第百話
翌日、ダンジョンの出口に向かって歩き出す。
「後は無事にダンジョンを出るだけだぜ、頑張って行こうぜ」
最後尾の秀樹が発破を掛ける。
「一人300ポイントよ、今までのイベントの倍以上だわ」
秀樹の前を歩く菜穂もはしゃいでいる。
「難しいイベントじゃからなポイントが高いのも当たり前じゃな」
スギナと並んで歩いていたラグが首を傾げる。
「うにゅ? 難しくなかったぞ、一日目でお宝ゲットしたぞ」
「僕たちには恒夫が居たからね、恒夫が持ってるイカサマサイコロがあったから宝箱のある場所に迷わずに行けたからね、イカサマサイコロが無かったらダンジョンのマップを作りながら総当たりで宝箱を探さないとダメだから大変だよ」
後ろを歩く栄二が優しく教えてくれた。
「やっぱツネは役に立つぞ」
「うん、バカさえしなきゃいいんだけど…… 」
栄二が先頭を歩く恒夫を見つめた。
「恒夫は気が緩んだ時を狙ってバカするからな」
「役に立つけど何考えてるのかマジでわかんないわよ」
呆れ顔の秀樹の前で菜穂は軽蔑の眼差しだ。
「ツネは役に立つヘンタイだぞ」
ラグ一人だけ楽しそうな笑顔だ。
二股の分岐点に出る。
恒夫がイカサマサイコロを振った。
「出口に近い道を教えてくれ、偶数が右で奇数が左だ」
両手でおにぎりを握るようにサイコロを振るとパッと手を開く、
「4だ。偶数だから右だ」
右の通路を暫く歩くと広間に出た。
四十畳ほどの広さで壁や天井に生えたヒカリダケが黄緑色の淡い光で照らしている。
スギナが手から捜索根を出して室内を調べる。
「異常無しじゃ、デカい虫もおらんから安心せい」
「ほっとするけど安心できないわよ、小さい虫もいなけりゃいいのに…… 」
虫嫌いの菜穂が愚痴る後ろで秀樹が背負っているリュックを降ろした。
「ここで昼飯にしようぜ」
「パンと豆のスープは飽きたぞ」
文句を言いながらラグも荷物を降ろす。
「もう少しの辛抱だよ、ダンジョン出たら何でも好きなもの食べられるからさ」
「そうだぜ、我慢すればするほど美味しくなるぜ」
栄二と秀樹に宥められてラグがパッと顔を上げる。
「厭よ厭よも好きのうちってヤツだにゃ、あたいも厭だけど我慢するぞ」
「いや、それは違うと思う」
「全然違う喩えだからね、ラグさんは何でそんな事知ってるの? 」
顔を顰める秀樹の隣で栄二が真っ赤な弱り顔だ。
てきぱきと昼食の用意を始める。
秀樹とスギナが豆のスープを作り栄二と菜穂とラグがパンをトーストする。
魔法銃を握り締めて通路を見張っていた恒夫の元へラグがトーストとスープを持ってきてくれた。
「にゃんでみんなと一緒に食べないんだ? ヘンタイヘンタイ言われて拗ねたにょか? 」
心配そうに覗き込むラグの頭をポンッと叩くと恒夫が口を開く、
「怒ってないよ、見張りしてるだけだ。ラグたちが飯を作って俺は見張りだ。だからここで食うんだ。俺が見張ってるからラグたちは向こうで安心して食ってくれ、役割分担だ。ラグはリーダーで俺は見張りってわけだ」
「わかったぞ、じゃあ、あたいもここで食うぞ、それならいいよにゃ」
ニコッと可愛い笑みを見せるとラグは自分の分を取りに行った。
戻ってきたラグと二人で昼食をとる。
広間では秀樹たちが談笑しながら食べている。
食べ終わって休んでいるとスギナがすくっと立ち上がった。
「何か来おる。恒夫こっちじゃぞ! 」
「そっちかよ! 」
「にゃんだ? 」
奥の通路前で座っていた恒夫とラグがバッと駆け出した。
右の壁に向かって構えるスギナを見て秀樹と栄二が立ち上がる。
「どうしたのスギナちゃん? 」
「何が来るんだ? 」
町で買ったアクセサリーを見ていた菜穂が慌ててしまうと魔法の杖を取りだした。
