Eps.033 おかえり
第二章開幕!!
引き続きよろしくお願いします!
「ほんで、最近は大学にも行けてるんか」
「うんうん、ほんとによかった」
「それにしても、詳しい話は聞いてないけど大変やなぁ……」
優真は「世の中理不尽や……」と言いながらやれやれと首を振ってみせる。
ーーお昼休み。
午前の授業が終わり、食堂でまた三色丼を頬張りながら僕らは話していた。
あれから、小夜は少しずつ大学に来ることができるようになった。
行き帰りは僕が付き添っているし、大学内では咲良がいてくれている。
日常的な買い出しなんかも僕が代わりに行ったり一緒に行ったり。
「それにしても、大学の勉強は大丈夫なんか」
「大学の勉強……?」
「いや3週間くらい休んでたやろ、授業追いつかれへんのちゃん」
確かに。
それこそ先週とかは人に会えないだけで比較的元気そうではあったので、勉強しているという話も聞いていたが……。
よく考えればこの期間は結構大変なのではないか。
「咲良さんから何か聞いてないの?」
彼氏に遠慮して咲良さんと言ってみたり。
別にそんな配慮いらないだろうけど。
「あ〜、今週末は小夜ちゃんと会うから!とは言ってたな。俺はお呼びじゃないらしい」
冗談めかして肩をすくめる彼は非常に関西人って感じがする。
まあ、本人には悪いがお呼びじゃないのも致し方ないことだろう。
親友の彼氏とは言え、まだ男子が怖い彼女にとってわざわざ初めましての人にこの時期会うのはなかなか憚られるに違いない。
ん、てか僕は……?
別に一つしか授業被ってないけど僕はお呼びじゃないのか?
いや別にいいんだけど。うん。
唐突にそんな事を思いつつ、別にそんな関係でもなかったことを思い出して僕は考えるのをやめた。
なんか、ずっと一緒にいるから感覚がバグるのだ。
朝も帰りも一緒にいて、時には買い物も一緒で。
「それにしてもカップルみたいよな。しゃーないけど」
そんな僕の思考を見透かしたように、……いやきっとたまたまだろうけど、優真はからかうように言った。
ただ僕にはあまりにタイミングが悪くて、むぅーと口を噤む。
「なんや、意識でもしてるんか」
別に本気で受け取られるとは思ってなかったとでも言いたげな驚いた顔で優真は僕に尋ねる。
いや、別にそういうわけじゃないんだけど。
「意識はしてない、けど。なんか最近ずっと一緒にいるのはそうだよね」
「まあまあ大輝がおるなら小夜ちゃんも幸せやろうからええんちゃうか」
あんま変に気にすんなよと優真は僕の机を蹴りつつ、屈託のない笑顔で笑ってみせた。
まあ、それならいいか。
あんまり距離が近すぎても他の人に誤解を与えるだろうし。
なるべく、ほどほどの距離を保とうと決意するのであった。
ーーーーーーーーーーー
「おまたせ」
きゅっと袖を引かれる感覚とともに、大学の正門で待っていた僕に聞き馴染みのある声がする。
振り返らなくともわかる声の主だけれど、その声が聞けるということが僕にとってはすごく幸せなことのように思えた。
「お疲れ様」
「うん、お疲れ」
優しくはにかむ少女は早くここから離れるよと言わんばかりに、くるりと前を向いてはすたすたと僕の前を歩いていく。
優真と話した日の夕方の、少しずつ日常となりだした帰り道だ。
「今日は買い物よらなくていいの?」
「うーん、行ってもいい、けど」
「どうしたの?」
「つかれた〜〜」
なんだこの幼馴染は。
いつもの、というか外での様子を見ていると、すごくしっかり者に見えるのだけれど。
僕と二人でいるとこうも小夜はお気楽な様子だ。
しかも、心なしか最近のほうが甘えきっている気がするし。
彼女の心の拠り所になれているのならそれはそれでいいとは思いつつ、あんまり甘えられるのも、……距離が近くて心臓に悪い。
「買い物あるなら僕が代わりに行こうか?」
「え、やだ。一緒に行こ」
……なんだこの幼馴染は。
疲れているなら休ませてあげようと思ったのに。
この前までこんなんだったっけ。
「危ないかもでしょ?いてくれないと」
「うん……、そうだね」
部屋にいれば安全だとは思うが……。
ここはオートロックだし。
ん、というかだから彼女はこのマンションが良かったのか。
今更ながらに彼女がオートロックに喜んでいたことを思い出す。
そう思うと非常に複雑な心境でしかないが、まあいい。
近くにいてくれることに越したことはないし。
「じゃあ、少し休んだら一緒に行こうか」
「うん。ありがと」
そういって彼女は僕の小指をぎゅっと握りながらマンションの中に僕を連れ込んでいった。
ーーーーーーーーーーー
「買い物疲れたーー」
「お疲れ様」
買い物から帰った僕らは荷物を置いて、僕はソファーに座り込む。
小夜はなぜかウロウロと僕の周りを歩いているが。
「今日はご飯、一緒に食べよっか」
「あぁ、ありがとう。助かる」
前よりも随分自炊スキルはついたような気がするが、未だに料理に慣れる気配はない。
野菜を炒めればいいだけの野菜炒めとコメと、スーパーの安い総菜とレトルトのお味噌汁。
これらさえあれば十分食事になってしまうのだから、あまり凝ったものを作る気も起きないのだ。
野菜も摂れて一石二鳥。
「だって、ほっとくと、野菜炒めばっかり。もうちょい色んなもの、たべよ」
僕の頭をぽんぽんと叩きながら、仕方ないやつめとドヤ顔をしてソファーに座った僕を見下した。
買い物は小夜のものが中心だったが、とりあえず僕の家で休みたいと言い出して、いまここにいる。
疲れたから、私も、座る、と僕の座る位置をぐいぐいとずらした彼女はもたれかかるようにして僕に座った。
ほんとに、距離近いなぁ……。
事情を知ってしまった今ならなおさら、本当にいいのか心配になる。
それだけ僕が特別だと言われても難しいところだ。
あの日から徐々に詰められて行った距離は今や元の距離を通り越して、さらに一層近くなった。
そんな複雑な心境を抱えつつも隣で頭を差し出す少女に手を伸ばさずにはいられない。
「頭なでるの、うまいよね」
「ん、そうなの……?」
ほかの人の頭なんて撫でたことないからわからない。
とはいえ小さい頃から小夜のことはずっと撫でているから、上手いとしたらきっとそのせいだ。
「うん、落ち着く」
気持ちよさそうに撫でられている彼女は、脱力したように僕の太ももに崩れ落ちた。
「ただいまって感じだね」
「ただいま……?」
「こうやって、また会えて。そして色々あったけど、またこうやって、日常に帰ってこれて」
「そう、だね」
色々と思い出すことがたくさんあって込み上げるものがあった。
「私の居場所は、ずっと君の隣なんだと、思う」
「ありがとう。そばでいれるように、頑張るよ」
「うん、ありがとう」
甘えきった彼女は僕を見上げ、蕩けた目をしながら大切そうに言葉を声にする。
「おかえり、小夜」
「ただいま、大輝くん」
気持ちよさそうにまた目を瞑った彼女はしばらくそのまま撫でられているのだった。
ギャップがすごいな。
急に甘くなった……。
少しずつ近づいていく2人をこれからもお見守りいただけると嬉しいです……!✨️
次回第34話は水曜夜更新予定!
宜しくお願い致しますm(_ _;)m




