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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
37/44

36話 人狼形態

リアルが忙しいので2日に1回投稿にシフトチェンジしたいと思います。

「バトンタッチだ」


 カイは交代宣言と共にハジメを背に前にでる。未だ勝負は付いてないと悟っているからだ。


 カイには、今の攻撃は綺麗に決まったが、第3位階を倒せたとは、考えられず静かに構える。


 数秒後、案の定トオルは立ち上がり、首を回す様にして音を鳴らしながら静かな殺意をたぎらせてカイと向かい合う。


「さっきの狼の姿からもしやと思ったが、まさか変身(トランス)型のスキルを持ってるとはな。そこの赤髪のガキもそうだが、若くしてその才能、正直嫉妬するよ」

「?俺より強いくせに何言ってんだ」

 カイは自身の正直な思いを吐露するトオルに訝しんだ目を向けつつ話を聞くと、トオルは自笑気味に己の才能の無さを憂い始め羨望と嫉妬が入り混じった目を向ける。


「何って、才能の話さ君ぐらいの歳になれば分かって来るだろ?私はもう冒険者になって15年も立つというのに、油断していたとはいえ、ルーキーですらない駆け出しに此処までやられてるんだ。いい加減天才やら超えられない壁って言葉が頭の中をチラつくさ」

「おれは才能とか一々考えた事ねぇから知らんけど、随分と卑屈だな」

「ハハッまぁ、そりゃ卑屈にもなるさ、随分と多くの同期や下の世代に追い抜かれてきたからね」

「他人と比べるなんて疲れないか?俺だって貧乏で食うものがない時そういう偉いやつになる妄想したけど虚しくなるだけだろ?」

「若いな。そういうのは社会に出て大人になると出来なくなっていくんだよ」


 若き才能に触れた影響かトオルは既に失ってしまった何かをカイとハジメに重ねる様な目を向けた後、その迷いを取り除く為、数秒瞑目する。


 再び目を開けた彼の目には静かな殺意だけが燃えており、静かに腰を落としナイフを構える。その構えには以前の様な驕りも油断もない、目の前の存在を舐めて相手に出来る敵ではないと先程の一撃で理解したからだ。


 数秒もの間両者は動かない。互いに互いの隙を探り合っているのだ。フェイントの可能性を視野に入れつつ初手で決めれなかった時の立ち回りを考えるなど、心理戦が始まっていた。


 たが、その均衡は早々に破られる。先にカイが仕掛けたのだ。心理戦はトオルのほうが対人戦闘の経験が多い分有利である点や、ハジメの怪我具合、人狼姿の維持を考えた結果、カウンター狙いの誘いの罠であってもこちらから仕掛け早期決着を目指すべきと判断したのだ。


 人狼と化したカイは少し振るうだけで人の身体など簡単に抉ってしまいそうな鋭い爪を刃先にし、手刀の形から突き技を繰り出す。トオルは自身の心臓目掛けて突き出される突きをナイフで受け止める。


 余程カイの爪は硬かったのか、爪とアビス探索用の特性ナイフがぶつかった瞬間金属同士がぶつかった様な衝突音がアビス内に響く。

 

 鋭利な人狼状態のカイの爪は、欠ける事もなくトオルのナイフと鍔迫り合いを演じている。両者力で押さえ込もうとするが、拮抗しているのか両者の後退背する事なく膂力比べが続く。


 数秒後膂力比べの勝敗が決する。カイは仰け反らない様後退を続けるが次第に段々後ろへと押され始め膂力ではトオルには敵わないと分かる。すかさず蹴りを繰り出し、避けられたものの距離を取ると事に成功する。


(この状態でも膂力ではかてないのか…次はスピードだ)


単純な技量や経験で勝てないならフィジカルに物を言わせてゴリ押しで勝とうというカイの魂胆は第3位階の膂力の前に半ば負けるが、未だスピードが残っていると、直様切り替えて次にスピード勝負に移行し巌窟の中を疾走する。


 カイは、撹乱と加速目的で巌窟の中を不規則に駆け回る。カイは、爆発的な加速力を見せ直様トップスピードに至ると時には横の岩壁や天井を一足で移動し、3次元の機動をみせ始める。


そして死角からの超速の一撃がトオルに放たれ、次の瞬間山勘で咄嗟に顔の前に出したナイフを持った右腕があらぬ方向に折れる。


「チッ!!」


 トオルは第3位階になって久しく感じていなかった骨が折れる鈍痛を感じ思わず舌を打つ。そして、長年戦闘時に培った理性が自身の動体視力を持ってしてもカイの姿を追えぬ程その速さを持っている事に焦りを覚える。

(初速からトップスピードへの加速、どれを取っても速さは自分が負けていると認めざるを得ないな…だが、未だそのスピードに慣れていないし、動きも直上的だ)


 トオルは痛みを頭の片隅に追い出し、冷静瞑目して視覚以外の五感を研ぎ澄ます。まるで跳弾の様に巌窟内を飛び回るカイが、壁や地面を蹴る音を聞き取り音の感じから此方に飛んで来る音が聞こえた方に向かってナイフを投げる。


「グッ?!」


 カイが、苦悶の声を漏らした後トオルの右頬に強烈な痛みが走る。トオルが吹っ飛びながらも眼を開けると、カイの右脚の太腿には深々とナイフが刺さっていた。


しかし、カイは畳み掛ける様に怪我した足を気にする事なく踏み込み加速し、追撃を入れようと猛追する。(足がやられた。このままスピードが落ちたら勝ち目はない。此処で仕留め切る!!)

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

痛みを追いやる様に声を出して先程よりいく段か落ちたスピードで迫って来るカイにトオルは体勢をととのえながら不敵に笑い構え直す。


「フッ受けてやるよクソガキ!!」

 

 直後両者の常人の域を超えたノーガードの打ち合いが始まる。

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