Eps.032 月光
第一章最後のお話!
昨日第31話を投稿しております……!
また、第29話の内容もかなり含まれますので、未読の方は是非そちらからお読みくださいませ✨️
「だからもう少し、そばにいてくれませんか」
少し震えた声で発されたその言葉は、どうもその言葉以上の重みがあるように思えて。
少しだけ僕は僕は答えに窮した。
答えは間違いなく「うん、いるよ」なのだけど。
でもその一言は、すごく重い一言なのだろうと何となく予感していたから。
「うん、そばにいるよ」
勇気を出して、というよりは腹を括って僕は伝える。
「……ありがとう」
安心したように彼女は僕を見上げて少し頷き、正面の椅子に戻った。
少しだけ彼女は息をついてそれからゆっくりと口を開く。
「ほんとは、はじめに話そうと思ってたんだけど」
彼女は少し困ったように笑いながら言った。
思い返してみると、それはたぶん僕のせいだ。
あの時泣いてしまったから彼女なりの予定が狂ったんだろう。
……非常に申し訳ない。
「大輝くんにもね、昔のこと、ちゃんと伝えとこうと思って」
そう言い出す彼女に僕は少し驚いた。
ずっと僕は言いたくないんだろうと思っていたから。
そしてまた僕も、触れてはいけないんだろうと思っていたから。
「聞いてくれる……?」
不安そうに聞く彼女に、僕は素直に「聞かせてほしい」と答えると、少し安心したように小夜は表情を緩めてありがとう、と呟いた。
途中苦しそうな顔をしながらも、彼女はこれまでにあったことをずいぶんと丁寧に話してくれた。
小学校のこと、中学校のこと、高校のこと。
そして、去年のこと。
小学校の話はなんとなく知っていた、というより見ていて予想がついていたから別にさして驚きはしなかったが、彼女の口から直接どう思っていたかを知るのは初めてだったので新鮮な気持ちだった。
中学校と高校の話になってくるとほとんど知らないことばかりだったので、かなり驚かされる。
小夜の言う「綺麗な瞳」というのは彼女なりに大きな意味があったんだな、とその話を聞いて今更に理解した。
僕は多分好奇の目で彼女を見たりはしないから。
そんな目で見られることが、ずっと彼女としては嫌だったんだろう。
自分を見てもらえない感覚。
そしてそれは本質的に誰からも愛されていない感覚だったのかもしれない。
ずっと人と距離をとっていた彼女にとって、尚更それは彼女の孤独を深めたことだろう。
ストーカーの話も、初めて全貌を聞いたが随分と生々しくて、そりゃあんな反応になるだろうという感じだ。
またあの人に会うかと思うと、家を出れないのも仕方がない。
「町中で会うなんて、思ってなかった」
うんうん、と僕は頷く。
「そりゃ考えたことはあったけど、あくまで可能性の話だった。だから、ほんとに会うなんて」
「そうだよね」
「今でもね、やっぱり怖い。大輝くんだから、家では会えるけど、外に出るのは怖い」
そう言う彼女は怯えた様子で、少し震えているのがわかる。
どうしたらいいんだろうね、と寂しそうに零す小夜を見て、僕はまたできることを、と思ったけれど。
きっとできることなんて。
「これからはさ、もう少し小夜のそばにいるよ」
少し驚いたように彼女は僕の目を見た。
さっきの小夜の言葉は多分そういう意図ではなかったんだろうけど。
きっともう少し長く、というか。
もっと言えばこれからも、というか。
今の過去の話を聞くに多分そういうことだと思う。
孤独に耐えてここまで生きてきた彼女にとって、それが重いことなのもわかる。
きっと僕が小夜の立場なら、当然離れないでいてほしいと思うだろう。
だから僕は腹を括っているよって言った、んだけど。
「小夜が外に出るとき、できるだけ僕が隣にいる。何かあったら僕が守れるように。ボディガードみたいなさ」
それで彼女が出られるのかはわからないけれど。
役に立てるとすればきっとそういうことだろう。
「ほんとに、いいの……?」
「うん、もちろん」
僕は力強く肯定すると、小夜はまた目を潤めだしてしまった。
いつもなら頭を撫でているところだが、まだ僕の方から触れるのは随分と考えものな気がした。
まだ怖いかもしれないし、何かを思い出すかもしれないし。
そうやって僕が迷っていると、彼女は机のうえに置いていた僕の手を握って、儚げに笑った。
「やっぱり、太陽みたいな人だね」
太陽みたいな、人……?