「敵なの? 」
「わからん、じゃが只者ではないぞ、土の中を通ってきおる」
後ろで構える菜穂にスギナが険しい顔でこたえた。
駆けてきた恒夫がスギナの横に立つ、
「土の中かよ、ドラゴンじゃないだろうな」
「何じゃその険しい顔は? ドラゴンとか好きなんじゃろ? 」
意地悪顔で訊くスギナに恒夫が嫌そうな顔で振り向いた。
「見たいのと戦うのは別だ。後はダンジョンを出るだけなのにこんな所でドラゴンと戦うなど御免だ」
「安心したぞ、残念じゃが今向かって来ておるヤツはそこまで大きな気配ではない、獣人かオークかゴブリンなどのモンスターじゃな」
恒夫の前にラグが立つ、
「ツネは後ろだぞ、そんで来てるヤツはオークじゃないぞ、匂いしないからにゃ、ブタは土に潜っててもわかるほど臭いからにゃ」
「わかった。戦いは任せるぜ」
庇ってくれたラグの足手纏いにならないように恒夫が後ろに下がった。
秀樹が横にいた栄二に振り向く、
「栄二も後ろだ。恒夫と一緒に援護してくれ、菜穂は俺の直ぐ後ろで戦え、俺は不死身だから盾にしてくれ、上級魔法をいつでも使えるように頼んだぜ」
「了解、上級魔法はいつでもオッケーだからね」
菜穂が秀樹の直ぐ後ろに付く、一番前ではスギナとラグが横に並んで構えている。
「わかった。後ろで魔法銃使って援護するよ」
栄二が後ろに下がって恒夫と並んだ。
「ラグ、スギナちゃん……援護は任せてくれ」
呟きながら恒夫は肌身離さず持っていた無敵札を確かめるように撫でた。
四十畳ほどの広間の煉瓦作りの右壁にビシッと亀裂が走る。
「来るぞ!! 」
スギナの叫びと同時に壁が崩れていく、埃と土が舞う壁に出来た穴の中に何かが動くのが見えた。
「操蔓! 束縛樹」
「待つにゃ! ちびっ子、止めろ!! 」
ラグの大声にスギナが伸ばしていた蔓を引っ込めた。
「何じゃ? 」
スギナが振り向くとラグの目が爛々と輝いていた。
「敵じゃないぞ、秀樹たちも止めるんだぞ」
「敵でないじゃと? 」
前に向き直ったスギナの目に壁に空いた穴から出てくる獣人が見えた。
一人じゃない二人いる。
その後ろにも何かいる様子だ。
「あれは鼠の獣人だぜ」
「ほんとだわ、参加者よ」
呆気にとられる秀樹と菜穗の前で獣人が口を開いた。
「何だ? 敵じゃないな、おらたちと同じ参加者だで」
「フィフィ様ぁ~~、敵じゃないみたいだど」
もう一人の獣人が間延びした声で後ろに話し掛けた。
「よいしょっと」
2匹の鼠のような獣人の後から女エルフが出てきた。
「驚かせてごめんなさい、迷路は苦手なものだから真っ直ぐ穴を掘ってきましたの」
埃を払いながら女エルフ、フィフィがニッコリと微笑んだ。
「お主らじゃったのか」
スギナが構えを解く横でラグの輝いていた目が元に戻っていく、
「穴掘れるのか? 凄い鼠だにゃ」
2匹の鼠のような獣人がキッと怖い目でラグを睨み付けた。
「おらたちは鼠じゃねぇ、モグラだど」
「んだ、ネズ公と一緒にするんじゃねぇ、地中では最強の獣人がおらたちモグラ一族だど」
「モグラの獣人か…… 」
成る程と言うように呟いた恒夫の前でラグが大笑いする。
「にゃははははっ、一緒だぞ、お前らでっかい鼠だぞ」
モグラ獣人がその大きな手をバッと構えた。
「んだと、おらたちをバカにして只で済むと思うなよ」
「土の中でおらたちに敵うものはいないだど」
服に付いた汚れを払っていた女エルフのフィフィが手を止める。
「ベベベ、ジジジ、おやめなさい、誰が喧嘩していいと言いましたか」
「んだどもフィフィ様…… 」
振り返ったモグラ獣人をフィフィがじっと見つめる。
「おやめなさい、二度と言いませんよ」
