Eps.029 空白
いつもより少し長いですが、大事な話なので最後までお読み頂けると嬉しいです!
また、次回はなるべく今日中(または日付跨いで数時間以内)に更新します……!
頑張りますので何卒宜しくお願いします!
(注意とお詫び)
今回のお話には、「*******」以降、一部シリアス(暴力的)なシーンがございますのでご了承願います。
次回の前書きであらすじとして載せますので、心配な方はそちらをお読みくださいませ。
また今日も夢を見た。
正確には、見たというより見ているのだけど。
繰り返し見たいつもと同じ夢。
それは時間が経っても鮮明で、何度見ても身の毛がよだつ。
そして何より恐ろしいのがそれが本当にあった話だということ。
「大輝、くん……」
私は夢のなかで彼の名前を呼ぶ。
大丈夫、このお話の結末はもうわかっている。
彼がいるから大丈夫なのだ。
そうして私はまたいつもの電車に飛び乗った。
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昔から他人が苦手だった。
だって、私が友達だと思っていても相手がそうとは限らない。
「それ?小夜ちゃんがやってましたー」
「また小夜ちゃんだよー。仕方ない子だなぁ」
そうやって友達の悪事を何かにつけて私の責任にされることも少なくなかった。
当時から「不思議ちゃん」だった私はそういう標的には何かと都合が良かったのだろう。
そもそもちょっと浮いていた、というのもあったかもしれない。
それが小学生の時の話。
そうして私は少しずつ同級生から離れていった。
でも、大人は違った。
大人は、やたらと私のせいにされたそれらが私のせいじゃないことをわかってくれた。
だから一応救われてはいたのだけれど、それでも学校の居心地が悪かったことに違いはない。
そして、中学生になって。
他の中学の子たちと合流し、周囲の雰囲気もまた少し変わった。
この頃から私は周りに打ち解けようと努力した。
心を許す、というのはなかなか難しかったけれど、馴染めるように輪に入れるように。
そしたら少しずついい友達もできた。
不思議な子だね、とよく言われながらもそれを受け止めてくれる子もいた。
一方でその中には私に擦り寄ろうとする人もいたような気がする。
当時から比較的勉強はできたほうだったので少しクラスでは評判が良かったのだ。
それに乗るように、純粋な好意とは違う形で注目を浴びることがなんだか私にはもどかしかった。
まあそれは別にいいとして。
もう一つこの時期に変わったこととしては、私の容姿に関心を持たれることが増えたことが挙げられる。
さっき話した擦り寄りや注目にはこの側面もあったのだろう。
周囲曰く顔立ちや容姿が良かったようで、特に転校してからは、異性から好奇の目で見られたり近寄られたりすることも増えた。
でも、私はそれがすごく嫌だった。
そんな愛され方をしたいわけじゃない。
欲を言うならちゃんと私を見てほしい。
ーそんな濁った瞳で私を見ないでほしい。
うまく自分のことを伝えられない私は、そんなことすらうまく言えないまま、一人でその思いを抱えていた。
まあ、わがままというか面倒くさいことを言っているのはわかっているから、敢えて言わなかったのもある。
さらにさらに、高校生になって。
異性からの好奇の目はより一層増えるようになった。
だから私はできるだけ、彼らに素っ気なく接しようと思った。
興味なんて持たれないように。好かれないように。
ただ女子に対してもそんな事をしていては人間関係が持たないので、そこはなんとか頑張った。
まあ周りの女子のことも、私にはよくわからなかったんだけどね。
なんとか友達を作りつつ私は高校を乗り切った。
大学生になって。
私はまた同じ作戦を続けた。
結果、異性とは随分適度な距離を保てるようになった。
同性とはある程度頑張って付き合いながらも、ほぼ初めてに近いくらいちゃんといい友達ができた。
