28 一人旅
日はちょうど昇りきったところだろうか、お昼時を少し過ぎたくらいに私は目が覚めた。
ソファから身体を起こしてベットの方を見ると、リンはまだぐっすり眠っていた。
スー。スー。と聴こえる寝息を邪魔しないように、昨日貰った服を着る。
ローブは袋のなかに入れておいて、手紙と鍵だけはスカートポケットにいれておく。
エイル達からもらった大きな金貨3枚と、本の4冊入った袋に、初めてのプレゼントである草履。そして服の沢山入った袋を持って、静かに部屋の扉を開けて外へ出た。1枚はリンの枕元に置いておいた。1枚で足りているかは怪しいが、今は私もお金が欲しい。
目標は、とりあえず荷物をまとめられる大きなカバンだろうか。
そのあとは身分証を作って、この首にかけている木札を捨てよう。木札を見ると、もう魔力の糸はつながっていなかったが、有効期限の話をされていた気がする。
何日だったか忘れたが、早いに越したことはないだろう。
宿の受付は夜の人とは別の人で優しそうな女性だった。ありがとうございましたと挨拶をして外へでる。
とりあえずは大通りを通ろう。下手に襲撃されてもたまったものではない。
道も分からないが、きっとなんとかなるだろう。
とりあえず、人の声がたくさん聞こえる方へ歩いていった。
街は相変わらずの喧騒で、大勢の人が行きかっている。
立ち並ぶお店には人だかりのできているところが何個かあり、どこも食べ物を販売している場所だった。ちょうど食事の時間だろうか。各所で焼き魚やパンに肉を挟んだもの、大鍋でスープを販売していたり、おいしそうな匂いがあちこちから立ち上っていた。
用事が終わったら立ち寄ろうと決め、目的のお店を探す。早いところ荷物をまとめたい。
十数分歩いたところで、気になる看板のぶら下がる店を見つける。
『旅の始まり』と書かれたリュックを模した形の看板だった。
扉をあけるとカランと優しいドアベルが鳴る。店内は、ずらりとものが立ち並ぶ。
頑丈な靴に、防寒用のマント。ランタン、オイル。鍋に、カップ、奥のはテントだろうか。名前の通り、見えるだけでも旅に必要そうなものがここですべて揃いそうな品揃えだ。一個一個の品数は少ないが、まさしく、旅の始まりの店名に相応しいお店であると思った。店内を物色し始めたところで、トタトタと店奥から足音が聞こえた。
「いらっしゃいませ!」
元気な声と共にエプロン姿の女性が店奥から出てきた。額にかいていた汗を拭いながらこちらへ話しかける。
「初めてのお客様ですね!ようこそ!『旅の始まり』へ!何をお探しですか!?」
元気な紹介と共に私の側まで近づいてくる。
背の高い女性だ。目を合わせるために少し上を向いて尋ねた。
「旅用のリュックを探しているんだ。
何枚かの服と本が4冊。とりあえず、それだけ入ればいい。置いてあるかな」
「お客様は魔法使い様でいらっしゃいますねそうされますと、こちらなんてどうでしょう。側面に本の収納がある為、簡単に取り出せますよ!」
そういって紹介されたリュックは、想定より少し小さめであったが、確かに私の荷物は全て入りそうだ。外側にはフックやピッケルなんかが引っ掛けられそうな場所も合って便利そうだ。感想のついでに、気になったことを聞いてみる。
「悪くないね。ところで、どうして魔法使いだって思ったの?」
「はい!旅に本を持ち歩く方のほとんどが魔法使いだからですね。
皆さん、魔法を使う際に魔法書の魔術式を利用されるようなので、即座に取り出せる場所に保管するのが良いとされています」
なるほど、確かにリンも本を持っていたな。私もそうやって本を使うことが来るかもしれない。私はリュックの購入を決めた。
「なるほどね。このリュック、買うことにするよ。これで足りるかな?」
袋から大きな金貨を1枚彼女に渡す。
彼女は少し慌ててそれを受け取る。
「しょ、少々お待ちください。お釣りの方準備しますので!…あるかな」
それだけ言い残しカウンターの方へ移動する。しばらくした後、じゃらじゃらと大量の銅や銀の貨幣を詰め込んだ袋を持ってきた。
「こちら、金貨2枚と銀貨64枚に、銅貨160枚です。数え間違いはないと思います」
そういって袋を丸ごとこちらに渡してくる。
あの…と声をかけようとすると、店員さんは被さるように続けた。
「すみません!お釣りの方金貨9枚なんですが、これ以上金貨と銀貨でお支払い致しますと他の営業に支障が出でしまうんです!申し訳ありません!」
……今まで気づいていなかったが、ガルンたちは相当なお金持ちのようだ。
そして、私の懐には、とんでもない額のお金が入っているようだ。
彼女から袋を受け取り、お金の重みを、しっかりと感じることとなった。




