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幼馴染が、儚くて、ミステリアス。  作者: 小林ナイン
第1章 幼馴染は、変わらず、ミステリアス。
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26/33

Eps.026 不運

お待たせしました第26話です!

そして次のお話は木曜日の夜頃に更新予定です<(_ _)>

私用で更新遅れてしまったらすみません、遅くとも土曜の夜までには上げます……

あれが単に不運と呼べる出来事だったのか、はたまた事前に予測できたことだったのか。

僕は考えたくもなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


小夜のことはよく知らない。



幼少期、よく共に遊んだ仲。



小学生の時はよく彼女の家まで行って共に登下校をしたり遊んだり。


その道中に街を歩き回ったり秘密基地を作ったりしたことなんかもあったっけ。



中学校は途中まで一緒だった。


同じクラスにもなれなかったし登下校もバラバラになってしまったが、それでもたまに遊ぶ仲が続いた。



彼女が悩んでいるときは話を聞いたり頭を撫でたり。


小さなころから中学校のお別れの時までそういう関係性が続いた。



彼女が転校して再会して。


またしばらく会うことなく大学生になって今度は奇跡的に再会して。



それからも決して穏やかな日々ではなかった。


彼女のことがわからないながらも昔のように甘える彼女を温かく受け入れようと努めた。


あの頃から寂しがりだった彼女が少しでも寂しくなく日々を過ごせるように。



わからないものは想像で補って。


ただ言葉とかすかな動きを信じて。


そういう2か月間だった。



ただきっと、それだけでは不十分だった。


もっと踏み込んで話を聞いていればこの顛末は変わったのか。


それとも聞いたとて同じ未来を辿っていたのか。


そもそもそれで彼女が話してくれたのかもよくわからない。


僕の知らない彼女の6年間は僕らにとってそういう長い長い時間だったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


よくある一日の。


正確に言えば近頃続いていた幸福な日常のワンシーン。


「お仕事、お疲れさま!」


バイトを終え店から出てきた僕の姿が目に入るや否や、嬉しそうに駆け寄ってきた小夜が僕に声を掛ける。


「小夜もお疲れ様。ちょっとおそくなっちゃってごめんね」


「ううん、私も、ちょっと遅かった」


大丈夫大丈夫とでも言いたげな優しい笑顔を浮かべ、透き通った瞳で彼女は僕を見つめた。


子供っぽいというかいつまでも無垢で儚い少女な感じがするというか。


少し、うらやましい。


僕もそういう優しい人になりたいな。


「帰るよー」


小夜が袖を引っ張って急かすので僕らは一緒に自転車置き場に向かった。


今日は来るときに雨が降っていたから小夜は歩きだ。


僕も歩くか迷ったが小雨だったので自転車で来てしまった。


どうせ一緒に帰るなら歩いて来ればよかったのに。


そのせいで今日は自転車を押して帰ることになる。


まあ小夜とゆっくり話せる時間も大学が忙しくなった今では貴重なので、別にそれほど嫌な思いはしていない。


ただ余計な荷物が増えてしまったというだけ。


無事自転車置き場に着きロックを解除して自転車を押して歩く。


帰りの通り道的に一度店舗の前まで戻らないといけないのが面倒だ。


自転車置き場まですごく距離があるわけではないが微妙に遠い。


「それでね、今日は咲良ちゃんと、お昼ご飯食べて」


今日あった出来事を嬉々として話す小夜にうんうんと相槌を打ちながら他愛のない話を続ける。


これもまた最近の僕らの日常だった。


咲良がいるときは三人で、いないときは二人で。


「たまには、3人でご飯食べる?」


「あ~確かに、たまには食べるか」


「優真くん、来たいって言うかも、だけど」


あの二人、仲がいいからと付け足し少しうらやましそうに小夜は言う。


「4人で集まることもこれまでないもんね」


「うん。私はやっぱり、男の人、あんまり。優真くんが悪い人じゃないのは、わかってるけど」


前にも少し話していた気がする。


優真とも仲良くしたいそうではあるが、男の人といるのはなんだか落ち着かないらしい。


大人になって社会に出るし、少しずつ慣れないとと彼女は言っていたけれどあまり急ぎすぎてもだろう。


苦手なものは仕方がない。


僕は例外らしいからその点の心配はひとまずはいいらしいけれど。


「まあそれなら3人で集まろうか。またいつか小夜が会いたいなら4人で」


「うん、会いたい」


幸せそうにはにかむ笑顔を見て僕は少し胸を撫でおろした。


4人でご飯、楽しみだな。


そう思ったとき。


僕らはちょうど店の前まで戻ってきた時だった。


店から見慣れた男子学生と思しき客が出てくる。


いつもきつねうどんを頼む常連客。


決まって天かすなどを置いている薬味机の近くの席に座っているので非常に印象に残っていた。


彼は僕らの方を見ることなく小夜の前を通って、それから小夜の真横を通過し僕らの来た道の方へ歩いていく。


その時。


小夜は小雨が降ってきてちょうど傘を差していたタイミングだったので、彼女の横を通ってやっと彼の顔が視界に入ったのだろう。


顔を見るや否や、怯えたように僕の方へよろけ自分で体制を立て直すと彼女は立ち止まる。


男はそんな小夜の様子に全く気付く素振りはなく遠くに歩き去っていった。


「だい、じょうぶ……?」


小夜に聞いても応答がない。


ただ傘を低い位置で差して顔もよく見えなかった。


「大丈夫?」


僕がもう一度なるべく優しい声色で問いかけるがそれにも返事はなかった。


そしてしゃがみ込み、彼女の顔を見ようとしたとき。


「ごめん、帰ろっか」


暗い声で彼女は言い、僕からいつもより一歩分くらい離れて彼女は進んでいく。


相変わらず傘を低く差したままでこちらを見向きもしない。


顔もよく見えなかった。


ただ声と雰囲気だけで彼女の気持ちを察するしかない。


そのままほとんど全く会話をせず僕らは家に帰った。


話したのはせいぜいバイバイという挨拶くらい。


彼女が心配だったので家の前まで見届け、彼女の家のドアがガチャリと鳴ったのを聞いてから僕は自分の部屋に戻る。





そして、そのドアは開くまでに1週間を要した。

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