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29/62

【29】

救出隊を乗せた馬車は一路、聖天騎士団の駐屯地へと向かっている。

急げば、到着される前に補足出来る可能性は高かったのだが、

道中で一戦交えると人質である"子供"達や潮に危害が及ぶことも考えられる。

駐屯地で騎士団を取り囲み、人質と分断してから降伏を促すか、

もしくは殲滅するという作戦になった。


クロニクル・オブ・スカンディナビアの交通手段は"基本的"には馬車を使った移動が主となる。

ゲーム時代は、馬車に乗り目的地を選択すれば即座に転移する仕様だったので

特に不満を口にするプレイヤーはいなかったが、

取り込まれたこの世界ではもちろん違う。

拙い舗装の道を馬車に揺られ移動しなければいけない。


パルムは馬車を二台用意してくれた。

それぞれには、馬を走らせるための従者一名と四名のプレイヤーが乗っている。


マコトと同乗しているのは《ソード&ローゼズ》ゼロスと《倶利伽羅》桜。

そして、"人型モンスター"が一匹。

もう一方の馬車には、《廃人倶楽部》、《スワロウテイル》、《M-BOX》、《宵闇の疾風》から各一名、の計四名。


《カーペンター組合》は今回のクエストを辞退した。

元々、武闘派ギルドではなかったが、報酬のために仕方なしの参加だった。

が、関所を建設するという案が浮上したため、こちらへとシフトした。

今頃、下準備に奔走しているはずだ。



会議のあと、準備のために一旦解散した。


「マコト…。俺は行かないぞ」


二人は羽根を使うため、人目の届かない場所を探していた。


「了解。…というかそのつもりだった」


「一人で行くのか?」


「いいや、ユウゴを連れて行く」


「妥当だな。俺は"例の件"でも調べておくさ……」


「ああ、頼む…」




「ええっ!潮さんがさらわれた!?」


案の定、潮のことを伝えると、激しく取り乱した。

ユウゴと潮は、マコト達に出会う前からの付き合いだった。


さらわれた経緯を説明する。


「何をのんびりしてるんだよ、マコちん!早く助けに行こうっ!!」


「ああ、そのことなんだがな……」


ユウゴは見知らぬプレイヤーを極端に避ける傾向がある。

それを知っていたため、ギルド間の共同クエストという説明は後回しにした。


「この何日かでわかったと思うが、やはり四人で何かをするには限界がある。特に情報面で」


「…うん」


「ちょうどいい機会だと思ってな…」


「……」


「ユウゴ…どうだ?そろそろ街を拠点にするってのは……」


「……マコちんに任せるよ」


「ダメだ、ユウゴ。お前の意見を聞きたい」


マコトは真っ直ぐにユウゴを見つめる。


「……」


「別に正体をバラせ、と言っているわけじゃない」


「……」


「そりゃあ、バレるリスクは増える。しかしなぁ…これはタケも同意見だが、仮にバレたとしてもデメリットは少ないと考えている」


「…どういうこと?」


「今はやめておこう。時間がない」


「そうだね…」


「…どうする?」


「わかった、ボクも行くよ。潮さんのためだ」


「よし!とにもかくにも、まずは潮さんを助けてからだ」


マコトは、ユウゴの殻を一つ破った。

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