Eps.030 再会
予定より遅くなりすみません!m(_ _;)m
&いつもより長くなってしまい申し訳ないです……。
小夜過去編の山場を無事描き終えることができました。是非是非お読み頂けると幸いです……!
また、このお話は前話の続きからとなっております!
下のあらすじは前話の一部のみなので、未読の方は是非前話からご覧ください。
(前話「***」以降のあらすじ)
小さな頃から好奇の目で見られることを疎ましく思っていた小夜は、大学1年生のとある夏の日、バイト先の男の先輩に家まで押しかけられる。その後、家を飛び出した彼女はひとまず駅前のホテルに泊まり、夜を明かすことにした。
朝になった。
チェックアウトの時間になり、私はホテルから追い出される。
よく考えれば服も着替えたいし、やっぱり一度家に帰るべきだろうか。
一人で帰るのは流石に恐怖が勝る。
とはいえ、どうせいつか帰らないといけないし……。
非常に申し訳ないとは思いつつ、咲良ちゃんに連絡してみよう、とやっとこのとき決心がついた。
ー咲良ちゃんはすぐに迎えに来てくれた。
前に何度かストーカーの話はしていたし、あまり詳しく説明しなくても彼女は私に寄り添ってくれて、いい友達を持ったと少し心が温まる。
「お昼以降は私、予定があって。一人で大丈夫そう?」
「うん。けど、どうしようかな」
予定があるなら引き止めるのは悪い、というかできないし、かと言って家に居たくはない。
こういうとき、実家があればよかったんだろうけど、私の両親は半年前に他界してしまったし、近場で唯一頼れる父方の祖父も今は入院中だ。
母方の祖父母は北海道にいるので、会いに行くにはハードルが高い。あくまで最終手段になる。
そんなとき、ふと今朝見た夢を思い出した。
ー電車の中で彼に会う夢。
おぼろげな記憶だがそんな夢だったのは間違いない。
あんなことがあった翌日なのに、起きてすぐ少しだけ頑張れる気がしたのはこの夢のおかげだ。
沈黙が続く中、ただ私の言葉の続きを待つように、咲良ちゃんは優しく私を見つめていた。
「幼馴染に、会いに行こうかな」
「あ〜、たまに話してる幼馴染さん?ちょっと遠いって言ってたけど、何かできることあったら教えてね」
確かに、引っ越す前の場所だから少し遠いのは間違いない。
それでも関東だし、京都から戻れる距離ではある。
「うん、ありがとう。たぶん、大丈夫」
少しだけ彼女に微笑んでみせると、彼女は優しく私の頭を撫でた。
「一人で抱えなくていいんやからね」
うん、ありがとう。
その温かい言葉が心に染みながら、私は二人で家に帰った。
ーーーーーーーーーーーー
カタンコトンと、電車が揺れる音がする。
咲良ちゃんは結局、私が身支度をする間もずっと家に居てくれて、最後は駅まで送ってくれた。
家では着替えと荷物をちょっと用意したくらい。
どうせ今日中には帰るから荷物は軽くしてある。
帰ったらしばらくは咲良ちゃんと二人で過ごすつもりだ。どちらの家に泊まるとか、詳しいことはまだ決めてないけど。
とりあえずは彼に会いに行くことだけを考えることにした。
まあ、夢のなかで見た景色を見たいなんて馬鹿げた話だとは思ってる。
電車の中で会うなんてそれこそ奇跡に近い話だ。
んー、だめだめ。
こんな事を考えていたって気持ちが沈むだけだ。
少しだけでも気分を上げようと、この前に買ったイヤリングを耳につける。
月と太陽がモチーフで、なんだか私と大輝くんみたいに感じて思わず買ってしまった。
彼に会いに行くならちょうどいい。
今乗っている電車は、新幹線に2時間ほど乗ったあとの地元の私鉄。
私の出身はそれほど寂れたところではないけれど、自然豊かなところにあり、ここから急行電車に乗ってさらにしばらくしたところにある。
それでももう、あと少しだ。
あと少しで彼に会えるかもしれない。
そんな事を思いつつ車内を見回すと、浴衣や着物を着た多くの客が目に留まる。
乗り込んだときは目につかなかったから、きっと途中駅で乗ってきた客たちだろう。
(花火大会でも、あるのかな)
なんとなく嫌な予感に駆られる。
『まもなく〜』
最寄り駅に着くアナウンスがかかって、案の定その浴衣客たちは一斉に降りる素振りを見せた。
隣の恋人に声をかける者や荷物をまとめようとする者。
そして私たちは一緒に最寄り駅へ降りて行った。
(花火大会か、タイミング、悪いな)
最寄り駅から彼の家の方に足を進めていると、騒がしい屋台や花火を見に来た客の喧騒が嫌に心を掻き立てた。
ーもしかしたら彼も花火を見ているかもしれない。
そう考えると家に行ったところで、結局は会えない可能性が出てくる。
(うーん、参ったな)
人の多さに身動きが取りづらい。
顔に人の体が当たりそうになって、時折鞄が私の耳元を掠めた。
このままではイヤリングも落としてしまいそうだ。
なんとなく私は諦めがついてしまって、駅にそのまま戻ることにした。