「わかっただど、んだども…… 」
口惜しそうに前に向き直ったモグラ獣人の前に恒夫がバッと出た。
「悪い、悪かった。俺たちも謝るから許してくれ」
「鼠でもモグラでもどっちでもいいぞ、大体土の中なんかで戦ったりしないからにゃ」
「何言ってんだ謝れ! 」
バカにするラグの頭を持って下げさせる。
「にゃにすんだ…… 」
「無駄な争いは避けるのがリーダーの役目だろ」
恒夫が耳打ちするとラグの耳がピンッと立った。
「わかったぞ、悪かったぞ、謝るから許すんだぞ」
少しも悪いと思っていないムスッとした顔で謝るラグの向かいでモグラ獣人のベベベとジジジがニコッと笑顔になった。
「わかればいいだど」
「おらたちも大人げなかったど」
モグラ獣人のベベベとジジジは獣人とはいうものの人間からはかけ離れていて二本足で歩く大きな鼠といった風体だ。
全身毛むくじゃらで尻尾の名残のようなぽっちが付いている。
顔は鼠そのものだ。大きな手に鋭い爪が付いているので鼠ではなくモグラだとわかる。
二人とも殆ど同じ姿で双子のように見分けがつかない。
「行き成り出てきて吃驚させたわね」
女エルフのフィフィが秀樹たちに向き直る。
「フィフィと申します。見ての通りエルフです」
微笑みながらペコッと頭を下げると両隣のモグラ獣人を紹介する。
「この二人はベベベとジジジです。私の住む町の農場で働いている獣人です。今回ゲームに参加するのに付き添ってもらいました。私の友人です。余りからかわないでくださいね」
フィフィは肩までのマッシュルームカットに整った顔をした知的なお姉さんといった感じの女エルフだ。
少しきつめの目が恒夫好みである。
「フィフィさんか……なかなかだな」
恒夫の顔がだらしなく緩んでいる。
「ツネぇ~~ 」
ラグの怖い顔を見て恒夫がビクッと背筋を伸ばす。
「リーダーだろ、挨拶を返さないと……自己紹介だラグ」
「おおぅ、そうだぞ」
恒夫が誤魔化すとラグが猫耳を立ててフィフィに振り向いた。
「あたいはチャトラン族のラグだぞ、そんでこのチームのリーダーだぞ」
ラグが恒夫の薄い頭に手を置いた。
「そんでこのハゲがツネオだぞ、抜け毛はあるけど抜け目のない男だぞ」
「ハゲじゃねぇ! 」
ラグの手を払い除けると恒夫が続ける。
「城道恒夫です。只の人間ですが役立つ男です。フィフィさんのような美女と知り合えて嬉しく思います」
恒夫がマジ顔で格好を付ける。
フィフィの事を一目で気に入った様子だ。
「ふふふっ、恒夫さんですね、面白い人ですね」
フィフィがニコッと笑いかけると恒夫の頬が赤く染まっていく、それを見てラグがバッと恒夫の頭を掴んだ。
「浮気は毟るって言ったよにゃ? 」
「ちょっ止めろ! 浮気じゃないだろ、何もしてないだろ、俺はラグだけだからさ」
必死で言い訳する恒夫の頭にラグの指が食い込んでいく、
「ほんとだにゃ、嘘だったらマジで毟るからにゃ」
「やっ、約束するから…… 」
泣き出しそうな恒夫を見てスギナが溜息をつく、
「乳繰り合うのは後にせんか、リーダーじゃろ」
恒夫の頭から手を離すとラグがバッと前に向き直る。
「そだぞ、挨拶の途中だったぞ、んじゃ次はちびっ子の番だぞ」
「可愛いリーダーさんですね」
クルクルと態度を変えるラグを見てフィフィがクスッと笑った。
スギナがフィフィに向き直る。
「儂はスギナじゃ、種族は精霊じゃ、こんな姿じゃがお主よりも年上じゃぞ、敵でないのなら危害は加えん、互いに無駄な争いは避けたいものじゃのぅ」
柔らかい物腰だがスギナは警戒を解いていない。
横にいた秀樹がペコッと頭を下げた。
「江藤秀樹です。種族は人間です。何の力もない人間ですが神様に貰った能力とアイテムでどうにかここまで生き残って来れました」
