27話 スキルの使い方
スキルそれは変革の時を境に人類が新たに獲得した可能性の1つだ。人によって能力は違い、スキルの物によれば富や強力な力、名声が直ぐに手に入る正に夢の力だ。
社会に出てもスキル持ちは優遇される為、皆一度は手に入れようと考えるが、現実はそう甘く無い。会得には十分な経験、技量、意思を揃える必要があり、会得出来ずに生涯を終えるものも少なくない。
そんな希少な人材の仲間入りを果たしたカイは、現在coffee cafe白馬で退院祝いをされていた。
「じゃあカイの退院を祝して乾杯ー!!」
「「「かんぱーい」」」
退院祝いには、凛、胡桃、カイ、ハジメの探索会社パキラの面々が参加しており、乾杯の音頭を取った凛に続いて皆ティーカップを掲げる。
「やっと、まともな飯を食えるー」
「いいか?此処はカフェだ。コーヒーを飲む所であって定食屋ではないんだ。だから食いすぎるなよ?フリじゃ無いからな絶対に食いすぎるなよ」
「ん、わかった。あっ店長ーハンバーグカレー追加でー」
「やっぱ分かってねぇだろお前?!」
ずっと病院食だったカイは成長期の胃袋が量を欲し更に祝いという事の為、凛の奢りである事で金銭の心配をしなくて良くなり、更に歯止めを失わせていた。
凛のフリではない本気の忠告はカイには届かず、完全に無視され、次々に注文が飛ぶ。お会計で言い渡される金額を想像して、絶望顔の凛とは対照的に自分達の財布に影響のないハジメと胡桃は、純粋な笑顔で退院祝いの言葉を述べる。
「それにしてもカイ早く退院出来てよかったな」
「そうそう、後遺症なんかもなかったしねー」
「もぐもぐ、あぁ、新しく手に入れたスキルのお陰だな」
そうカイは、新たに得たスキルの影響もあってか第2位階でも異常なレベルの回復力を診せ、医者を驚愕させた後、僅か3日で病院から退院したのだ。
「スキルってジャイアントスパイダーを倒した時のやつだよなどんな能力なんだ?」
「あっそれ、私も気になってたんだー」
「もぐもぐ、これ全部食べ終わったら見せてやるよ」
「「えー」」
話題はカイのスキルの話に移り、ずっと気になっていたハジメと胡桃が露骨にがっかりしていると、元気を取り戻した凛が隣からカイの肩に腕を回しゾッとする声で命令する。
「私の財布を空にしたんだ余興役ぐらいやれ、いいな?」
「…はい」
まだ口の中をモゴモゴさせつつも席を立ったカイに凛達の期待の眼差しが向けられる。カイが、口の中の物を飲み込んだ後、変化が起きる。
姿が変化する。全身から毛が生え、骨格すら変わっていく。目が獣のそれへと変わる。数秒後凛達の目の前に立っていたのは、金の眼を持つ灰色の美しい狼だった。
店内が鎮まり帰る。皆余りの変化に驚いているのだ。寡黙で有名な白馬の店主も流石に驚いたのか、2度見していた。
「…どうだ?こんな感じだけど」
「「「わっ?!犬が喋った」」」
「狼だよ!!」
そこからは喋る狼へと変身したカイの観察タイムが始まる。皆席から達包囲する様に触ったりつついたり、ほっぺを引っ張ったりする。
「でも凄いね。動物に変身できるなんて、毛がふさふさで凄いねー」
「ああ、だがこれ強いのか?犬になるスキルだろうーん、」
「狼な!!一様ジャイアントスパイダーに勝てたのはこのスキルのおかげなんだぞ。後凛つつくな!!」
「そうですよ凛さん。間違いなくこのスキルは戦闘向きです」
「そうだハジメ言ってやれ!!」
「人狼の時の姿はすごいんですよ!!二足歩行だったしなんこう…バビューンズカーンって感じで」
「…よし、なんかしょぼく聞こえるからもう擁護しなくていいぞ」
凄い浅い所で褒める胡桃とアビス探索向きのスキルなのか懐疑的な凛とは違いハジメの期待値は高かった。
擁護がとても下手だったハジメだったが、ジャイアントスパイダーとの死闘を見ていた為、戦闘特化のスキルである事に確信があるのだ。
「カイあの人狼の姿を2人にも見せてやれ、あの厳つい姿なら絶対2人共納得するって」
「…出来ない」
「え?なんで?」
ハジメは食い下がり、自身の推測を確かめるべく更なる変身を要求するが、意外にもカイに断られ怪訝そうな表情を浮かべてながらも訳を聞く。
「ま、まだな?、まだ慣れてないからかな何度変身しようとしてもこの姿になっちゃうんだよ!!」
視線を合わせず、気まずそうに言うカイの言葉にハジメは言葉を失う。
「…ダメです社長だめです。やっぱりこのスキル使えません」
「そうか、やはりダメか」
「早速見切りつけんな!!」
「イッテェー、クソお前噛み付くんじゃねぇよ?!」
「甘噛みだ馬鹿野郎ー」
「2人とも此処お店だから喧嘩したらダメだよ」
ハジメのあまりの変わり身早さにイラっとしたカイはその狼姿のまま飛びかかり戯れ始める。胡桃は何やら羨ましそうにしつつも2人の仲裁に入りハジメからカイを引き剥がす。
「くそ、やっぱり、戦闘には使えないのか」
「いや、早まるなカイ、なんとかなるかもしれんぞ」
「本当か?!」
「まぁ、待て、恐らくだが変身率のコントロールが上手くいかないんだろ」
「ど、どういうことだよ?」
「ああ、恐らく今のお前は、いつもの人間の姿を0、狼に変身した状態を100と仮定するなら0か100しか出せない状況なんだろう」
「「な、なるほど」」
「なら、変身率を自在にコントロール出来れば!!」
「単なる仮定に過ぎないが、ジャイアントスパイダーを倒した人狼の姿になれるだろうな」
「おし、やってやるっあ?!」
再び元気を取り戻したカイを見て我慢できなくなったのか突如胡桃は「ちょっとだけモフらせてーーー」とカイの首回りに抱きつき毛並みを堪能し始める。
「最高だよこの毛並みー私の借りてるマンションってペットダメだからあー癒されるー」
「く、苦しい」
そう彼女は、休日はドックカフェに行く事もある程の犬好きであり、狼のカイの姿を見た時からずっとモフモフしたがっていたのだ。
カイは嫌そうな表情を浮かべながらもハジメに向かって勝ち誇った笑みを浮かべた。
(あの、クソガキッ!! 胡桃さんのハグなんて羨ま
、けしからん事やがってぇぇぇ)
新たに得たスキルの力をある意味フルで使うカイにハジメは心の中でブチ切れるのだった。




