Eps.015 理由
更新遅くなりすみません!
「咲良さん、いい人だね」
大学近くの飲食店で夜ご飯を食べながら、僕は向かい側に座る優真に言った。
「ん、ありがとうな」
優真は少し照れているようだった。
いつもより、だいぶ頬を緩ませている。
そんな優真に、少し気になっていたことを聞いてみることにした。
「そういえば、二人はどうして付き合うことになったの?」
「ん、普通に俺が咲良と同じクラスで委員してて、まあ部活も一緒やったけど、それで好きになって告った」
やはり少し照れたように、ちょっとぶっきらぼうに答える。
それでも、温かみがあるというか、咲良さんのことを大事にしているんだろうなという言い方で、言葉を選びながら語ってくれているような気がした。
「へぇ〜、優真からだったんだね」
「そやなぁ。ゆうて咲良も比較的好ましく思ってくれてたみたいやし、もはや今となっては向こうのほうが……」
続きを言いかけて、優真は自分で自分の口を塞いだ。
「いや、やっぱ忘れてくれ」
「うん」と返しつつも、目を逸らし、咲良さんに怒られそうと子供っぽい反応を示す優真が新鮮で、思わず笑ってしまう。
笑うなや、とまた照れ隠しに、今度は肩をバシバシ叩いてくるが、小夜みたいに力加減はされていて、痛くはなかった。
「そういえば、さっき聞くか迷ってんけど、なんで大輝は心理学部にしたん」
さっき、というのは咲良さんがいる場で、という意味だろう。
しかし、微妙に言いづらいことを聞かれて回答に窮する。
端的に言えば小夜が理由なのだが、小夜を知っている人にこの話をするのは若干恥ずかしい。
「……うーん、大切な人が、何考えてるのか知りたくて」
少し、誤魔化しながら答えた。
「ほほーん。なるほどな」
「そういう大輝こそ、なんで心理学部にしたの?」
「えー?俺はなぁ……」
少しだけ、間が空く。
答えづらい質問だったなら申し訳ないな、と思いつつ、優真は考えている素振りを見せるので、一旦黙っておく。
彼は慎重に言葉を紡ぎながら答えた。
「俺にはな、妹がおるんやけど」
僕はうんうん、と頷きながら彼の言葉の続きを待つ。
「妹がな、昔いじめられて」
まあ、今は元気なんやけど、と言いつつも、彼の顔は真剣で重々しかった。
「まあ、しばらく引きこもり気味やったんよな。やから、どうにかしてあげたいなって思って。ホンマにいい子なんよ。やからこそというか、なんでなんやろなぁって気持ちが強くて」
「うんうん」
「まあ妹がいじめられた理由もそうやけど、特に加害者の心理かな。に、興味があって。妹みたいな子を増やさないように、なんかサポートできひんかなぁって」
なるほどな、と僕は思う。
ただ、優真にかける適切な言葉はよく分からない。
「ま、そういう感じやな。大切な人のことでって意味では、大輝と一緒や」
彼は少し寂しそうに、少しだけ口角を上げた。
うまく声をかけられず、しばらくの間、沈黙が続く。
(……うむ)
下手な話題を振ってしまったか、と思って若干後悔していると、それを見透かしたように優真が話し出した。
「……なんや、気にしてるみたいやけど、俺は別に聞いてくれて嬉しかったで」
「嬉し、かった……?」
思ってもない返答に、僕は戸惑う。
「なんというか、踏み込んでくれた、というか」
「……なるほど?」
「ほら、大輝も誤魔化したみたいに、それなりに深い理由なわけやん。そういうの、知ろうとしてくれるの嬉しいもんやで」
ふむ、なるほど。
……優真の言う事もわからないではない。
別に僕も、誤魔化すために話を振ったわけではなかった。
かと言って、腹いせに聞いたわけでもない。
答えてくれたらいいな、というちょっとした期待だった。
それがもし、優真を試すような真似をした、と言われてしまえばそれまでなのだけど。
たぶん、それが嬉しかったと言う話なのだろう。
信頼と言うか、腹を割って話そうとする意思と言うか。
「まあ、それでいうなら、大輝はちゃんと『小夜ちゃん』って言ってくれてよかってんけどな」
優真が少し寂しそうに笑いながら、僕の頭をぽんと叩いた。
誤魔化したけど、すっかり見透かされていたらしい。
なんというか、僕だけ言わないのも申し訳なかったから、別に良かったのだけど。
「ごまかしてごめんね」
「いや、別にいいんやで。ただ、特に小夜ちゃんには、もっと踏み込んでいい気がするけどなぁ」
「踏み込む……?」
「まだ知り合ったばっかりでよう知らんけど、大輝は割と人のことよく見てるというか」
うーんと悩みつつ、優真は言葉を探す。
「ほら、さっきも聞いてよかったんかなーみたいなの思ってる感じの顔しとったし」
それは優真の言うとおりだと思う。
実際、だいぶ感じていたことだ。
「距離感を探るのも大事やけど、たまには踏み込んでみるのも大事やで。特に大事な人なら」
そう優真は言うと、「まあがんばりなはれ」と言って席を立ち、食器を返却口へ持っていった。
正直、彼の言っていることはあまり良く分からなかった。
彼の指す、「大切な人」というのは小夜のことだろう。
でも踏み込む、とは。
僕らは多分互いにだいぶ心を開いていると思う。
だからこそ、お互いの家に行ったり、頭を撫でたり、そういうことがある、のだと思っていたけど、違うのだろうか。
返却口から戻ってきた優真はまた席に着き、いつもの調子に戻って僕を見つめている。
「気にさせてたらごめんやで。昔そういうことがあったって話やから」
「咲良さんとってこと……?」
「咲良ともやけど、妹ともあったし、知ってるようで壁があったりするなぁって話かな。まあ余計なお世話やろうから、俺が言うのもちゃうけど、あんま気にせんとき」
彼はただ、優しく笑っていた。
依然として、彼の言うことは微妙に掴めないでいる。
ただ、先を見通すかのような彼の視線にやられ、僕は彼の言葉を忘れられなかった。
改めて、更新が1日飛んでしまって申し訳ないです。
しばらく同じように予定が立て込んでいるため、一旦原則隔日21:00の更新になりそうです。
もし、連続で投稿できそうなときはまた告知させて頂きます!
イレギュラーになり申し訳ないですが、何卒宜しくお願い致しますm(_ _;)m