秀樹の後ろで菜穂が会釈をする。
「緒方菜穂って言います。私も人間です。魔法使いの力を貰いました。結構強いですよ」
一番後ろにいた栄二が前に歩いてきて恒夫の横に立つ、
「僕は野方栄二です。人間です。チームではみんなのサポート役って感じですね」
栄二もフィフィの事は気に入ったのか頬を赤く染めながら会釈をした。
フィフィが改めて秀樹たちを見回した。
「人間が四人に精霊とリーダーの獣人、全部で六人のチームですか、凄いですね、人間のチームとは何度かイベントで会いましたが落ち着きがなかったり焦っていたり、とても勝ち抜ける様には見えませんでしたが秀樹さんたちは違うようですね、自信に満ちた顔をしていますわ」
大袈裟に驚くフィフィを見てラグが偉そうに胸を張る。
「当たり前だぞ、あたいがリーダーだからにゃ、勝てるチームだぞ、このイベントだってもうクリアするぞ、宝玉は見つけたからにゃ、後はダンジョン出るだけだぞ」
「ラグ! 」
しまったという顔をして恒夫とスギナが同時に名を呼んだ。
フィフィの目がギラッと光った。
「宝玉を見つけたのですか? 」
「そだぞ…… 」
「ラグ! ダメだって」
恒夫が後ろからラグの口を押さえた。
「にゃっ、にゃにすんだ! 」
怒るラグの耳元に恒夫が口を近付ける。
「他のチームに宝玉の事は迂闊に話すな、余計な争いはしたくない」
「うにゅ、わかったぞ」
ラグが頷くと恒夫が手を離す。
じっと二人を見ていたフィフィが口を開いた。
「嘘ではないようですね、見せて貰えませんか、私たちはまだなので参考にさせてくださいな」
ニッコリと微笑むフィフィの前にスギナが出る。
「参考にはならんぞ、イベント前の説明で天使が見せてくれたものと同じじゃからな、それに盗まれんように隠しておるから簡単には出せんのじゃ、じゃから見せられん悪いのぅ」
「ごめんな、俺たちはもう行くから、この部屋で飯食ってただけだからさ」
愛想笑いをすると恒夫が秀樹に振り向いた。
「休みは終わりだ。早く行こうぜ」
「ああ、そうだな」
「ゆっくり休めたし、そろそろ行きましょうか? 」
「そうだね、もう少しだから頑張ろう」
何となく嫌な空気を感じたのか秀樹だけでなく菜穂や栄二も慌てて荷物を片付け始めた。
「そう言わずに一目だけでも見せて貰えませんか? 」
フィフィの両脇にいたモグラ獣人のベベベとジジジがサッと動いた。
「フィフィ様が見せてくれと仰ってるだど」
秀樹たちを囲んで右に回ったベベベが大きな手を構えた。
「高貴なフィフィ様の頼みを断るなんて失礼だど」
左に回ったジジジが大きな手から爪を伸ばした。
ジジジから庇うように恒夫の前にラグが出る。
「にゃんだお前ら? あたいとやるつもりか? 鼠が猫に敵うわけにゃいぞ」
「ラグ、挑発するな」
後ろで止める恒夫も魔法銃を握り締めている。
反対側で秀樹がベベベを睨み付けた。
「何の真似だ? 6対3だぜ」
「そうよ、人間だからって嘗めると痛い目に遭うわよ」
後ろで菜穂が魔法の杖を構えた。
「こんなとこで僕たちが争っても仕方ないでしょ、止めようよフィフィさん、僕たちに構うより宝箱を探した方がいいよ」
必死で訴えかける栄二にフィフィが妖艶な笑みを向ける。
「フフフフフッ、何もしないわよ、宝玉が見たいだけ、だから見せて頂戴な」
「見せるだけなら構わん、じゃが次はくれと言うのじゃろう? 」
険しい顔のスギナに振り返るとフィフィが続ける。
