Eps.023 新緑
また私用が長引き、投稿若干遅れて申し訳ないです……。
次は9/28の夜頃(21:00-24:00頃のなるべく早くに上げたいと思っております!)に投稿予定です!
何卒宜しくお願い致しますm(_ _;)m
バイトにも慣れゴールデンウィークになった。
かと言って大した用事もなく、今日以外はバイト三昧だったのだけど。
そんな今日は遂にゴールデンウィーク最終日。
小夜から「清水寺、一緒に行こ?」と誘われ、唯一予定ができたのだ。
眠たい目を擦って身支度を済ませる。
もう家を出ようというところで、ちょうどインターフォンが鳴った。
「はーい」
玄関のドアを急いで開けると白いワンピースに身を包んだ少女が現れる。
耳には例の月と太陽がモチーフのイヤリングも付いていて、やっぱり綺麗だ。
「イヤリング、いいよね」
視線を察したかのように小夜が僕に声をかける。
「うん、好きなんだよなぁそれ」
「それは、なにより」
そう言って幸せそうにはにかむ小夜もやっぱり綺麗だなと思った。
それからすぐに家を出る。
小夜はもう少し僕の家で寛いで居たかったようだが、あんまり遅くなっても昼ご飯の時間が取れなくなりそうなので仕方ない。
小夜さんは相変わらず変装モードだった。
それをいいことに家の中ほどではないがくっついてくるのはいかがなものかと思うが。
バスに乗り込み、揺られること15分くらいで清水道に着く。
清水道、というのが清水寺最寄りのバス停なのだ。
バス停を降りると正面に長い坂が現れる。
観光客でごった返しているこの坂こそ清水寺に続く道であり、ややキツそうに見えるこの勾配と人並みに若干気後れしてしまう。
「まあ、大丈夫。私がいる」
僕の表情を見てか、何故か私に任せろと胸を張る小夜であったが、袖を掴んで僕の後ろに張り付いているので全く説得力がない。
僕は初めての清水寺であるが、小夜は何度か来たことがあるらしい。
だからまあ、道については大丈夫だろう。
調べた限り一本道だから、そもそもその点は心配してないんだけど……。
そんなことはさておき、人波をかき分けて坂を登っていく。
ある程度登ったところからは特に食べ歩きのできそうな飲食店が増えてきた。
京都銘菓である八ツ橋のお店に、みたらし団子や抹茶のスイーツなどいかにも京都らしい店が立ち並ぶ。
「あれ、食べる」
小夜が指さしたのは抹茶の入ったバームクーヘンのお店だ。
店のポップを見るに、下にバームクーヘン上にソフトクリームの乗ったミニパフェ的なものが売っているらしい。
「これ、好きなの」
迷うことなくレジに一直線に進んでいき、会計からそのミニパフェを手に携えて戻ってきた小夜が嬉しそうに言った。
「一口あげるよ」
付属のスプーンでソフトクリームを一口取り、僕の前に差し出す。
抹茶と豆乳のソフトクリームらしく非常に美味しそうだ。
有難く頂戴すると、確かに抹茶の渋みと豆乳の甘さが際立っていて美味しい。
「美味しいでしょ?」
「うん、すごくおいしい。ありがとう」
満足気に微笑む小夜の頭をぽんと撫でると、小夜は一層幸せそうな顔をした。
そしてバス停から随分と歩き、やっと清水寺の入口らしきものが見えてくる。
入口というか、寺の一部というか。
観光客たちがそこで必死に写真を撮る中、小夜は「あとでツーショットね」と僕を引っ張って本堂らしきほうに連れていく。
受付で拝観料を納めると栞のような形をした拝観券を頂いた。
「季節によって、柄とか色味が違うの」
これまで訪れたことのない季節のものだったのだろうか。
空に透かすように感慨深く拝観券をまじまじ眺めている。
「清水寺、といえば桜のイメージだったんだけど」
「そうね。桜とか、紅葉とか」
「この季節は初めてくるの?」
「いや、去年初めて。去年の新緑が、綺麗だったから」
そう言って大事そうに拝観券をしまい、小夜は僕の顔をじっと見つめる。
「だから、大輝くんと来たくて」
透き通った瞳が僕に強く訴えかけてきた。
「……う、うん。ありがとう」
少々の照れと、それ込みの「なんで僕と……」という気持ちで居た堪れなくなって視線を外す。
それに対し小夜は普段なら若干拗ねそうなものだが、小指を僕の手にするりと絡めて僕の手を引いた。
相変わらずよくわからない少女である。
ただ、好きなものを僕と共有したいと思ってくれるのは非常に有難い限りだ。
素の自分が出せる相手に、好きなものをわかってほしいということなのかもしれない。
真相はよくわからないけれどそういう存在であれたら何よりだとも思う。
口数の増えないまま、小夜に導かれて中を進んでいく。
当然初めて本堂に入ったが思った以上に大きくて圧巻だ。
月並みな感想かもしれないが、素直に感想を口にすればきっとこうなる。
「流石有名観光地。迫力が違う」
「でしょー?」
あまり意図せず口にした言葉であったが、小夜は聞き逃さなかったようだ。
またドヤ顔をして顔を近づけてくるので、はいはいと頭を撫でた。
「なんか、雑に撫でてない?」
「雑じゃないよ」
若干誤魔化していることは否めないが、別に適当になっているわけではない。
それなりの大切だよという気持ちは込めているはずだ。
「なら、いいけど」
変わらず小指だけで手は繋いだまま小夜はぷいっと前を向き、僕らはいわゆる清水の舞台の方に歩みを進めていく。
「これが舞台だよね」
「うん、腹を括るやつね」
……「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」という言葉の話だろうか。
「でもなんか、思ってたのと違うかも」
うまく言葉にできないが、僕が想像していたのはもっと中心にでっかくある感じだった。
順路通りに見た限りかなり端っこにあるし、舞台というには迫力に劣る気がする。
「それはたぶん、横から見てるからかなぁ」
「なるほど……?あ、確かに正面から見たらぽいかも」
小夜の指示する通り、本堂を背に向けて舞台を身体の正面に置くと確かにそれっぽい絵になった。
何処かの漫画で見たようなワンシーンも確かにこんな感じだった気がする。
「そしてまた、新緑がきれいなのです」
そう言って小夜は舞台の端っこの方に歩いていき綺麗な自然をスマホのカメラに収め始めた。
「きっと桜も紅葉も綺麗なんだろうけど、この緑の感じ、確かに僕も好きかも」
桜と紅葉が綺麗なことは、この緑の美しさを見ればわかる。
それくらいこの新緑の緑色が綺麗なのだ。
「わかってくれるかい」
どこかのアニメに出てきそうな茶目っ気のある口調で若干ふざけつつも、感動したかのように瞳をキラキラさせているのできっと好みを共有できたのだろう。
「うん。また、一緒に来よう」
そう言って僕は小夜の頭を撫でると、何故か頭で僕の胸にぐりぐりと押してくるのだった。




