腰と首に手を回してポーズを取った。


「うっ、うん、セクシーだ。綺麗だ。可愛いよ」


 褒めそやす恒夫を見てラグが嬉しそうに笑いながら続ける。


「にゃははははっ、んじゃ、これにするかにゃ」

「ダメだ! 他のにしろ! 」


 即答する恒夫を見てラグがプクッと頬を膨らませる。


「にゃんでダメなんだ? 綺麗って言ったぞ、セクシーだぞ」

「ダメなものはダメだ。他の水着にしろ」


 そんな格好を他の男に見せて堪るか……、

 恒夫の焼き餅だ。


 只でさえ美人のラグがエロい格好などしたらナンパ野郎が寄ってくるのが分かりきっている。

 ラグを他の男に取られたくないと恒夫は無意識にダメ出ししていた。


「にゃんでダメなんだ? にゃ~にゃ~、可愛いって言ったぞ、にゃんでダメなんだ? 」


 余程気に入ったのかラグが恒夫の腕を引っ張って抗議だ。


「ダメなものはダメなの、俺が選んだの着るって約束だろ」


 ラグの手を離そうと恒夫が腕を振り回す。


「にゃんでダメか理由を言ったら利いてやるぞ、にゃんでか言わないから訊いてんだぞ」


 振り回す恒夫の腕を逃がすまいとしがみつく、その時、恒夫の手がマイクロビキニの細い紐に引っ掛かった。


 次の瞬間、パッと紐が解けてぶるるんっと弾けるようにラグのおっぱいが飛び出た。


「うおぅ! 」

「うにゃぁ! 」


 驚いた二人が同時に叫びを上げる。

 恒夫の腕を握ったままラグが試着室の奥へと逃げる。

 獣人の強い力で引っ張られて恒夫もカーテンの中へと転がるように入っていった。


 転んだと思った恒夫の頭を物凄く柔らかいものが包み込んだ。


『クッション? いや風船に近い、そうだ! 水風船だ』


 一瞬の間に恒夫の頭の中を考えが巡った。



「温かい水風船……違う! おっぱいだ」


 恒夫がガバッと顔を上げると目の前にラグの褐色の爆乳があった。


「うぉ、おっぱい! 」


 思わず声に出た。

 焦った恒夫の目がラグと合う、


「にゃへへっ、おっぱいポロリしたぞ」

「ちっ、違う、俺が悪いんじゃないからな、わざとじゃないから、ラグが引っ張るから……違うから、ごっ、御免、直ぐに出ていくから」


 焦りまくって自分でも何を言っているのか分からない。

 慌てて出ていこうとした恒夫をラグが抱き締めた。


「うぉう…… 」

 ラグの生爆乳が恒夫の顔を包み込む、物凄く柔らかで温かくて良い匂いがする。

 気持ち良すぎて全身の力が抜けて恒夫が動かなくなった。


「謝らにゃくていいぞ、ツネの所為じゃにゃいぞ、吃驚したけどツネにゃら見られても平気だからにゃ、だってあたいはツネが好きだからにゃ」


 ラグの胸の中で恒夫が頷く、


「俺もラグが…… 」


 その時、ジャっとカーテンが開いた。


「大丈夫か? 」


 スギナの声に恒夫がバッと爆乳から顔を離した。


「何をやっておるんじゃ? 」


 慌てて振り返るとスギナがじとーっとした目で見ていた。


「ちっ、違うから……ラグが引っ張るから……事故だから………… 」


 必死で言い訳する恒夫の後ろからラグが抱き付く、


「ツネが押し倒したんだぞ、あたいのセクシー水着に欲情したんだぞ」

「ちっ、違うから、ラグが引っ張って倒れたから……押し倒したりしてないから……本当だから……無実だから………… 」


 首筋から肩に当たる爆乳が気持ちいいなど考えている暇も無い、疑うように見ているスギナに必死で釈明した。


 おろおろする恒夫の頭をスギナがポンッと叩く、