ーそれが咲良ちゃんだ。
彼女はとても綺麗な目をしていた。
どことなく懐かしい、彼に似た瞳。
クールそうで実はおちゃらけた彼女は、私と好きな分野が同じで趣味も合うし、そしてまた私の内面を見ようとしてくれた。
「小夜ちゃんはちゃんと話すとよくわかるタイプな気がする」
彼女がそう言ったときは少し驚いた。
……初めてそんな事を言われた。
ずっと、わからないとばかり言われてきたから。
「小夜ちゃん、こういうの好きでしょ」
日頃の細かいところまでよく覚えて、私の好きなことをわかろうとして、そしてわかってくれる彼女は、久しぶりに心を許せる友達となった。
*******
ーそんな順風満帆な友人関係(といっても彼女だけだが)とは裏腹に。
避けていた異性の中には強引に近寄ろうとするものもいた。
それはさすが大学生、といった感じか。
昔私は居酒屋バイトをしていて、そこのバ先の先輩に目をつけられたのである。
思えばその選択が良くなかったのだろうけど、京料理のちょっといい居酒屋で、すごく私の趣味に合ったのだ。
従業員は男の人が少ないと聞いていたし、お客さんこそ男性も多かったが、品のいいお客さんばかりで飲んでも絡まれるようなことはほとんどなかった。
そしてまた社会経験のつもりだった。
これから大人になるにつれてずっと異性を避けてはいられない。
富とか地位とか名声とか。
学歴とか容姿とか。
そんな表面だけで好き勝手判断されるのはやっぱり嫌だけれど、でも社会に出るのだからそれも慣れないと。
そう思って続けていたバイトで、私に牙を向いたのはバイトの先輩だった。
その人は初め、人の良さそうな雰囲気だった。
まあそれも雰囲気だけで、好奇に満ちた濁った瞳をしていたからそこまで信頼はしていなかったけど。
でも次第に私につきまとうようになった。
初めは執拗にご飯や飲みに誘ってくる程度(とは言え未成年なんだからその時点でおかしい)だったが、最後の方は帰りに家までついてこようとしたり、偶然を装って何度か身体に触れられたこともあったっけ。
気持ち悪かった。
今でも思い出すだけで気持ち悪い。
そしてあの日。
あの夏の日。
家を出ようとするとその人がいた。
なぜ、私のアパートの、ちゃんと私の部屋の前に。
正直ゾッとした。
いつも家まで着いてこさせないようにしていたのに。
シフトもズラしてもらっていたのに。
「ねーずっと無視しないでよ。前に言ったとおりさ、今日はお出かけしようよ」
確かにLINEにそんなメッセージが来ていたっけ。
ちゃんと見ていないからよく覚えていないけど。
「やめてください、用事があるんです」
「用事ねぇ」
別に用事はなくて、単なる散歩だったけど。
しかし彼は強引に私の腕をつかんで、そして鍵を閉める前の私の家に押し入った。
「なんでずっと俺のこと無視するの」
濁った瞳の男は玄関の壁に私を追い詰めた。
驚いた私は思わず尻もちをつく。
そんな私に彼はしゃがみ込んで、私の足に手を伸ばした。
気持ち、悪い。
「やめてください……!」
私の落としたカバンが、かろうじてドアが閉じるのを防いでいる。
だから私はその隙間に向けて外に聞こえるように目一杯叫んだ。
神様が味方してくれたのか、本当に運がよかったのか。
奇跡的に通りすがった人がいてドアが開く。
「大丈夫ですか……?」
ドアを開け中を覗き込んだその近所のおばさんは様子を見るや否や状況を察し、私を助けようとドアを大きく開けた。
それに対し、男はチッとあからさまに大きな舌打ちをして、ドアとおばさんの隙間をすり抜けるように強引に通り抜けては逃走した。
「一緒に、警察行きましょう」
親切なおばさんだった。
一緒に警察にいき、事情聴取を受け、外に出た頃にはもう日が暮れていた。
夜は怖いし家に戻りたくないな。
家を出る前にほぼ全財産は持ち出した。
だから今日はホテルにでも泊まろう。
そうして私は駅前のホテルに泊まり、夜が明けるのを待つことにした。




