Eps.031 陽光
大変長らくお待たせしました……!
(1週間も空いてしまった、申し訳ない……)
第32話は明日の23:10頃に更新予定です!
いきなり翌日ですが、何卒宜しくお願い致しますm(_ _;)m
朝、太陽の光が部屋に注いで目が覚める。
僕はゆっくりと起き上がってはスマホを確認し、身支度を始めた。
『おはよう、予定通り会えそうだよ』
ーー昨日、小夜に呼ばれた。
縫いぐるみを渡してから数日が経ち、それと関係があるのかないのか、彼女曰く少しずつ回復傾向にあるらしい。
本人からは毎朝体調を知らせる連絡が届いていた。
そして、今日来た連絡がさっきの一言。
昨日になって突然会いたいと言われたときは驚いたけれど、彼女が望むことなのであれば叶えるべきだろう。
もし結局会えなさそうなら、その時諦めたらいい。
それはそれとして、僕も暫く会えていない彼女のことがやっぱり心配だったし、顔を見たいのも間違いない。
あんなにずっと会えていなかったのに、この数ヶ月でそばにいることが普通になってしまったなと、少し心境の変化を感じてなんだかこそばゆかった。
身支度を済まし、家を出る。
鍵を閉めて数歩歩いたらそこには目的の家があった。
少し震えた手を伸ばしインターフォン鳴らす。
ープツン。
ピンポーンという音がして数秒後、インターフォンが切れた時の独特の音が聞こえた。
いつものように「はーい」とか、返事が来るかなとも期待していたけれど、そう上手くは行かないらしい。
カメラが付いているタイプだから、向こうに僕の姿は見えているはずだ。
声が出せなくかったのか、やっぱり会えないと思ったのか。
余計な心配がぐるぐると僕の頭を過っていく。
中からの音もインターフォンからの音も何も聞こえないまま一分ほど時間が経ってガチャリと解錠音が聞こえた。
そのままドアが空いて、隙間から見慣れた顔が覗く。
見慣れた顔、といってもたくさん泣いたのだろうか、目が少し赤くなっているような気がする。
「お久しぶり、入って」
「ありがとう」
普段のように部屋に招き入れる彼女はこれといって様子に違いはない。
いつも大人しいタイプだから、少し静かな気はするけれどこれといった違和感でもない。
遠目から見た彼女の身体も、何も食べず痩せ細ってなんてことはなく幸いにもあまり見た目は変わっていなかった。
ーまあ、元から痩せているからもう少し食べて欲しいことに変わりはないが。
部屋に入ると、そこは前に見た可愛らしい小綺麗な様子のままで、そのまま椅子に座るよう促される。
「ハーブティー、淹れるから、待ってて」
ハーブティー……?
そのままじっと座って待っていると、カチャカチャとキッチンから音が聞こえて、その音が止んですぐ小夜が出てきた。
「どうぞ、お待たせ」
「ありがとう」
少し重い空気の中、ハーブティーの柔らかい匂いが鼻に入る。
「いい匂いでしょ」
「うんうん」
「咲良ちゃんがね、くれたの」
ほう、そうだったのか。
「リラックスできて、いいよね」
そう言って正面に座った少女はいつものように柔らかく笑った。
それはとても、優しい笑顔だった。
しばらくぶりに見た懐かしい顔だった。
まるでこの数週間が嘘だったみたいな、昨日も変わらず元気だったみたいな、そんな幻想を夢見させる顔だった。
「……うん」
「……なんで君が泣くのさ」
ハーブティーのカップに添えた右手に冷たい滴が落ちる。
僕はただそれを誤魔化すこともできずに、またぽたぽたと零れ落ちる涙を自分の腕で受け止めた。
そんな僕を見て、彼女は椅子から立ち上がり僕の隣にしゃがみ込んだ。
「ほら、大丈夫だよ」
彼女はポケットからハンカチを取り出して僕の腕を拭いてくれる。
そして優しく頭を撫でながら、泣いている子供をあやすように温かい目で僕を見つめていた。
どうして僕が泣いているのか。
ほんとはもっと僕がちゃんとして小夜のそばにいないといけないんじゃないんだろうか。
そんな事を思っても中々この涙は止まらない。
ぼやけた視界のなかで彼女も少し泣いているように見えた。
ずっと頭を撫でられて少ししてから、やっと僕は泣き止む。
「泣いて、ごめん」
自分の涙をハンカチで拭う彼女に僕は謝る。
ずっと何もできない無力感に襲われながら苦しむ君を救えなくて。
それでも君は強かにこうやってまた笑顔を見せてくれて。
そんな、後悔と安堵の混じった涙だった。
「こちらこそ、泣かせてごめんね」
「別に小夜のせいじゃ……」
「……それなら、泣いてくれてありがとう、なのかな」
そう言って彼女は立ち上がり、座ったままの僕に抱きついた。
「大輝くんがね、縫いぐるみをくれて、ほっとするから抱きしめてたんだけどね」
うんうん、と僕は相づちを打つ。
抱きつきながら喋らなくても、と思いつつ、それくらい僕に近寄れるようになったのだから離すのもお門違いな気がして、されるがままにしておいた。
「安心するなと思ってたら、匂いかなって思って」
まあもちろん縫いぐるみの感触もあるんだろうけど、と彼女はつぶやきつつ、話を続けた。
「よく夢で大輝くんを見てて、今なら近づける気がするって、近づいてみたの。そしたら近づけたから。なら、現実でも会えそうだなって」
な、なるほど……?
言っていることがわかるようなわからないような。
「夢でもさ、最近はこうしてたから」
小夜の夢の記憶はしらないが、別に僕もこの姿勢には覚えがあった。
久しぶりに会った夏の日もこうやって彼女は飛びついてきたのだ。
あの時も変な姿勢をするなと思ったから間違いない。
「あのぬいぐるみはね、お日様みたいな匂いがするの」
話を変えた彼女は一層強く僕を抱きしめた。
「大輝くんも、お日様みたいな匂いがしてね」
そう言って彼女は手を緩め、抱きつくのをやめては少し離れ、嬉しそうに目を輝かせながら瞳を覗き込むようにして僕を見つめる。
「瞳、綺麗だね」
至近距離で呟く彼女からは少し甘い匂いがした。
「だからね、近づけたし、元気になれた。大輝くんのおかげだよ」
「ん、ありがとう」
いきなり僕のおかげと言われてすぐには飲み込めなかったけれど、落ち着いて考えてみればもしかするとこれは僕の狙い通りにいったのかもしれない。
すごく稚拙なものだったけど、僕には僕のできることができたのかも。
そんな事を思って彼女を見つめると瞳の端っこに涙が溜まっているのが見える。
それは彼女が目を閉じた瞬間に目からこぼれ落ちてしまって、床に水滴が落ちる。
「夢でも、助けられていたんだけど。また、君に、助けられたね」
うむ。そう、なのか。
助けられていたなら、本当に、よかった。
「だから、心配してくれて、私のために頑張ってくれて、ありがとう。……ただただ私は、それが嬉しい。貴方に何度も助けてもらって、そばにいてくれて」
小夜の頬にはまだ涙が流れていたけれど。
彼女は優しく笑って僕を見つめていた。
「だからもう少し、そばにいてくれませんか」
ちなみに小夜の過去編は次のお話で終わる予定で、今のところはそこまでが第一章のつもりなのです。
最後まで是非見届けてくださいませm(_ _;)m
(本編はまだまだ続くのでこれからもお願いします!)