「わかっておる。こんな場所でバカをするお主ではないからのぅ、じゃが隙があるから付け込まれるのじゃぞ」

「ごっ、御免」


 頭を叩かれて落ち着いたのか恒夫がしゅんとなって謝った。


「にゃははははっ、ポロリして吃驚したんだぞ、でもちびっ子が邪魔しにゃかったらそのままラブラブしてたぞ」


 大笑いするラグをスギナがじとーっとした目で睨む、


「お主は早く胸を隠さんか、デカいバカ乳を振り回しおって」

「にゅひひっ、おっぱい大きいから溢れたんだぞ」


 ラグが照れるように笑いながら近くにあった三角ビキニを胸に当てて隠す。


 スギナちゃん、俺じゃなくてラグを見てたのか……、

 恒夫がほっと安堵した。


 気を取り直した恒夫がスギナと一緒に試着室を出て行く、


「その水着はダメだからな、外でポロリしたらダメだからな」

「にゃへへっ、わかったぞ、ポロリは吃驚するからにゃ、見ていいのはツネだけだからにゃ」


 カーテンを閉める際に言うとラグがニッと笑ってこたえた。


 俺だけか……、

 恒夫の口元が嬉しそうに少し歪んだのにラグもスギナも気が付かなかった。


 外へ出ると恒夫の前でスギナがくるっと回った。


「どうじゃ? 儂は良いと思うんじゃが」


 スギナが着ているのは水色のタンキニ、タンクトップビキニだ。

 フリルが沢山付いている幼女用の可愛い水着である。

 恒夫の顔が綻んでいく、


「うん、可愛いよ、似合ってる」

「そうじゃろ、儂も気に入ったからの、では一つはこれにするかの」


 ニパッと満面の笑みを見せるとスギナがまた試着室へと入っていった。

 入れ替わるようにラグがカーテンを開ける。


「今度はどうにゃ? 結構良いと思うけどにゃ」


 ポーズを取るラグを見て恒夫が動きを止めた。


「可愛い……うん、それいいよ、凄いよ」


 ラグが身に着けているのは先程手に持っていた赤色のオーソドックスな三角ビキニだ。

 大きなおっぱいを安定感のある三角の布が覆っている。


「にゃへへっ、これにゃらポロリも安心だぞ、んじゃこれに決めたぞ、もう一つ買うからツネはまだそこに居るんだぞ」


 可愛い顔で笑うとラグがカーテンを閉めた。

 恒夫はもう逃げたいという気持ちは無くなっていた。



 右の試着室から菜穂が出てくる。


「早いな、もう決めたのか? 」


 恒夫が訊くと私服姿の菜穂がニヤッと悪い笑みをする。


「い~やらし~~、私の水着も見たかったの? 」

「ちっ、違うから、そんなつもりじゃ無いから……スギナちゃんもまだだから菜穂が早いなって思っただけだから…… 」


 慌てる恒夫を見て菜穂がクスッと今度は可愛い笑みだ。


「ふふっ、冗談よ、恒夫くんってヘンタイの割に真面目なんだね」


 焦り顔を手で拭くと恒夫が口を開く、


「店の中でヘンタイやったら捕まるだろが、幾ら俺でも場所は選ぶからな」

「あははっ、そうなんだ。所構わずじゃないんだぁ」

「下品なヘンタイと一緒にしないでくれ、俺はヘンタイ紳士を目指してるからな」

「あははははっ、ヘンタイにも種類があるんだ」


 ドヤ顔で言う恒夫の前で菜穂が楽しそうに大笑いだ。



 その後、ラグとスギナの二着目の水着を選び終わり、三人分纏めて買うと男物の海パンを見に行く、秀樹と栄二は既に買って待っていた。


「なんか凄く疲れてない恒夫? 」


 心配そうに訊く栄二に恒夫がぐったりした顔を向ける。


