【29】
救出隊を乗せた馬車は一路、聖天騎士団の駐屯地へと向かっている。
急げば、到着される前に補足出来る可能性は高かったのだが、
道中で一戦交えると人質である"子供"達や潮に危害が及ぶことも考えられる。
駐屯地で騎士団を取り囲み、人質と分断してから降伏を促すか、
もしくは殲滅するという作戦になった。
クロニクル・オブ・スカンディナビアの交通手段は"基本的"には馬車を使った移動が主となる。
ゲーム時代は、馬車に乗り目的地を選択すれば即座に転移する仕様だったので
特に不満を口にするプレイヤーはいなかったが、
取り込まれたこの世界ではもちろん違う。
拙い舗装の道を馬車に揺られ移動しなければいけない。
パルムは馬車を二台用意してくれた。
それぞれには、馬を走らせるための従者一名と四名のプレイヤーが乗っている。
マコトと同乗しているのは《ソード&ローゼズ》ゼロスと《倶利伽羅》桜。
そして、"人型モンスター"が一匹。
もう一方の馬車には、《廃人倶楽部》、《スワロウテイル》、《M-BOX》、《宵闇の疾風》から各一名、の計四名。
《カーペンター組合》は今回のクエストを辞退した。
元々、武闘派ギルドではなかったが、報酬のために仕方なしの参加だった。
が、関所を建設するという案が浮上したため、こちらへとシフトした。
今頃、下準備に奔走しているはずだ。
会議のあと、準備のために一旦解散した。
「マコト…。俺は行かないぞ」
二人は羽根を使うため、人目の届かない場所を探していた。
「了解。…というかそのつもりだった」
「一人で行くのか?」
「いいや、ユウゴを連れて行く」
「妥当だな。俺は"例の件"でも調べておくさ……」
「ああ、頼む…」
「ええっ!潮さんがさらわれた!?」
案の定、潮のことを伝えると、激しく取り乱した。
ユウゴと潮は、マコト達に出会う前からの付き合いだった。
さらわれた経緯を説明する。
「何をのんびりしてるんだよ、マコちん!早く助けに行こうっ!!」
「ああ、そのことなんだがな……」
ユウゴは見知らぬプレイヤーを極端に避ける傾向がある。
それを知っていたため、ギルド間の共同クエストという説明は後回しにした。
「この何日かでわかったと思うが、やはり四人で何かをするには限界がある。特に情報面で」
「…うん」
「ちょうどいい機会だと思ってな…」
「……」
「ユウゴ…どうだ?そろそろ街を拠点にするってのは……」
「……マコちんに任せるよ」
「ダメだ、ユウゴ。お前の意見を聞きたい」
マコトは真っ直ぐにユウゴを見つめる。
「……」
「別に正体をバラせ、と言っているわけじゃない」
「……」
「そりゃあ、バレるリスクは増える。しかしなぁ…これはタケも同意見だが、仮にバレたとしてもデメリットは少ないと考えている」
「…どういうこと?」
「今はやめておこう。時間がない」
「そうだね…」
「…どうする?」
「わかった、ボクも行くよ。潮さんのためだ」
「よし!とにもかくにも、まずは潮さんを助けてからだ」
マコトは、ユウゴの殻を一つ破った。




