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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
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25話 新たな力

 少し強引な方法ではあったが、ハジメをジャイアントスパイダーの攻撃からなんとか逃す事に成功したカイだったが、次の瞬間避けようも無い毒牙が、防具など歯牙にも掛けずに突き刺さり顔を歪める。


 最初は肩を突き刺された痛みが来るが、そんな事が生優しいと言えるぐらいには、次に来た鈍く重い不純物が体内に入り込む感覚と激痛が同時に頭から爪先まで駆け巡る。


「うッ?!!!!」


 最近生傷が絶えない冒険者稼業にも慣れ、痛みにも段々と耐性がついてきたカイであっても、経験した事のない程の痛みに自然と声が漏れる。

 

 刻一刻と死に近づいていく。痛みやケースは違えど自身の命の灯火が段々と小さくなっていくという忘れ難い()()感覚を再び感じる。

(やばい、死にそうな時の奴だこれ…死んだらダメだ未だ生きて俺にはやる事がある筈だ!!しっかりしろ俺ぇ!!)

 カイは次第に遠くなっていく意識を手放なすまいと自身に喝を入れ、今も自分を殺し切ろうと毒液を体に流し込んでいる毒牙をへし折ろうと全身に力を込めようとする。


しかし、現実は無常であり既にカイの身体は、ジャイアントスパイダーの毒によって抵抗する力を削がれていた。

(クソ、此処までなのか?)


 1秒経つ毎に悪くなっていく状況の中既に腕1つも上がらない状態のカイは諦観し、無意識に遠くなる意識をそのまま手放してしまおうとする。


「諦めんじゃねぇーーーーーー!!」


 風音と共にハジメの怒声がアビスに響くき、カイの意識を繋ぎ止める。


 カイが再び目を開けるとボヤける視界には、ヤクザの男を倒した最後の一撃『槍風』をジャイアントスパイダーの横顔に向かって打ち込まれえいた。


「ヴェホ?!」

小台風の如き『槍風』の一撃により、ジャイアントスパイダーは、奥へ吹き飛びカイの身体から毒牙が抜けるが、受け身も取れないカイは大ダメージを受ける。

「良し!!うまくいった!!」


 半端な威力しかない魔術では目の前のモンスターは揺らぎもしないと判断したハジメは、時間を要しても必ず大ダメージとカイ助け出す隙を生み出せるであろう『槍風』に賭けたのだ。


 賭けに勝ったハジメは、緊張から来る手汗を杖にを握る手に力を入れて誤魔化し、ジャイアントスパイダーとカイの間に立つ。

「お前、勝手に生きる事を諦めんじゃねぇぞ!!お前が死んだら、ニコが悲しむだろうがぁ?!」

「な、んで、ニ…コ?」

「帰ったら本人に聞いてみろぉぉぉ?!」


 死にかけのカイに檄を飛ばしながらハジメは、次の魔術の準備に取り掛かる。先程の攻撃は効いたはずだが、あのモンスターに致命傷を負わせられたとは、露ほども思っていない故の行動だった。


 そして、それは半ば当たっていた。ジャイアントスパイダーの顔面は半ば潰れ大きく形を変え、全身もよく見れば傷を負い所々血をだしてはいるものの、既に立ち上がり2人を逃す気も殺される気も無いと言わんばかりに脚を前に出し威嚇行動を取っていた。


 怒れるジャイアントスパイダーの様相に2人は思わず息を呑む。ハジメは後らにいる瀕死のカイの容体を横目で見る。一刻も早く病院に連れて行かなければならない状態なのは、誰の目で見ても明らかだ。

「渦巻け」

 ハジメの中でも無謀な戦いだというのは、彼自身ここ暫くの探索で分かっているが、彼の辞書に仲間(カイ)を見捨てて逃げる選択肢はない。魔術を発動させ威力を上げ始める。


 一方カイは、目の前で繰り広げられる防戦一方の戦いを打開するべく、血反吐を吐きながらも立ちあがろうとしていた。

 「ゲホッゲホッ」

(ハジメの言う通りだ。まだ死ねねぇ、俺は…俺は、まだちゃんと生きれてねぇ、このまま辛いだけの人生だったなんて、あの世の母さんに言えるわけねぇ、絶対に生きてやる!!)

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 声を出し立ちあがろうとし、上体を起こし立ちあがろうとするが、足が痺れ躓き前に倒れてしまう。

(力が欲しい。生きる為の力が、望んだ生き方をする為の力が、欲しい!!欲しい!!)

 


基本的にスキルは技量、経験、意思の要素が揃い発現する。しかし、何事にも例外はある。時として稀に強い意思からの渇望が、技量や経験を補填し潜在的な力を形にする事がある。


 つまるところカイが死に際で抱いた強い渇望が、奇跡を呼んだのだ。カイは本能のまま無意識に、スキルを発動させ立ち上がる。


 カイは、起き上がる過程でその姿を大きく変化させていた。背はふた回り大きくなり、獣のそれへと変化していく。

 ハジメとジャイアントスパイダーの今にも崩れそうな均衡をただ見る事など出来ないカイは、変化の途中であるにも関わらず走り出す。


 獣の金眼が獲物を見定め風の防壁をこじ開けようとしている脚目掛けて加速し、10メートルはあった距離一瞬で間を詰める。そして本能任せの蹴りを入れる。


 次の瞬間ジャイアントスパイダーの左脚の1つは使い物にならない様にあらぬ方向にへし折られていた。

(新手?狼男?いや、カイなのか?!)


 最初こそ警戒して杖を構えていたハジメだが、未だ変化が完成し切っていない所々にある元のカイの要素から自分の窮地を救ったのが、カイだと気付く。


 カイはハジメの無事を確認すると、再び加速して次の脚に攻撃を仕掛ける。


ジャイアントスパイダーも迎撃しようと立つのに必要な脚を残し、残りの脚全てを使って返り討ちにしようとするが、カイはその全ての攻撃を躱し身体を支える2本の脚を破壊する。


 カイは、身体を支えていた脚が折られバランスを崩し倒れてこもうとするジャイアントスパイダーと地面の間を走り抜け、岩壁を足場に1回蹴り跳躍すると、そのまま体勢を崩したジャイアントスパイダーの頭の上に踵落しをいれる。


留めとばかり繰り出さたカイの踵落としはバキと音を立ててジャイアントスパイダーの頭を完全に潰す。


 暫く手脚を動かしていたジャイアントスパイダーだったが、頭を潰された事で完全に生命活動を止め、物言わぬ骸と化す。


「やったのか?…って、カイお前大丈夫なのか?」

 あまりにも突然の決着に呆然としていたハジメだったが、直ぐにカイの容体が気になりエーテルに還り始めているジャイアントスパイダーの頭だった場所に自分も登り近づく。

「おいカイ、大丈夫なのか?…血は止まってるけど、意識無いし顔色がやべぇ。早く病院につれてかねぇと」

 カイは、人狼とも人とも言えない半端な姿のまま固まって意識を手放していた。


 ハジメは、焦りながらも容体を確認した後、カイを背負い地上を目指して駆け出した。


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