「私、迷路は苦手なの、方向音痴なのよ、それでベベベとジジジに付き添ってもらったのよ、二人が居れば壁も岩も鉄でさえ関係無しに進めますから、これで迷う事はないって思っていたのに今回は宝玉を探さないとダメでしょ? ゴールするだけなら簡単なのに……それで手当たり次第に穴を掘って宝箱を探したわ、三つも見つけたのに全てハズレ、服も汚れるし困っていたのよ」
フィフィの顔から笑みが消えた。
「でも良かったわ、貴方たちに会えて…… 」
バッとラグに飛び掛かる。
「振動波! 」
「にゃ! ふびゅ! 」
短い悲鳴を上げてラグが床に転がった。
「ラグ!! 」
恒夫が慌ててラグに駆け寄る。
「ラグちゃん! 」
「ラグが…… 」
心配そうな秀樹と菜穗の前でベベベがニヤッと口元を歪ませた。
「動くな、動くと後ろからでも攻撃するだで」
「なっ、てめぇ! 」
秀樹が魔法の杖を構える。
既に構えている菜穂も直ぐには攻撃しない。
二人ともラグの事が心配なのだ。
恒夫の横にいた栄二がジジジの前に立つ、
「恒夫、ラグさんは大丈夫なの? 」
ジジジに魔法銃を向けながら心配そうに訊いた。
「お主は下がっておれ栄二、こやつら遣りおるぞ」
三人を庇うようにスギナがバッと前に出る。
「お主、何をしておる? 」
険しい顔のスギナの前でフィフィがラグのリュックをまさぐっていた。
「入ってないわ、宝玉は何処なの? リーダーが持ってるんじゃなかったの? 」
「いつの間に……俊足じゃな、ラグでも避けられんスピードか、厄介じゃのぅ」
リュックを放り捨てるフィフィを見てスギナが益々顔を顰める。
「御明察、私はエルフの中でも足の速い種族なのよ、神様に俊足を貰って更に速くなった。そこらの獣人など追いつけないくらいにね」
ニッコリと笑いながらフィフィが続ける。
「そしてスピードを生かした攻撃が得意なのよ」
目の前に居たフィフィが消えた。
スギナがバッと左に跳んだ。
「やるうぅ~~ 」
先程までスギナがいた辺りにフィフィがバッと現われた。
ボコッ! 床が音を立てて抉れるように崩れていく、
「なんじゃ? それがお主の攻撃か? 」
「私の振動波を避けるなんてやるわねお嬢ちゃん」
にこやかに笑っているがフィフィのその目は笑っていない。
「嘗めるな、この程度の攻撃など儂でなくともラグでも避けられるぞ、さっきは隙を付かれたからやられただけじゃぞ」
フィフィに注意を向けながらスギナが横目で恒夫を見る。
「どうじゃ? 」
「ラグは大丈夫だ。気絶してるだけだ」
恒夫の体が白く光っているのを見てスギナがほっと安堵した。
フィフィの顔から笑みが消えた。
「気絶? そんなバカな! 脳に振動波を送って破壊したはずよ」
驚くフィフィを見てスギナがニヤッと意地悪に笑う、
「残念じゃったな、儂と恒夫がついておる。そう簡単に仲間を死なせはせんぞ」
「くそっ、厄介な獣人を先に倒したはずなのに…… 」
フィフィの姿がまた消えた。
「繰蔓! 蔓垣」
スギナが両手を床につける。
直ぐに床を割って植物の蔓が幾つも絡むように生えてきた。
「なにっ! ヤバっ! 」
大きな蔓の前にフィフィがパッと姿を現わした。
「捕まえ損なったか」
ニヤッと笑いながらスギナが呟いた。
「植物を操る力ね、恐ろしい、もう一寸で捕まる所だったわ」
「お主がラグを襲う事などお見通しじゃ、儂の目が黒いうちは好き勝手できんと思え」
恒夫たちとスギナの間に植物の蔓で出来た垣根が床から生えるように立っていた。
「こんな草など振動波で」
フィフィがサッと左手を振った。
バサッと音を立てて垣根に大穴が空くが直ぐに蔓が伸びて塞いでしまう、
「無駄じゃ、儂を倒さんと垣根は越えられんぞ、不用意に近付けば捕まるだけじゃ、今なら見逃してやる。モグラを連れてとっとと消えろ」
ニヤッと楽しそうに笑うスギナをフィフィが睨み付けた。