「疲れた……もう女の服買うのに付き合うのは御免だ。違うって何回言ったか覚えてないくらい言ったぞ」

「お前の叫び通路まで聞こえてたぞ」


 普段ならからかう秀樹も同情的だ。


「にゃにやってんだ。秀樹と栄二は買ったけどツネはまだにゃんだから早く選ぶぞ」


 ラグに手を引かれて疲れ顔の恒夫が文句一つ言わずについて行った。

 連れられていく恒夫を見ながら栄二と秀樹が話し込む、


「姐さん女房って感じだね、ラグさん何歳なんだろう? 」

「さぁな、見た目は年下だけどな、スギナちゃんだって見た目は年下だし分からんぜ」

「そうだね、ネピアは僕より二つ下だったけどクロエは一つ上だったもんね」

「だな、クロエはもっと年上かと思ってたけど一つしか違わなかったもんな」


 二人の見つめる先でラグと恒夫が海パンを物色している。


 スギナと菜穂はレジャーシートとパラソルを見に行っている。

 大きな荷物はスギナの妖瓢箪に仕舞うので二人に任せたのだ。


「ツネのはあたいが選んでやるぞ、格好良いのを選ぶからにゃ」


 大張り切りのラグを恒夫が止める。


「俺は地味なのがいいからな、グレーとか青一色のヤツでいいから…… 」


 恒夫の言葉に耳を貸さずにラグが並ぶ海パンをはしゃいで見て回る。


「猫の絵が付いてる猫パンツにゃ、こっちは犬パンだぞ、おおぅ、サメだぞ、サメの絵が付いてるサメパンツもあるぞ」


 くるくる動いていたラグがピタッと止まった。


「おおぅ、これがいいぞ、ピカピカ光ってる感じがツネの頭と同じだぞ」


 ラグが派手な星柄の海パンを指差した。


「俺の頭は光ってないからな」


 文句を言いながら恒夫が海パンを手に取った。


「サイズは合うな、んじゃこれにするわ、ラグが選んでくれたからな」


 恒夫が速攻で決めた。

 疲れていた事もあるがラグが選んでくれたのが嬉しかった。

 女と違い試着などしないでその場で決めて直ぐに買う、その後はスギナと菜穂と合流してビーサンやパラソルに浮き輪などを買って店を出た。


 沢山出ている屋台で昼食をとる。

 食べ放題とまでは行かないが色々なものを買って道の脇に並ぶテーブルの上に並べてみんなでつつく、色々な味が楽しめるとラグも大喜びだ。


 昼食の後、服やアクセサリーなど菜穂のショッピングに付き合ってから約束通り海で少し遊んだ。海に居た時間は明日遊ぶ下見という事で一時間半ほどだ。


 赤い三角ビキニを着たラグを見て秀樹と栄二が褒めそやす。

 一時間半ほどの間に3回もナンパされたが他の男に見向きもしないラグに恒夫は一安心だ。

 ガタイのいい秀樹と背の高い栄二が傍に居たのでナンパ男も近寄りがたかったという事もある。


 菜穂は水色のワンピース水着だ。

 下見なのでおとなしめにしたと本人は言っていたが中々どうして、プロポーションがいいので色っぽい、現にラグと一緒にだがナンパされていた。


 スギナは水色のタンクトップビキニ、タンキニだ。

 2着買ったうちの始めに決めた水着である。

 美人と言うより可愛いと言った言葉がピッタリである。

 もちろん幼女体型なのでペッタンコだ。

 幼いが美人顔なのでロリなら放って置けない可愛さである。


 一時間半ほどの短時間だったので、もっと遊びたいとラグがぐずると思ったが秀樹や栄二が綺麗や可愛いと言って褒めそやした為か素直に言う事を利いて夕食の肉食べ放題へと行ってホテルに戻ってその日は終わった。


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