Eps.024 常連
次回の更新は10/3(今週土曜日)の夜頃の更新予定です!
なるべく21:00~24:00にあげる予定ですが、日付回ってからになってしまったらすみません……。
「ほら、白菜いっぱい」
運ばれてきたラーメンを指さして、また誇らしげに小夜は言う。
清水寺からの帰り道。
僕らは夜ご飯を食べるために四条通にあるラーメン屋さんに来ていた。
小夜曰く、このお店にはよく来ているらしい。
常連さんなの、ドヤやっていたこの少女は「大輝くんにも、食べてほしい」と僕をこのお店に連れてきてくれたというわけだ。
「なんかラーメンなのに健康そう」
「健康かは、わかんないけど。でもヘルシーそう」
日本語に直したらほぼ同じ意味では?と突っ込みたくなったがニュアンスの違いは分かるので野暮なことは言わないでおこう。
頷いた僕は手を合わし、二人で「いただきます」と手を合わせる。
早速ラーメンに目を向けると、湯気が立っていて見るからにおいしそうだった。
上にはチャーシューとたくさんの白菜がのせられ、これまでのラーメンでは見たことのないような非常に罪悪感の少ない見た目をしている。
綺麗に透き通ったスープをレンゲで一口すくって食べると少し甘いようなほっとする出汁の味も感じられる。
そこからはラーメンを食べて、スープを飲んで、白菜を食べて。
夢中で食べ進めているとあっという間に食べ終わってしまった。
「美味しすぎてスープ飲み干しちゃった」
「おいしいよね、わかる」
小夜はうんうんと頷きながら「何度来ても、おいしい」と味の余韻に浸っていた。
小夜はいつもおいしそうに食べるのでこの顔を見れるだけで一緒にご飯に行く価値がある。
「また行こうね」と声を掛けると小夜は嬉しそうに「絶対だよ」と耳元で囁くのだった。
お店を出て家に帰ろうとしたところ、小夜がゲームセンターに行きたいと言い出した。
「なんでゲームセンター?」
「好きなキャラの、クレーンゲーム、出たらしくて」
なるほど、そういうことか。
「ちょっとだけ、付き合って」
小夜に指を引っ張られ少し歩いたところでゲームセンターに着いた。
よく見るコインのゲームからクレーンゲームまでたくさんのゲーム機が並んでいる。
店を少し回ったところで小夜はお目当ての台を見つけたようで「集中するから、大輝くんは一人で見てきていいよ」と興奮気味に言われた。
むむ、僕と一緒に来た意味は?とは思いつつも、小夜さんのご所望とあれば仕方あるまい。
はいはいと頭を撫でて離れると小夜はありがとねと手を振り、すぐに正面を向いてゲーム機にコインを入れ始めた。
そんな姿を見送りつつ僕は店内を散策する。
ゲームセンターなんていつぶりだろう。
僕はゲームセンターのゲームに全くと言っていいほど興味がないのでそもそも自ら足を運ぶ機会がほとんどない。
友達と来たことはあるにはあるが、やったとしても車のレースゲームくらいなもので今一人でやるには向かないだろう。
音楽ゲームから流れる最近の流行歌と思しき曲を途中で耳に入れたりもしながら、僕は店内を歩き続けた。
そして、ほぼ一周したくらいのタイミングで僕は立ち止まる。
それは大きな動物のぬいぐるみたちが並ぶクレーンゲームだった。
犬に猫、クマ、ペンギンなどの可愛い動物たちが愛しいお目目を輝かせながらこちらに訴えかけてくる。
暇つぶしにはちょうどいいだろう。500円で3回、と書いてあるしもしかしたら本当にゲットできるかもしれないし。
そう思ってクレーンゲームにお金を入れた。
何を持って帰ろうか、と改めて動物たちをじっと眺める。
試しにどれが小夜っぽいかなとかわけのわからないことを考えてみるが、微妙に心当たりがなかった。
ネコみたいな上品さを感じるけど、割とでれっぱなしだし。
イヌというには小夜は元気なタイプでもない気がする。
うーん……。
悩みに悩み、結局捕まえやすそうで気品があるという適当な理由からペンギンに狙いを定めた。
そして。
クレーンゲームはほぼ初めてのはずだったが、奇跡だったのか気づかぬ特技だったのかなんとかちょうど3回で獲得できた。
喜んで取り出し口から縫いぐるみを取り出すと、急に背後に気配を感じる。
びっくりしてゆっくりと背後に目を向けると、感心したように僕を見つめる小夜。
「うまいじゃん!」
「え、ありがとう」
抱きしめるようにペンギンを抱えながら僕は答えた。
小夜の手にも無事狙っていたキャラらしい子の缶バッチが握られている。
どういう子なのかは全くわからないけど、また聞いてみよう。
そうやって僕たちは戦利品を抱え店を後にした。
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「ってことがあって」
バイト中。
僕は咲良さんに清水寺の一日の話を語り終えた。
いや、もちろん仕事をサボっていたわけじゃない。
ちゃんと手を動かしながら話しているし、話しかけていたのは咲良さんの方だから……。
まあ少しでも仲良くなろうと話を振ってくれたのだろう。
ちょうど僕らはお客さんとは接しないキッチンの奥まったところで作業しているので、お客さんから見ても問題はないはずだ。
「やっぱり仲いいねぇ」
聞いてはいたけど、と呟きながらほほえましそうな顔を向けられる。
「まあ、幼馴染ですから」
「幼馴染というには距離近いけどな~」
咲良さんはクスクスと笑いながら言うので、若干揶揄われた気がしなくもない。
が、そんなことを気にする間もなく「まあ仲良くしてあげてね」と優しい声音で言われてしまった。
やたら咲良さんは小夜のことを気にかけてるよなぁ。
まるで咲良さんが小夜をお世話しているみたいだ。
普段小夜が僕に甘えているみたいに、咲良さんにも甘えているのかもしれないけれど。
色々考えていると再び咲良さんに声を掛けられた。
「あ、そういえば天かす入れ替えてきてくれないかな」
「わかりました!」
天かすはホールの中に置かれており、お客さんが自由にうどんに載せて食べることができる。
しかし、油がまわって味が落ちてしまうので定期的に交換することになっていた。
とは言いつつ、普段はどうせほぼなくなっているんだけども。
天ぷらのスペースを担当してた咲良さんから新しい天ぷらを受け取り、ホールに向かう。
交換にはさして時間はかからなかった。バイトも随分と数をこなせてきているのでかなり慣れたものだ。
帰り際店内を見回すと、サラリーマンに学生、おじいちゃんやおばあちゃんまで比較的広い客層の人がいることがわかる。
ちょうど目の前に座ってきつねうどんを食べているこの学生は少し年上だろうか。
何となく前にも見た気がするので常連さんなのかもしれない。
そんなことを思いながら僕はキッチンに戻っていった。