「ありがとう……?」
困ったように僕が言うと、可笑しそうに小夜は笑ってその手を彼女の頭に乗せた。
「撫でてくれて、大丈夫。というか、撫でて」
甘えたように僕を見つめる彼女に、僕は気を許していいのか凄く悩んだけれど、ただ彼女の言うとおりに頭を撫でる。
気を許してしまうと、気を抜いて嫌なことをしてしまいそうで、少し怖い。
タイミング悪く髪とか撫でてしまいそうだ。
言われた時だけ、言われた時だけ、と自分に言い聞かせつつも彼女の頭をできるだけ優しく撫で続けた。
「頑張れる、気がする」
頭を撫で終えると、彼女は立ち上がって自分を奮い立たせるようにそう呟いた。
「大学は多分、会うことないからいいんだけど、それ以外のときは、ごめん、そばにいてほしい」
「うん、わかった」
「無理なときは、咲良ちゃんに頼るから。ほんとにごめんね」
「大丈夫だよ」
謝ることじゃないって、といいながら気を抜いて髪に手を伸ばしそうになるこの手に、僕はもう少し気を引き締めなければと思った。
気を抜いているわけじゃないけど、妙に安心してしまって。
そんな言い訳を心の中でつぶやきつつ、気づけば小夜がベランダに歩いていくのが目に入る。
「ベランダ行くの?」
「うん、お月さま綺麗だよ」
そういって彼女はベランダのドアを開けてみせた。
梅雨に入りかけの少し湿った生温かい風が部屋に入る。
外はもうすっかり暗くなっていて確かに月が空に昇っていた。
「6月の満月は、ストロベリームーンって、言うんだって。まだもう少し、先だけどね」
嬉しそうに月を眺める彼女の口元は緩んでいて、少しだけ安心する。
月明かりに照らされて、部屋の中よりも一層彼女が綺麗に見えた。
「ほんとに月、綺麗だね」
「うん、綺麗」
そういって彼女はぼんやりと月を眺めたあと、ん?と首を傾げてから「もしかして、告白だったりする……?」と真顔で聞いてきた。
……。
いや違うけど、さすがにそんな言い方されると恥ずかしいんですけど。
月が綺麗だと思ったのも、彼女が月に照らされてるのを見て、という理由なので一層。
「ううん、残念ながら」
なんとか適当に返すと、彼女はまた可笑しそうにクスリと笑って、「それは残念だね〜」と僕の腕をつついてみせた。
また笑顔が見れてよかった。
こんなそばにいれてよかった。
月明かりに照らされる彼女の横顔は心なしかほんのり苺色に膨らんでいた。
第一章完結なのです!(๑•̀ㅂ•́)و✧
長かった、なのか、お待たせしました、なのか。
投稿間隔が随分空いてしまったせいでお待たせしたのは間違いないのですが……、本当にすみません。
はっきり書かずにぼかして書くクセがあるので、そこらへんは伏線としてちゃんと続きで回収していきます。
第一章が終わったから、やっと二人がイチャイチャしてるのが書ける(こちらの都合)ので、その面も楽しみにしていただけたら✨️
そして次のお話は早くも明日投稿予定です!(万一、明後日になったら申し訳ない……)
ということで、これからさらに甘くなる『幼馴染が、儚くて、ミステリアス。』を何卒宜しくお願い致します!