駅に向かって歩きながら、彼に会って心を落ち着けたかったというのに、この人ではそうもいかないじゃないか、と無性に腹が立った。
きっとそれは別にそれ自体が本質なのではなくて、ただこの理不尽だった昨日とその続きの今日に嫌気が差してしまっただけだ。
もっとありふれた昨日の地続きの今日なら、きっとこの喧騒を楽しめたし、それで彼に会えたと言うならきっとさらに浮足立ったはず。
まあ、仕方ない。
人に揉まれつつ半ば無理やり歩いていくうちに駅についた。
帰る電車の来るホームまで上がって時刻表を見ると、あと一分でちょうどお目当ての急行が来るようだった。
彼に会えなかったのは残念だけれど。
もう夕方だし、花火大会が始まるのを待っていてはきっと混雑で帰れなくなってしまう。
電車が来てドアが開く。
ゆっくりと電車に乗り込むとドアは素早く閉まりすぐに電車が動いた。
またカタンコトンと音がする。
その音を聞いていると、なんとなくやるせなさが襲ってきて車内を見回して気を紛らわすことを思いつく。
そうして、特に意味もなく車内を見回したとき。
視界のなかに懐かしい人の姿が映った。
夢で見た、確かにその人だった。
じっと見つめていると向こうもこちらを見つめてくる。
私は、ゆっくり、ゆっくりと彼の方に歩みを進めた。
「大輝、くん……?」
あの頃のように私は彼に呼びかける。
「まさか、小夜、か……?」
少し、というか随分大人になった彼に名前を呼ばれて、それでも残る懐かしさと安心感が私の胸を満たした。
夢のような話だった。
本当に、彼に会えるなんて。
「大輝くん……!会いたかった……!」
思わず彼に飛びつくと何故か頭を撫でられる。
そういえばこういう人だった。
私が悲しいときや辛いときは昔からよく頭を撫でてくれたっけ。
「どうして、ここにいるんだ……?」
そう彼に問われて私は彼を試すいいチャンスだと思った。
「どうしてでしょう」
まさか当てられまいと高をくくっていると、綺麗にフラグは回収される。
「僕に会いたかった、とか……?」
思わずぴくっと身体が動く。
うぅ、なんでわかるの。
居た堪れなくなって視線を逸らすが、それでもやっぱり彼を見ていたくて私は彼を見つめる。
「半分当たりだけど、そうじゃなくて……」
そうじゃない、なんてほとんど嘘だった。
私がここに来たのは紛れもなく彼に会うためで。
ただそれをストレートに伝えるのは憚られる。
だったら、少し誤魔化せばいい。
「この街にね、来たくなったの」
それは貴方がいるからだよ、とはとても口にはできないけれど。
別にこの街に懐かしさや愛情がないわけではない。
でも、今日ここに来たのは紛れもなく彼に会うためなのだ。
大事なことなので2回言ってみた。
「でもね、花火やってるんだって」
そこからの話はただ他愛のない話だった。
懐かしい地元に来たかった、とか誤魔化してみたり。
「懐かしい場所が誰かに取られた」と彼が言い出したときは、場所でこそないけれど、彼を失ってしまったような喧騒の中を歩くあの喪失感を思い出してどこか共感してしまう。
いや、場所だったのか。
私にとって、昔から彼は私の居場所だったのか。
そんな事を考えていると、この気持ちに理屈がついた気がして私は嬉しくなった。
「でもね、大輝くんは全然変わってない」
いや、たしかに大人にはなったけれど、そういうことではなくて。
私は彼に会うまで、実は少し怖かった。
あの懐かしい綺麗な瞳が、純粋に私を見つめてくれるその瞳が、ほかの人達のように濁った瞳になっていたいかが。
でも彼は変わっていなかった。
そして何よりそのことは、あの男が、そんな人たちが、この世界の全てではないことの証左だった。
「だからね、会えて良かったなって」
だから本当に会えて良かった。
私はまだたぶん歩いていける。
あの男に会ったらと思うと、さすがに心が折れるけれど。
ーー彼と、一緒にいたいな。
「居場所、見つけたかったの」
よかった君に会えて。
貴方の隣を思い出せて。
だからやっぱり私は、また君に会いたい。
「だから、待ってるね」
ー適当な嘘と期待を添えて。
「待ってるから。今日は大輝くんに会えて、ほんとによかった」
ー願いと頼りないお守りを添えて。
「頑張ってね。私が応援してるから」
ー小さな祈りと愛を添えて。
私の言葉が貴方を救えますように。
私が貴方に救われたように。
前書きが長すぎる……笑
小夜の過去のお話をとりあえず皆様にお見せできて嬉しいです!
現在のお話(ストーカー事件)ももうすぐ一段落ですので、最後まで宜しくお願いします!
尚、このお話の主人公sideは短編『花火大会に静寂を』としてまとめております。
こちらも是非お読み頂けると嬉しいです!(_ _;)m
(最後のシーンとか読まないと伝わりきらない気がするのでよかったら何卒……)




