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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
29/44

28話 カムイ

「ウラァ!!」

「ジャア?!」


 カイの放った右ストレートが、最後の石鱗リザードの石の鱗ごと内臓を粉砕し、エーテルに還す。カイは、入院していた数日のブランクを埋めるべく、暫くハジメの手を借りず1人で戦闘をしていた。


 以前なら苦戦していた、モンスターを複数体同時に相手でも危なげなく勝った為、カイ自身も驚きとどめを刺した右拳を眺める。


「絶好調だな」

「ああ、位階が上がった訳でもないのに、身体能力が上がった気がするよ」

「マジか?!あぁ、俺もスキル欲しくなってきたな」

「お前には魔術あるからいいじゃんか」

「そう言う話じゃねぇだろ…」


 ボーッと自身の右手を眺めるカイを先程まで後方で見守っていたハジメは声を掛けながら水筒を手渡す。カイは水筒を受け取りつつ、己の能力が退院前と違い大幅に向上したのは、スキルが関係してるのではと自身の仮説を立てるが恐らく当たりであろう。


「ぷはぁ、よし、そろそろ探索再開しようぜ。入院したせいで、まだまだ納品数が足りてないのばかりだしな」

「そうだなもう4月も半分切ったし、ペースを上げてくぞ」

「おう!!」


 カイは、遅れを取り戻すべくアビスの奥へと足を進め、それに同意したハジメも後に続く。


 現在2人はアビス深度1エリアにて、依頼のされた素材を納めるべく、探索を再開させていた。退院祝いをした翌日からカイは普通に学校に行き、放課後は、ハジメとアビスに潜る日常に戻ったのだ。


 病み上がりであろうが、生きる為には働かなければならない。人生身体が辛かろうが、やる事はやらなければお金は稼げないのだ。


 そうして、探索を続けていると、索敵に於いてもカイの新スキルは思わぬ活躍をみせた。


「止まれ!!上にいるぞ」

「うぉ!!全然気づかなかった、あぶねぇな!!」


 ハジメが驚くのも無理はない。カイの忠告に従い足を止め天井を見上げると、これから進む通路の天井に張り付いた大量のスライムがいる。


 これに気付かず進んでいたなら、2人まとめて顔に張り付かれ、窒息死間違いなしだっただろう。ハジメはその事に遅まきながら気付き冷や汗を流す。


(あぶねぇ…本当に気付かず進でいたら、2人ともやられちまったんじゃねぇか?改めてやばいところだぜ、アビスってのは)


 ハジメがジャイアントスパイダーの様な単純な強さや毒とは、また違った奇襲攻撃に脅威を感じ、顔を青くしていると、相棒のカイが無自覚にフォローを入れる。


「まぁ気付けて良かったじゃんか、これ全部倒したら結構ドロップするじゃねぇか?」

「あぁ、そうだな。任せろ」


 その後ハジメの風魔術で天井にこびり付いたスライムを地に落とし、1匹たりとも逃す事なく踏み潰す作業をこなしていく。


「大漁大漁」

「ああ、思ったより多くドロップしてたな。この分だとスライムは今日明日には、納品数に届きそうだ」

「本当か?じゃあこの調子でどんどん見つけてやるぜ」

「本当、お前のスキル便利だなー。五感も強化されてんだっけ?」

「ああ、まだしっかりとした調節は出来ないけどスキルを1〜10%ぐらいで使うと嗅覚を中心に五感の性能が上がるんだ」

「ほえー、だからさっきもスライムが上にいるってわかったのか、」

「ああ、スライムの匂いが上からしてきたから気付けた」

「頼もしいな、それじゃこれからも索敵は頼んだぜ」

「任せろ、これからは奇襲なんかさせねぇし、モンスターもどんどん見つけてやる」


 カイは気付いなかったが、今の一連の行動は奇しくも、モンスターの接近や天然の罠なんかを察知する役割『斥候』と似た様な仕事振りだった。


 ハジメはその事に気付き上手くカイをその気にさせて、探索のペースアップを図かる。


「ハァハァ、まぁこれだけ集めたんだし今日はもう帰るか」

「ゼェゼェ、そうだな帰りもモンスターとは出くわすし、そろそろ引き返すか」


 数時間後、ハジメの狙い通り、2人のバックパックの中には以前より、明らかに多いモンスタードロップが入っていた。これもカイの嗅覚が、モンスターの匂いを捉えたお陰でエンカウント率が上がったお陰だった。


 しかし、多くエンカウントするという事は、それだけ戦うと言う事、いつも以上に戦う事となり、効率は上がったが疲労度を上げる事となったのだった。


 帰り道はカイが選ぶ事となった。前回失敗を踏まえてハジメに道を選ばせるのは危険と判断されたからだ。途中モンスターと何回か会敵するが、2人は危なげなく倒し、正道に出る事に成功する。


「よっしゃ正道」

「思ったより早く出れたな」


丁度他の冒険者達も地上への帰還を目指して正道を通っている為、殆どモンスターと戦う事となく進んでいると、不意にハジメがスキルについての話をする。

 

「そう言えばお前のスキル診断はいつ受けに行くんだ?ちゃんと受けないとスキル持ちとして正式に認めてもらえないぞ」

「あぁ、昨日凛とも話したけどゴールデンウィークにいくよ」

「そうかスキル持ちって履歴に書けるの強いらしいからちゃんと受けとけよ。あと、スキル診断ってスキルの名前も付けてもらえるんだろ?カッコいいのだといいな」

「いや、もうスキル名は決めた」

「ん?決めたって仮名か?」

「本名だ。夢に出てきた狼が名乗った名前にする」

「夢?名前は?」

「カムイ」

「おお、なんかかっこいい名前だな」

「だろ」

「スキル診断所にも言ってみたら案外その名前にしてくれるかもな」

「そうだといいなー」


 この会話以降、まだ仮名とは言え2人の間ではカイのスキル名前は『カムイ』という事で話がされる事になったのだった。


一部修正入れました

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