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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
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5話 新たな家

 買った装備一式の送付手続きと会計を済ました灰達は新宿のカフェテリアで少し遅めのお昼を食べていた。武器などを売っている通りから少し歩いた所にある駅周辺にある店の1つだ。


「このサンドウィッチ美味しいぞ。お前も食べるか?一個やるよ」

「私は少食なんだ紅茶だけでいい」

「へー。こんなにおいひいのにな。それにしてもこんな高そうな店奢ってくれてありがとうな」

「こんなそこそこ洒落た店なら、そこら辺に結構あるだろう。気にするな」

「外食なんてした事ないから、知らなかった」

「…お前がしっかり働いてたらまた連れてってやるよ」

「本当か!!ありがとうございます」


 また連れてって貰えると言われて、嬉しそうに笑顔を浮かべながら2個目のサンドウィッチを頬張る灰。そして美味しそうに食べる灰を見て微笑んだ凛は紅茶を一気に飲み干すと次の目的地について話し始める。


「それ食べ終わったら次はライセンスを取りに行くぞ」

「ゴクッ、それ言ってたけど難しい書類に記入とかするのか?」

「難しい書類は胡桃がお前の入院中にやってくれた。今日は本人しか出来ない簡単な手続きをするだけだ。私も横にいるから安心しろ」

「なら安心だな、ハム」

「…しっかり噛めよ」

「うん」

 安心した灰は3個目のサンドウィッチに齧り付いた。


 昼食を食べ終わった2人が向かった先は新宿から電車に乗って一駅の所に聳え立つ立派なビル。そのビル名を『アビス庁新宿分室』何度も外側が変わろうともこの建物には数多くの歴史が詰まっている。


 変革の時が始まって以降現在に至るまで人種を問わず、数々の名だたる英雄がこの建物で冒険者になる為の手続きを行なっており、冒険者が一目置かれる世間では聖地としての側面も持つ。


「…此処が」

「観るのは初めてか?」

「うん。思ってたより、ずっとデケェ」

「此処にはアビスから人類に新たな可能性を持ち帰ってきた偉大な英雄達が今もなお通う一世紀の歴史が詰まった生きる伝説の建築物だ。」

「すげー」

「マッ、お前も早々にアビスでおっち死無ければ何度もお世話になるだろう」

「社長の癖に縁起でもないこと言うな?!」


 そんな歴史ある建物の前で感慨に耽るのを辞め建物の内部へ入る。内部は歴史的な建物とは微塵も感じさせない程最新式の物で満ちていた。あくまでも此処は役所なのだと言うのが全面に出ている。


 外観から大きい事はわかっていたが、内部の広さに面食らっている灰を先導する凛が向かった場所は、新規登録と書かれた右端のカウンターだ。現在は空いてい為早速受付嬢が待つカウンターの前に辿り着く。


(いよいよ俺も冒険者になるのか)


「探索会社パキラの小野寺です。この子の新規登録をしに来ました」

「探索会社パキラの方ですね。御本人様の確認用QRコードの提示をお願いします」

「はい」

「はい、ご確認が取れました。手続きも既になされているのでB5ルームにて登録用の写真をお願いします」

「はい、わかりました」

(凄いちゃんと社会人みたいな事してる)

「どうした?いくぞ」

「あ、あぁ、」


 写真を撮った後、講習の内容は主にマナーやモラル、規則なんかの説明を受けた灰は、パキラのオフィスに帰る為、凛が運転するバイクの後ろに乗っていた。(本当に簡単だった…)


「なっ、簡単だっただろ」

「うん、なんか俺の思ってたやつと違った」

「厨二の考えてるようなファンタジー要素が無くて悪かったな」

「俺は厨二じゃなくて中2だ」

「まぁ、手続きさえちゃんとしてれば誰でも簡単に冒険者になれるのは死傷率が高く、人の入れ替わりが多いからだ。お前も探索すればわかるよ」

「へっ上等だ。絶対生き残ってやる」

「私に力一杯抱き付かずに言えたらカッコよかったぞ」

「…」

 なんか悔しくなった灰は黙って凛に抱きつく腕に力を入れるのだった。


 凛達が日が完全に傾き切る前にパキラのオフィスに着くと、オフィス内には午前中と同じ様にノートパソコンをカタカタと鳴らす胡桃の姿があった。彼女が凛と灰が帰ってきたのに気づくと席から立って出迎える。


「あー社長、おかえりなさい。灰君もお疲れー」

「あぁ、ただいま」「胡桃さんもおつかれ」


 凛がお茶にしようと言った事で休憩時間となり、1番下っ端の灰が入れたお茶で休憩しながら凛が今日の事を胡桃に話す。


「まぁ、身一つでモンスターと戦う人はいない訳じゃ無いからその…落ち込まないでいいからね」

「別に落ち込んで無いから慰めなくていいよ。正直、剣術とかよくわかんないし、殴る蹴るの方がわかりやすいから良いよ」

「脳筋の考えだな」

「ウルセェ」

「もう、社長あんまりイジメちゃダメですよ。素手が1番向いてるって診断されたとしても危険な事には変わらないんですから」

「はい、はい」

「もー」

(我ながら、俺の淹れたお茶うめー)

「あっ灰君」

「はい、」

「ちょっと前に届いた貴方の荷物は全部隣の部屋に置いといたから」

「?はい、ありがとうございます」

 その後仕事を再開させ、大人2人は、灰でも潜れそうな階層から取れるアビスの宝を欲しがる人に営業を掛け、灰はお茶汲みの基本を胡桃から習ったり敬語の勉強をするなどしていると時計の針は退勤時間を指していた。


「終わったーーーーーー」

「おお、じゃあ胡桃気をつけて帰れよ」

「はい社長失礼します。灰君も今後ともよろしくねー」

「よろしくお願いします」


 定時になったら早速と荷物を纏めて帰った胡桃を見送りながら敬語で挨拶した灰は、1つだけ疑問に思う事があった。母と2人で住んでいたボロアパートは無理心中しようとした為、大家に追い出されたのだ。

 

 住む場所は気にするなと言われてはいるが一体何処にあるのだろうかと思考を巡らせるが答えなど出るはずもなく、素直に凛に聞くと驚きの答えが返ってくる。


「ああ、お前オフィスの隣に私が偶に泊まり込みで仕事したい時に使ってる部屋があるからそこ使え、私も偶に泊まるから、掃除は小まめにやっとけよ。あっ、後シャワーはあるが洗濯機は無いから近所のコインランドリー使えー」

「マジかよ…」

 胡桃が荷物がどうこう言ってだ事を思い出して漸く彼女の言葉が腑に落ちた灰だったが凛が用意した思わぬ借宿に絶句する他無かった。こうして狼原灰の冒険者としての新生活がスタートを切ったのだった。

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