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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
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26話 夢の中

 これは多分夢だ。そう自覚出来るのも不思議だが不思議と夢の中だと確信している。何故なら俺は雪原のど真ん中で美しい狼と向かい合っているからだ。


 左右に視線を向けたり後ろに振り返っても辺りの雪原には踏み雪など無く、真っさらで踏みたくなる雪原が広がっている。どうやって此処まで来たのか全く分からない。


 そして前方には、俺の髪色と同じ灰色の毛並みを持った優美でかっこいい狼だ。狼は動く事なくただジッと此方を見つめてくるだけで、何もしてこない。


 よく分からないが、狼と暫く見つめ合っている。狼は吠える事も威嚇する事もせず唯そこに佇んでいるだけだ。

 

 いつもなら手懐けてみようと餌付けや撫でようと近づくが、不思議とそんな気分にもならず、1人と1匹で何処までも続く綺麗な雪景色を眺めていると、急に天気が荒れ始める。


 快晴だった空が曇り雪が降り出したのだ。次第に強くなり今はもう大雪と言っていいぐらいだ。これは勘だが、夢の終わりが近づいているのだろう。


 視界を確保するのも辛くなってきたその時、何か灰狼がいたか方から声が聞こえて振り返る。何故かは分からないが、目の前の灰狼が喋ったという確信があった。灰狼はもう一度口を開き、たった一言自分の名前を告げた。


『俺の名前は『カムイ』今はそれだけ覚えておけ』


 灰狼の言葉が言い終わると同時に目も開けられない程の雪が強まり視界が暗転する。先程より重い瞼を何度も瞬きを繰り返した後、意識が段々と覚醒する。どうやら夢から覚めたようだ。


 目が覚めてくると1ヶ月くらい前にも見た似たような白い天井が視界に映る。どうやら俺は、また病院のご厄介になっていたらしい。


 天井のシミを数えながら、この場合って看護師さんを呼んだ方が良いのか迷っていると、膝下に変な感覚がする為、肩の痛みに耐えつつ何とか上体を起こすと、見覚えのある女が寝ていた。


 病院ベットに突っ伏した凛は、小さな寝息をたてている。腕の隙間から覗ける顔からは、濃い疲労が見て取れる。


 窓の方を向くとカーテン隙間から日が差し込んでいる為、日が高いのは分かり切っている。こいつ昼間からなに寝てんだよ。だが、俺はどんなに嫌いな人間でも疲れて寝てる人間を起こす程冷たいやつでは無い。


 暫くの間凛の寝顔を眺めていたが飽きた為、看護師さんが来るまでの間暇つぶしをする。凛の長い髪の一部を手に取り、この前流れてきた動画で見た三つ編みに挑戦する。


 早く来ないかな看護師さん。そう考えながら、うる覚えで三つ編みを編んでいると、誰かが廊下の奥から懐かしい()()が近づいて来る。


「社長ー私もお見舞いに来ましたよー。ってええぇーーー?!カイ君起きてるぅ?!」


 あまりにも驚き過ぎて思わず手に持っていた花束を落としてしまった胡桃、いつもふわふわしている分こんなに驚くのはちょっとビックリだ。


「あっ、胡桃さんこんにちは」

「目が覚めたのね!!良かったー、このまま死んだらどうしよって心配したんだよ?」

「心配させてごめんね。まぁ、生きてたから良いじゃん」

「もう、帰ったら勉強時間倍にするからね」

「うへ、」

 勉強時間が増えてげんなりする、目が覚めてからずっと気になっていた事を聞く。


「ジャイアントスパイダーを倒した後から記憶がないんだけど、ハジメは?アイツは無事ですか?」

「彼も無事だよ。今日は週末で休みだから家族と一緒にいるんじゃないかしら」

「そっか、良かったー」

 一先ず2人とも欠けずに地上に戻れた事を安堵する。目尻を下げて微笑んでいる胡桃さんに今の状況

やどれほど寝ていたかを聞いてみる。


「俺ってどのくらい寝てましたか?」

「ああ、ごめん気になってたよね。君はそのアビスに潜った日の内に病院に運ばれてから3日ずっと眠ってたの」

「3日…」

「そう3日、私も社長も病院から連絡があって、慌てて病院に向かったんだから」

「えっ、凛が慌てるとこなんて想像出来ないんですけど」

「そうでもないよ。もうすっごく慌ててたんだから」

「はぁ…」

ちょっと想像つかないが、まぁどうでも良いって感じで全く心配されないより、全然マシだしいっか。


 その後も胡桃さんから三つ編みの仕方を教わりながら、自分がどうして助かったのかの話を聞く。何と凄い人達に助けてもらっただとか。


「報告書にもあるから後で読めばわかるんだけどね。アビス内でモンスターから逃げながら地上を目指すハジメ君とカイ君を助けてくれた人達がいたの。その人達の中に医療をかじった人がいて適切な処置と高額な解毒薬を使ってくれたお陰で助かったの」

「えっと、どなたですか?お礼言いたいんですけど」

「聞いて驚かないでね。何とあの、アーサー・ガルシアが率いる探索チームに助けてもらったんだって!!」

「えっ?!」


 思わず素っ頓狂な声を出してしまうが無理もないと思う。その名前は俺もこの業界に入る前から知っている程有名なトップランクの冒険者の名前だからだ。


「本当にアーサーが助けてくれたんですか?」

「うん。本当、ほらそこに立てかけてある奴がアーサーのサインだよ。立ち去る時にハジメ君がお願いして書いてもらったんだって」

「えっ、?!本当だ!!」

 枕元に置かれた色紙には字体を崩し過ぎて分からないが、誰かのサインが書かれてある。恐らくこれがアーサーのサインだろう。


「いつか…お礼言いたいです」

「礼は不要だって、言ってたみたいだけど今度お手紙出そうね」

「はい!!」


 このご恩決して忘れずにいよう。いつか倍にして返せるようになって。そう心に新たに誓っていると、流石に起きたのか半目の眠そうな凛が涎を垂らしながら起きる。

「んあっ?…カイ起きたのか?!」

 その後、俺が起きた事を一頻り喜んだ凛は、三つ編みだらけになった自分の頭に気づき、看護師さんが叱りに来るまで凛に頭をグリグリされるのだった。





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