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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
24/44

24話 ジャイアントスパイダー

 体格差それは同じ人間同士であっても戦闘力に大きく影響を与える。大きい身体は、長いリーチや体重、腕力など様々な利点がある。


 それが鋏角類の蜘蛛に適応されると、どんなに優れた身体能力を持っていたとしても第1位階の人間が出せる身体能力では埋める事の出来ない差となる。


 現にジャイアントスパイダーは、アビス庁新宿分室が保管している記録の中では、特殊なケースは多々あれど数多くの低位階冒険者を食い殺して来た。アビスを探索する上で冒険者達がぶつかる最初の壁である。


「逃げるか?」

「お前は兎も角俺は追いつかれて死ぬ」

「じゃあ、やるか」

「おう」

 カイはバックパックを下ろしてハジメの前に出る。ジャイアントスパイダーの鈍く光る八つ目の視線が自然とカイに向けられる。

 全長8メートル高さは2メートル程のスケールの大型モンスターと実際に対面してみたカイの感想は少しズレたものだった。(デカい蜘蛛ってめちゃキモいな)


 そんな失礼な思考が、ジャイアントスパイダーに伝わったのかは分からないが、威嚇する様に口が開き毒牙が揺れる。

 蜘蛛の口の構造なんて自分から調べなければ一生知る事がない為、正面から初めて見る蜘蛛の細部を見させられる。2人はそのグロさから何か喉奥からなにかが込み上げてきそうな気分にさせられる。


「グロいもん見せやがって」

「同感だ。吐きそうだ」


 げんなりしながらも怒りを募らせるカイに対して、片手で口を抑えたハジメは只々気持ち悪そうな物を見る目をしていた。

「接近させない様頑張るけど、つかまんなよ」

「されたら死ぬから、絶対に食い止めろ」

「わかった」


 ジャイアントスパイダーが巨体に見合わぬ軽快な動きで10メートル近くあった間合いを一瞬で詰める。そのジャイアントスパイダーの進撃を止める為に、カイは左前脚に向かって回し蹴を放つ。


 カイとしては、実際の力が分からない為、小手調べの意味も含めた、そこそこの全力で放った一撃だった。しかし、ジャイアントスパイダーには何の痛痒も感じ無かったのか少しの硬直の後、直様毒牙を突き立てようとする。


「やばっ」

「吹き飛ばせ!!」


 ジャイアントスパイダーの耐久性と攻撃性の見積もりを完全に誤ったカイは、避けようがない毒牙が後少しでその身に突き立てられようとしていた。


だが、その絶体絶命の危機を救ったのはハジメの風だった。巨体のジャイアントスパイダーを吹き飛ばす程の風を発生させる事の出来ないハジメは、発想を変えてカイを動かす事に注力したのだ。


ハジメの風が僅か数メールカイを吹き飛ばし、受けるはずだった致命傷の攻撃を回避させる。


「ありがとう!!」

「気をつけろ!!あんなの食らったら、お前でも死ぬぞ!!」

「もう、くらわねぇよ!!目狙うから、援護頼む!」

「チッ『浚え』」

 カイは、着地と同時に蜘蛛の顔面目掛けて駆け出す。裏に回った方が攻撃を受けない可能性が高いが、ヘイトを集めなければ、第1位階のハジメは為す術なくやられてしまう。


 その為、例え危険であっても敵の注意を自身に固定させる必要があるカイは真っ向勝負を挑む。わざわざ自分から毒牙にかかりに来たバカな獲物を待ち構えるジャイアントスパイダーだったが、再び邪魔が入る。


跳躍に合わせてハジメは、風で地面の砂利を浚いジャイアントスパイダー目掛けて飛ばす。(どんな生物でも眼がついてるなら、目潰しは有効だろ)


 ハジメの予想通り、いきなり目に多数の砂利が勢いよくぶつけられた事で、ジャイアントスパイダーの動きが確かに鈍る。 


 ハジメの機転によって僅かに生まれた明確な隙をカイは見逃す事なく、徹底的に八つ目を狙った全力の連撃を叩き込む。


 蜘蛛が吠える事は無い為、分かりにくいが、目を潰された痛みとダメージはしっかりと効いているのが、仕草でわかる。

(よし、効いてる!!も一度ッ?!)


 カイは眼が見えていない今の内に続けて攻撃を叩き込もうとするが、いつの間にか伸びてきた脚によって頭上から叩き落とされる。


 そう蜘蛛の最も発達した感覚は視覚では無く、聴覚と触覚であり、目潰しは確かに隙を産んだがジャイアントスパイダーを戦闘不能に追い込む程の傷では無かったのだ。


 カイは獲物を逃すまいと伸びてくる鋭利な脚に串刺しにされない様に押し返そうとするが、膂力では完全に負けているのか串刺しになるのは最早時間の問題だ。


「くっ、カイ!!もう少し持ち堪えろ!!『風打ち』」

 

 ハジメは直様それを阻止すべく、回転数を上げていた風を杖に纏わせ殴り掛かる。風を纏った杖の棒打は、ジャイアントスパイダーの右脚に確かな傷を付けるが、脚を引かせる事も破壊する事も出来なかった。


 取り押さえた獲物とそれを邪魔しようとする獲物を纏めて毒牙にかけようとジャイアントスパイダーの顔面が迫ってくる。


 ハジメは、大声で自身を鼓舞しながら逃げ出す事なくカイを串刺しにしようとしている右脚を打ち続ける。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

(馬鹿野郎が、お前には家族がいるじゃねぇか絶対死なすわけにはいかねぇ!!)


 カイは残りの力を全て出し切るつもりで腕に力を込めてなんとか押し返す。そして、押し返したスペースを使って身体を捩ると、ハジメを蹴り飛ばす。


「グホ?!」


 蹴り飛ばされたハジメは、一瞬何が起きたのか分からなかったが、直ぐに状況を理解して前を向く。

(あのバ、…)


ハジメの思考が止まる。ジャイアントスパイダーの毒牙はカイに肩に突き立てられていた。

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