33話 始末屋襲来
「全然いなくね?」
「おかしいな、前回遭遇したところ含めてかなり歩き回った筈なんだが…」
深度1エリア進んだ先、岩壁の色が赤みに変わる深度2エリアとの中間層にて、カイとハジメはこの異常現象に小首を傾げる。
2人が不思議に思うのも無理はない、事前の調べではジャイアントスパイダーの分布は徒党を組むモンスターでは無い。
本来ジャイアントスパイダーは深度2エリアに侵入する冒険者の壁として立ち塞がる様な場所に出没し、それぞれ離れて大きな道を1個体が縄張りにしている。
その為、虱潰しに深度2エリアに続く大きな道を選んで進めば出会えると踏んでいた2人は、予想だにしない現状に首を傾げる事しか出来なかったのだ。
「ストライキか?」
「いや、モンスターは雇われてねぇよ?!ったく、バカやってねぇで、早く原因調べねぇと…」
最近覚えたストライキという単語を使い真面目にモンスターの職務放棄を疑うカイをハジメが突っ込見ながら辺りを見渡していると、岩壁が動いている部分を見つける。
「これは…」
「どうした?」
「いやこれ、戦闘跡かなって」
「あー確かにそうかもな。もう終わりかけだけど岩壁が微かに再生されてるし、あっ、でも匂いは薄いから違うかもなー」
カイの言葉を聞き、ハジメは黙り込み思考を巡らせる。(どうゆうこだ?誰かがジャイアントスパイダーだけを率先して狩っている?だが、カイの鼻でも戦闘を認知できてい。痕跡を消してるとしたら?でもアビスでモンスターを狩るのに痕跡を消す必要なんてどこにー)「いつまで考えこんでんだ!!」「ぐわっ?!」
幾ら考えてもこの意味不明な現状に納得できる答えが出せずに悶々と考え込んでいるハジメに、カイは膝カックンをお見舞いし、思考の海から浮上させる。
「何すんだ?!」
「いや、考えても判断材料少なすぎて相当頭よくねぇとわかんねぇよ。それより俺達が決めなきゃいけねぇのは、進むか、引き返すかのどっちかじゃねぇのか?」
「!!」
現状を詳しく把握するのも大切ではあるが、カイの言う通り、わざわざ難敵が姿を消した場所に長居する必要はない。
進むか引くか、一見シンブルな発言にも聞こえるが、自分達の命がかかっているだけにその判断は、決断力がいる。ハジメは暫く黙り込み何かを悩む素振りをした後カイの意見を聞く。
「カイお前はどう思う?」
「俺か?んー、きみが悪いし、今は引き返そう」
ハジメは自身の予想ではカイは進むと言うと考えていただけに少し驚き、その真意を問う。
「何でそう判断したんだ?」
「何でって、こんだけ探してもいないんだから、なんか起こってるんだろ?なら今日は諦めて自分達の命優先した方が良いだろ。きっと凛も許してくれるよ」
「お前…意外と物を考えてたんだな」
「バカにすんじゃねぇよ?!」
(割り切るか、うん。やっぱり引き際は大事だよな)
カイの命を賭ける程の事じゃないと割り切った考え聞き、突然のイレギュラーに戸惑い決断が下せず迷っていたハジメも納得し、退却を選択する。
「よし、じゃあさっさと帰るぞ」
「おう」
「いやー、それは待っていただきたい」
2人が踵を返し早々と正道を目指そうとしたその時、深度2エリアに続く巌窟の奥から優しげでありながら背中をゾッとなぞられるような声が聞こえる。
本能に任せて慌て飛び退き臨戦体制を取る2人、彼等の前には、優しげな笑みを浮かべるスーツ姿の長身の男だった。
「何だお前?!ビックリしたじゃねぇか」
「殺気飛ばしやがって何のつもりだ?!」
「えー、何もしませんよー。」
「「いや、刃物向けてくる奴の言う事は信用出来ねぇよ」」
「それは…そうですね」
スーツの男もまさか真面目にツッコミ入れてくると思っておらず、少し微妙な空気になるが、気を取り直したのか、再びテンションを高め自己紹介する。
「私の名前は、花垣トオルと言います短い間だと思いますが、以後お見知りおきを」
「えっ?あっ、どうも狼原カイと申します?」
殺してやるぞと暗に言ったにも関わらずまともに挨拶されトオルは再びペースを崩される。
(何だこのガキ、まさか私の苦手な天然か?いやそれより、こんな和んだ空気で始末しては、始末屋の名折れ何とかしてムードを作り、恐怖の中で殺さねば!!)
トオルが、どう雰囲気をシリアスに持っていくかで悩んでいるとハジメが、カイを叱りつけていた。
「おい、何危ない奴に名乗ってんだよ!!」
(そうだ言ってやれ)
「あ?でも社会人は挨拶が大事って凛がよく言ってるぞ?」
「ケースによるだろうが、状況考えろ!!どう考えても今の言葉は、『直ぐ殺すから短い間だと思うけど知っといてね』的な奴だろうが!!」
「えっ、マジか?!なんか大人にしては変な言い回しだなー思ったけど、そう言う意味だったのかー」
ハジメに微妙に伝わらなかった意味を捕捉されるという屈辱を味わう始末屋デージーの社長花垣トオルは、怒りのボルテージを段々と上げていた。そしてカイによる畳み掛ける様な無自覚な煽りがとどめとなりキレる。
「解説どうもありがとう。伝わならなくてごめんなさいね。今度は下手な言い回しをせず言いますよ。…ぶっ殺してやる!!」
何とも閉まらない形で刺客との直接対決が始まるのであった。
リアルが忙しいくて、遅れてしまいました。遅れてすみません。




