34話 舐めプ
昨日はリアルが忙しすぎ、投稿できませんでした。すみませんでした。
「ぶっ殺してやる!!」
始末屋デージーの社長トオルのその言葉を皮切りに戦闘が始まる。先ず最初に動いたのはカイ、彼はトオルから目を離さずノールックで岩壁を殴り、割れ出た細かい石を手に投石する。
仕留める為ではない。相手がどの程度の実力を持った者なのか、調べる為の投擲であった。石は空中でひび割れ散弾となり、常人なら避けることも出来ない物となってトオルに襲い掛かる。
投石の散弾は凄いスピードで飛んでいき、狂気の笑みを浮かべるトオルとの距離を瞬く間につめる。((当たる!!))カイとハジメがそう確信した瞬間トオルの身体がブレる。
ノーモーションからの動きだしに関わらず、持っていたナイフを使い石の散弾を見事に全て捌ききる。トオルは余裕の笑みを浮かべながら、唖然とする2人にたった1つの事実を伝える。
「予想以上に早かっただろう?残念だったな…私の位階は第3位階だ」
2人は技量と身体能力が、合わさった早技を見た後に告げられた言葉を聞いて自分達が想定した以上の戦闘力を持った相手だと理解し緊張から冷や汗を浮かべながら再認識する。
カイはハジメにはあの速さを捌くのは無理だと判断し、ハジメの前に立つ。ハジメも自身の目で追いきれない程の早技を見て自分に出来ることは必殺の一撃を叩き込む事だと理解し、準備を始める。
「今度はこっちの番だ」トオルはそう言い放った後、倒れる様にして前傾姿勢を取り加速する。そしてカイの顔面目掛けてナイフを振るう。
「うぉ?!」
トオルにとっては小手調べと遊び感覚で放った一振りをカイは上半身をのけぞる事でスレスレで躱す。一重に躱せたのは、スキルを1割ほど発動させて動体視力を上げていたからだろう。
追撃の一撃が繰り出されようとしていたカイは、仰け反りの態勢からバク転と同時に蹴りを放つ事で距離をとるが、難なくガードされ右の中段蹴りを食う。
「グホォ」
今まで食らった事のない重さと威力に膝を崩しそうになるが、カイはそれを根性で堪え獣の瞳を血走らせながら反撃を開始する。
「フフッ、少しだけ遊んであげますよ」
「ラァ!!」
本能に身を任せたカイは無数の拳と蹴りの乱打を繰り出すが、トオルの反応速度は凄まじく攻撃を見てからナイフを持っていない左腕で難なく捌く。
「遅く、柔い攻撃ですね」
「ゲホぉ?!」
気づけばカイは、ダメ出しの言葉と共に鳩尾に1発入れられていた。腹から全身に広がる痛みに耐え切れず今度こそ膝を降り体勢を崩す。
「蹴りやすい位置にきましたね」
「カイ逃げろ!!」
ハジメは、大規模な範囲攻撃の準備をしていたが、目の前の一方的な光景に耐えられず声を張り上げる。
だが、仲間の声に僅かに反応し正気を取り戻したカイには、気づいた瞬間顔面に靴が迫って来ており凄まじい蹴りが炸裂する。
「カイ!!ックソォォォォ!!」
凄い勢いで数メートル吹っ飛び岩壁に激突したカイの安否を心配して名前を呼ぶが、トオルの次の標的に自分が、選ばれた事で準備していたまだ威力不足の魔術を解き放つ。
目で追いきれない相手に当たる事が出来のかという不安を押し殺す為声を張り上げ、少しでも威力を上げる為に風に砂利を攫らわせる。殺傷力を上げた風が先程までトオルが立っていた場所に着弾する。
「残念私に当てたければ、スピードと範囲が足らない」
ハジメは背後から聞こえる敵の声にギョッとしつつも両手杖で、殴り掛かろうとするが、杖ごと斬断される。
「カハッ?!」
斬られた杖と装備のお陰で致命傷には至っていないが、装備の下では大量の血が流れる。あまりの痛みと出血に膝をつきその場で動けなくなる。
「フフッでは、先ずは1人っと」
楽しげに1人目の宣言と共にナイフを振り下ろそうとするトオル、恐怖と痛みを与える為に視認できる速度でゆっくり殺そうとするが、もう意識が無いだろうと無視していたカイから予想だにしたなかった反撃を食う。
「やめぇーろぉーーー?!」
完全に灰狼の姿となったカイが、第2位階の身体能力に加えて人間を超える狼の俊敏性を上乗せした、最速の一撃がナイフを持った右手に牙を剥く。
「ぐっ?!狼?!く、…ってぇなぁぁ!!」
いきなり現れた灰狼に驚くと同時に右手生じた痛みと地に落としてしまったナイフを見てトオルの理性が飛ぶ。
明らかな格下の若造に一撃も貰い、尚且つ傷をつけられた事でプライドを傷つけてられたトオルは、和やかな表情が崩れ抑えられない怒りに身を任せて本能のままに暴力を振るう。
「ああ、いけないいけないこれだから私はダメなんだ熱くなるな。」
吹っ飛んでいく灰狼のカイを他所に自制しようと自分に言い聞かせる。
一方、灰狼状態のカイは痛みに耐えながらハジメの横に転がる。ハジメの様に血こそ流していないが、第3位階の膂力は凄まじく息するのが難しい程の痛みが全身に響ている。だが、カイは今は痛みを頭の片隅に追いやりハジメに作戦を伝える。
「ハァハァ、俺がこのままスキルを使って時間を稼ぐ。お前はでかいの1発用意しとけ」
「ゼェゼェ、いや、さっきの見ただろ?!どう見てもスキル使ったお前より速かったぞ」
「じゃあどうすんだよ!!」
「ジャイアントスパイダー作戦をそのまま流用する。準備しろ、時間稼ぎは俺がする!!」
「その身体で無茶だ!!しかも相手はお前より2つも位階が高いんだぞ?!」
「ゲホ、だが、油断している」
「!!」
「あいつは何処まで行ってもこっちを舐めてる。もう何度も俺達を殺せる機会はあったのに未だに勝負を付けないのは、舐めて遊んでいる証拠だ」
「…それってムカつくな」
「そうだな。ぶっ飛ばしてやろうぜ」
最後に冗談を言った後反撃を開始するべく立ち上がる2人に対しトオルは「相談はおわりましたか?」と再び纏い直した余裕を見せる。
「あぁ、終わったさ。お前をぶっ飛ばす相談がな」
ハジメはトオルに向かい合い、彼のプライドを刺激する為挑発する。予想通りトオルの顔からは、笑みが消え、殺気が漏れ出る。
ハジメは恐怖を心の内に抱えつつも笑みを深める。何故なら1人じゃないからだ。
「お前を倒して、俺達は生きていく行く!!『風穴』」
ハジメの言葉をトリガーに風が吹き荒れる。




