27 3日目
…大変美味しかった。柔らかい肉質に噛むほどに湧き出る旨味。脂っこさを感じさせないスパイスの爽やかな香り。お肉だけではあったが、満足感が素晴らしかった。
「…ふぅ。ごちそうさまでした。」
私が食べ終わるのを見てか、リンは、銀貨を机に置いて席を立った。慌てて真似しようと貰った金の袋を取り出そうとしたとき、
リンが私の肩を叩き、
「あなた分も出してある。いこ。」
そういって店を出るのでマスターに一礼して後に続いた。彼女の面倒見の良さは何なのだろう。まだ、『お姉ちゃん』なのだろうか。
店を出てしばらく…
私は気になることを聞いた。
「ご飯食べて出たけど…皆は?」
「皆?くぁ……今は寝てると思う。」
あくびをしながらそう言ったリンは今にも眠りそうだ。
「じゃあさっきのお店は?」
「行きつけのお店。夜遅くまでやってて、よくみんなで行く。美味しかった?」
「美味しかったけど…クロ?のことはどうなったの?」
「あ。…もちろん、常に警戒してた。決して忘れていたわけではない。」
完全に忘れていたようだ。
うんうんと頷きながら彼女は話題を変える。
「それより、今日、泊まるとこは?」
誤魔化されたことに気が付きながらも、事実その通りなので、ない。と正直に答える。
「じゃあ一緒にいこ。私の宿。追加で払えばアイリも泊められる。多分。」
なんと、寝床まで用意してくれるらしい。
襲撃者のことを忘れていたことを加味しても、返しきれないほどの恩が積み上げられている。この街に来てからの、衣食住のすべてがリンに依存している。
このままではまずい。
彼女は冒険者で、常に一緒にいられるわけではない。彼女抜きでも生活できるように自立しなくては。
そんな決意を密かに抱いた。
宿はとても綺麗なところだった。受付には少しうたた寝をしていた男の人がいて、2人分の宿代を払えば構わないとのことでお湯のは入った桶を貰い、無事入室する。リンは、部屋に入るとすぐに鍵をかけて体を拭き、ベットへ倒れ込んだ。
私もなかなかに疲れていたので同じように体を拭いて部屋にあるソファで寝そべる。
激動の一日だった。外は日が昇り始めていたが、私の身体は睡眠を求めていた。
明日は部屋と、仕事を探して…それから、リンが選んでくれた魔法に関する本を読みたい。魔女を自称しているのだから、一つくらいは使えるようになっておかなくては。
襲われた時も、魔法の一つでもあればもっとうまく対処できたはずだ。今の私ができることは、魔力をそのまま使うことだけ。
もっと威力がでると思ったけどナイフ一本で対処されてしまうような攻撃だ。
そういえばクロという男にもバカにされていた。明日、暇そうなら魔法のこと、リンに聞いてみようか。
…また自然にリンを頼ろうとしてしまった。
このままでは本当によろしくない。明日は、一人で頑張ろう。自分の手がかりを見つける旅は一人でやるんだ。自分のことだけの旅に他の人を巻き込めない。
明日から頑張るんだ。そう固く決意して私は眠りについた。




