Eps.013 二日目
いつもより短めですが、お隣さんになって2日目のお話。
たまにはお砂糖多めで、という作者の願望が詰まってます。
ちなみに、9月中も基本は毎日更新の予定です!
(時間帯は今日みたいに18:00だったりするかもです、また告知します!)
宜しくお願いします〜
「やっぱり、同棲みたい」
小夜が夜ご飯を食べながら呟く。
今日はだいぶ引っ越しの片づけが進んだらしい。
ただ、自炊をするには微妙に片付いていないそうで、夜ご飯は僕の家に来て、二人で食べることになった。
……いや、別にいいのだが、こうやって毎日来るつもりじゃないよな……。
そんな一抹の不安を抱えつつ、小夜の頭を撫でる。
相変わらず、気持ちよさそうに撫でられていた。
「まあ、毎日くれば同棲みたいになるよね」
昨日みたいにずっと黙っていると怒られそうだな、と思い、今日は狼狽えずに返事をする。
が、自分で「同棲」と言っておいて、なんだか後から恥ずかしくなった。
幼馴染に使う単語ではない気がするし、妙に心臓が跳ねる。
「ふーん。毎日か……」
何故か「毎日」という言葉に反応した小夜は、一瞬しゃきっとして、何か考えているそぶりを見せる。
「ありかも」
ちょっと茶化しただけだったのに、と言おうとしたところで、小夜に先に「冗談だよ」と笑われた。
「まあでも、できるだけ、側にいたい」
優しい声で小夜は言う。
「大学では、やっぱり、そんな近くには、いれないからさ」
ふむ、やっぱりそれは変わらないらしい。
まあ仕方のないことだろう。
なにせ、大学は人の目が多すぎる。
この前みたいに、ちょっとアピールするぐらいが精いっぱいなのかもしれない。
僕にとっては、それでも十分ではあるのだが。
「おうちくらいね、側にいても、いいよね」
ちょうど食べ終わった小夜が立ち上がり、僕の頭を撫でる。
ん、と変な声が出た。
しかも、高さの問題だろうか、服の柔軟剤の香りがして、頭が余計に鈍くなるのを感じる。
食べ終わった小夜は食器を台所に持っていき、片付けを始めた。
少しの間ボーっとしてしまった僕だったが、急いで食べ終えて台所に向かう。
……結局、ずっと料理させてしまってるな、と今更ながら思った。
今日のお昼ご飯は自分で湯がいたうどんを食べたが、依然として本格的な自炊はできていない。
小夜と食べるときは、昨日のピザみたいな例外を除き、基本小夜が作ってくれている。
これじゃ、なんだかお嫁さんみたいだよなぁ……。
そんなことを頭で思ったのと同時に、小夜が「大輝くん」と名前を呼んだので、手元の皿を落としそうになった。
「うん?どうしたの」
「お皿、ちょうだい」
細くて、僕よりずっと白い手が伸ばされる。
小夜がお嫁さんだったらいいのにな。
好きとかとは別の理由だけど、きっと楽しいと思う。
こうやってずっと暮らすのも悪くない。むしろ、きっと幸せだ。
お皿を渡し、僕はまたリビングに戻る。
ほんとは自分で洗い物をしたかったのだけど、「この前は、してくれたし、今日は借りてる身、なので」と拒まれてしまった。
ソファに座ってしばらく気を抜いていたところ、背後から近寄ってきた小夜に突然頭を撫でられる。
「大輝くん、こっちおいで」
それを言うなら、小夜が正面に来たらいいのでは?とは思ったが、とりあえず従おう。
何があったのだろうと思って小夜のもとに行く。
「はい」
小夜まであと2歩くらいまで近づいたところで、彼女は大きく手を開いてそう言った。
「ん、どうしたの」
「ん-」
ちょっとだけ拗ねたように唸って、小夜の方から近づいてきた。
そう思った瞬間、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「ん、ほんとにどうしたの」
「明日から、大学だから。また離れちゃうし」
なるほど、そういうことか。
……それはそうと、この幼馴染は急に抱きついてくる気がする。
さすがに心臓に悪いし、やっぱり甘いにおいがして、余計なことが頭によぎってしまう。
「ね、大輝くんも」
小夜は一度腕を緩め、僕の手を自分の腰に回した。
背中に触れているだけなのに、やっぱり女の子の肌というか、柔らかくて少し温かい。
僕が自分から小夜に触れることは、頭以外はあまりないので、肌に触れるのは新鮮というか、なんかちょっと、やりすぎな気がする。
体感10秒ぐらい抱きしめられたところで、小夜は僕の身体から離れた。
「元気、ちゃーじした」
「うん」
よかったねと頭を撫でる。
「ほんとに、同棲出来たら、いいんだけど」
僕から離れた彼女は翻って、たぶん聞き間違いじゃない言葉をまた呟き、帰る支度を始めた。




